2/6
辺境の村に生まれた少女②
夕暮れ。
村に戻ると、子どもたちが井戸の周りで遊んでいた。
リディアは微笑みながらその中を歩く。
村人たちの視線が集まる――「剣のリディア」だ。
だが、どこかでささやく声もある。
「女のくせに剣ばかり」
「結婚相手もいないのに、あれじゃあねえ」
リディアは聞こえないふりをした。
慣れている。けれど、心の奥で小さな痛みが残った。
「努力しても、誰も見てくれないのかな……」
彼女は空を見上げる。
夕陽が沈み、空が群青に染まっていく。
その光の中で、一番星が瞬いた。
「父さん、私、まだ間違ってないよね?」
返事はない。
ただ、風が優しく頬を撫でて通り過ぎていった。
その夜、村の宴が開かれた。
春の収穫を祝う祭りだ。
村人たちは焚き火を囲み、歌い、踊り、笑っている。
リディアもミラに連れられて参加したが、
心のどこかが落ち着かない。
「せっかくの祭りなんだから、楽しみなさいよ」
「うん……でも、私、ああいうの苦手」
ミラがいたずらっぽく微笑んだ。
「じゃあ、踊らなくていいから、何か食べましょう。ほら、焼きリンゴ!」
「わ、甘い!」
「でしょ?」
そんな他愛ない時間が続いた。
――それが、あの夜の平穏を最後にすることを、誰も知らなかった。




