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記憶の呼ぶ声がする~怪異と使命と消えた過去と、全部諦めきれなくて~  作者: 白湯の氷漬け


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第6話 橙山の違和感

「おい、起きろ、起きろったら」

「……う……ぅ」


 笹井がまぶたを開けるや否や、強烈な日光が目を刺した。八旗が折り目一つないシャツを着ながら、笹井に再度声をかける。


「集合時間的にそろそろ起きないとまずいぞ」

「あ、はい……」


 よたよたと這うようにして布団から出て、洗面台で顔を洗う。冷たさに頭が跳ねたのを見て、八旗がタオルを渡した。

 鏡を見るとひどくやつれた顔をしていた。目の下にある赤紫のクマに、細いしわが刻まれている。頬をなぞると歯の感触が伝わってきた。


「昨日うなされてたぞ。悪い夢でも見たのか」

「はい、……ああ、いや、そうだったのかな……。覚えてないからなんとも」


 ふうん……、と言いたげに八旗はゆるく頷いて、ジャケットを羽織り(えり)を正した。

 急いで身支度を整え、玄関で待ってくれていた八旗を追うようにして部屋を出ると、ちょうど伸びをして出てきた橙山と会った。


「ん~、あ、二人ともおはよう」

「おはようございます!」

「おはようございます。橙山さん、昨日のシブキへの定期連絡で何か言われましたか」

「それ、今日の行動方針と一緒に言いたくってね。とりあえず下に降りよっか」


 三角形の頂点に立つようにして向かい合うと、橙山はよし、と腰に手を置いた。


「今日は一人ずつ分かれて聞き込み調査をする。八旗君、言いたいことがあると思うけどちょっと待ってね」


 口を開きかけていた八旗がぐっと飲みこむ。


「本当は笹井君についていきたいところだけど、期限が期限だから効率的な方がいい。それに昨日の定期連絡で言われたんだ」




 ──そ、一人で。大丈夫、笹井くんは<臨検役>だ、伊達に調査特化なわけじゃない。記憶喪失なんて本当なら調査に行かせない、でも彼なら任せられる。




 宿の前で二人を見送った橙山は、振った手を戻す間もなく、シブキの続きの言葉を思い出していた。




 ──それに彼には”力”がある。でしょ?




(まるで知っていたかのような口ぶりだったな……)


 昨日、怪異もといモツレンサマと思わしき霧に見せた、笹井の”力”。そしてその後、彼の腕に起きた異常な変化。

 頭の隅に置いておこう。そう整理し、橙山は切り替えた。


 今まで得た情報といえば、昨日会った子連れの母親の言葉だろう。


 ──あなた方は怪異と呼んでいるようですが、私たちにとって()()は神様です。


(ならば、調査するところといえば決まっているな)


 頭の中でこの町の地図を開く。神社、神社……あった。

 朝のそよ風を胸いっぱいに吸い込み、橙山は朝日を背に浴びて歩き始めた。

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