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9.混乱し始める王都(オーバン王太子)

目が覚めたらずいぶんと日が高くなっていた。

おかしいなと思って侍女を呼んだのに、誰も来ない。


ドアを開けて私室から出ると、

廊下で護衛騎士たちが座り込んでいるのが見えた。


「おい、何しているんだ!」


「は、はい……オーバン様、申し訳ございません」


よろよろと立ち上がったが、もしかして寝ていたのか?

護衛騎士なのにだらしがない。あとで騎士団長に言っておこう。


「侍女の姿が見えないのだが」


「今日はまだ来ていないようです」


「なんだと。呼んで来い!」


「ですが、護衛騎士の交代要員も来ておらず、

 私がここを離れてしまうわけにもいきません。

 もう少しお待ちください」


「……わかった」


侍女が来ていないだけでなく、護衛騎士の交代要員も来ていない?

少し待ったけれど、どちらも来る気配がない。

何かあったのかと思い、仕方なく自分で着替えて外に出る。


廊下を歩いていても人の気配がない。

窓の外を見れば、もう昼近くに思える。

侍女が来なかったから起こされなかったのか。


謁見室も執務室にも人がいない。

どういうことだと思っていると、父上と母上がやってきた。


「おお、オーバンは無事か」


「父上、母上、これはどういうことですか?」


「わからない。夜勤で働いていた者は皆疲れ切っているし、

 朝から来るはずの者たちが来ていない。

 何が起きたのかすらわからん。

 宰相はどこにいるんだ。まさか宰相も来ていないのか」


「謁見室にも執務室にも誰もいませんよ。

 宰相どころか、文官も一人も来ていません」


「なんだと……」


三人でどうしたらいいのかと考えあぐねていると、

疲れ切った顔の宰相がようやく来た。


「宰相!どういうことなんだ!」


「陛下、もしやアンリエット様に何か起きたのですか!?」


「アンリエット?どういうことだ?」


「アンリエット様の部屋に行きましょう!」


よくわからないが、宰相に言われて四人でアンリエットの部屋に行く。

アンリエットに与えられた区画は地味で何にも面白いものがない。

一度どんな部屋なのか見に行ったことがあるが、

それ以来行くことはなかった。


数年ぶりに来たアンリエットの区画は思い出よりも何もなかった。

こんなに物がなかっただろうかと思いながら、アンリエットの部屋に着く。


宰相がドアをノックしても返事がない。

そのまま構わずドアを開けると、そこには何もなかった。

アンリエットがいないだけではなく、家具一つ残ってなかった。


「なんだ……何が起きたんだ。まさか、誘拐!?」


「陛下、これを見てください!」


宰相が見つけたのは窓際にぽつんとあった貴族の証である腕輪だった。


「どうしてこれだけあるんだ?アンリエットの物なのか?」


貴族と証としての腕輪は必ずつけていなければいけないものなのに、

どうして外すような真似を。

だが、よく見れば宰相も腕輪をしていない。


「宰相もどうして腕輪を外しているんだ?」


「……あの腕輪をつけたままでは動けませんでした」


「は?」


「あれほど多くの魔力を吸われるのに慣れていないので、

 立ち上がることもできないほどめまいがするのです」


腕輪は王都に住む五歳以上の貴族なら全員つけることになっているが、

王族はつける必要がない。

俺たちだけ動けているのは、そういうわけか。


「じゃあ、王宮に誰も来ていないのはそれなのか?

 連絡すらないというのはどういうことだ」


「おそらく、王都中の貴族が同じ状態になっています。

 騎士も侍女も貴族ですし、高位貴族なら使用人もほぼ貴族です。

 動ける平民がいたとしても王宮には入れません。

 だから連絡すらないのでしょう」


「理由はわかったが、どうしてこうなった!?」


「……アンリエット様が腕輪を外したからでしょう」


「どうしてアンリエットが関係するのだ?」


父上と母上も首をかしげているが、俺もよくわからない。

魔力なしのアンリエットが腕輪を外したからって、何の影響があるというんだ。

それよりもアンリエットがさらわれたのかもしれないのに、

どうして誰も騒がないんだ。


「父上、アンリエットはさらわれたのかもしれません!

 一刻も早く捜索隊を!」


「わかっておる。

 だが、捜索隊を出そうにも、騎士が来ないのでは無理だ。

 宰相、いったい何が起きているというのだ。ちゃんと説明しろ」


「実は……アンリエット様は魔力なしではありません」


「はぁ?」


「それどころか、この国で一番魔力が多い令嬢です。

 王都の結界に必要な魔力のほどんどをアンリエット様がまかなっていました」


「令嬢一人でなんて無理に決まっているだろう」


「最初は王宮周辺の小さな結界でした。

 幼いアンリエット様だけでも十分にまかなえるほどだったのです。

 それが、貴族たちは結界の負担がたいしたことがないと思い、

 もっと結界を大きくしようという声が出て。

 最終的に王都全体を覆うほどの大きさにまで……。

 止めようとしましたが、止められませんでした」


「それをアンリエットの魔力で、だと?」


「まずはアンリエット様の魔力を吸い上げ、

 足りない分は貴族全体から吸い上げることになっていました。

 アンリエット様はずっと魔力を吸い上げられたことで、

 魔力の器がどれほど大きくなったのかわかりません」


アンリエットが一人であの結界を支えていたと言われても、理解できない。

魔力がなくて、学園も三年で中退していたアンリエットが?


「どうしてそんなことしたんだ。

 魔力をそんなに吸い上げたら無事ではいられないだろう」


「……ルメール侯爵が書類をそう書き換えたのです。

 気がついた時にはもうそういう契約になっていました」


「そんなものは破棄すれば良かっただろう!」


「あまりの魔力量に、アンリエット様一人の犠牲で済むのならと。

 アンリエット様自身は魔力がなくても平気そうでしたし」


魔力がなくても平気そう?

そんなわけはないよな。俺たちに散々馬鹿にされて……。


「宰相、あいつはそのことを知っていたのか?」


「はい。知っていても話せない契約になっていました」


「……最低だな」


「……はい」


最低なのは宰相だけじゃないけど、だけど宰相が早く知らせていたら。

俺はアンリエットを魔力なしだと見下すこともなかった。

もっと素直に相手をしてやれたはずなのに。


「宰相、結界を一時的に消せ」


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