表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
つないだ糸は切らないで  作者: gacchi(がっち)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/58

49.愚か者たちの処罰(エミール)

処罰内容を決め、貴族牢へと向かう。

二日前に貴族牢へと入れた元宰相と元侯爵は、

不思議な糸でぐるぐる巻きにされていたが、

牢に入れて数時間で消えたと報告が来ていた。


あれはパジェス侯爵家の特別な魔術だったのかもしれない。

おかげで暴れられることなく牢に入れることができた。


元宰相と元侯爵という身分の高さから、

騎士たちが言うことを聞いてしまいかねなかったので、

二人の牢の近くには行かないように命じてある。


静かな貴族牢の扉を開けると、うなだれた元宰相が目に入る。

寝台以外何もないので、寝台に座るしかないようだ。

俺が牢に来たことに気がついた宰相は目を輝かせた。


「エミール様!私はこの国のために働いていただけです!

 早くここから出してください!」


「……とりあえず黙ってくれる?

 元侯爵もここに連れて来させるから」


俺が話すつもりがないとわかったからか、

苦虫を噛み潰したような顔で黙る。


ここに来たのが俺じゃなく、兄上だったのなら、

言うとおりに牢から出していただろうな。


騎士たちに両手を捕まれたまま元侯爵が連れて来られる。

俺の顔を見た瞬間わめきだしたから黙るように命じる。


二人を横に並べ、ようやく処罰内容を告げる。


「お前たちの処罰は魔力を吸う腕輪をつけて牢にいてもらう」


 「「は?」」


「お前たちに協力したものもすべて同じ刑にした。

 王宮の周りに結界を張るくらいはできるだろう」


「わ、私は魔力が少ないのです!そんなことをしたら」


元宰相が顔色を変えて訴えてくるが、そんなのは知っている。

そのせいでアンリエット様に執着したのも。


「魔力が少ないお前たちでは動けなくなるだろうな。それは知っている」


「では、無理だとわかっていますよね!?」


「いや、無理ではないだろう。動けなくなるだけだ」


「そんな!」


うるさいから今すぐにでも腕輪をつけたいくらいだが、

そうすると話を聞くどころじゃなくなる。


「お前たちの爵位は取り上げる。今、この時点で平民とする」


「……へ、平民」


「侯爵位が……取り上げ」


「あと、屋敷などの財産はこちらで処分する」


 「「!」」


軽く調べただけでもどちらも財産をため込んでいた。

ため込んで何をするつもりだったのか。


「それは横暴です!」


「横暴?そうか?元宰相の言い分だと、

 持っている者は国のために捧げるのが当然なんだろう?」


「それとこれとは違います!」


「いや、違わないよ。

 これから食糧を手に入れるのにも金が必要になる。

 新しい産業が見つかるまで、一方的に金を払い続けなくてはいけない。

 どれだけ金があっても足りないくらいだ。

 国のために使うんだから文句はないだろう?」


「文句がないわけがないでしょう!?」


「アンリエット様からは十年も搾取したのになぁ?

 多く持っているなら捧げなくてはいけないんだろう?

 それなのに自分たちが搾取されるのは許せないなんておかしな話だ」


「そ、それは……」


「国からの命令だ。喜んで差し出すのが当然だよな?」


 「「……」」


不満しかない顔だが、文句を言っても仕方ないとわかったようだ。

おそらく牢を出た後のことを考えて財産を残しておきたかったんだろうけど、

ここを出ることなんてできないんだけどな。


「よし、腕輪をつけろ」


「え、エミール様、お許しください!」


「エミール様!私がいなかったらこの国は」


「元宰相がいなくなったら?とても動かしやすい国になるだろうね。

 俺は忘れていないよ?

 アンリエット様を解放しろといった俺に、

 母上の命が惜しければ何も言うなと脅したの」


「っ!!」


アンリエット様が奴隷契約のようなものを結ばされていると気がついたのは、

五年ほど前の話だ。

そんなものはやめろと言った俺に、宰相は俺に第二妃がどうなってもいいのかと言った。

悔しかったけど、それ以上何もできずにあきらめるしかなかった。


ようやくアンリエット様は逃げることができた。

それによってオトニエル国は崩壊するかもしれないが、

それはアンリエット様のせいじゃない。


こいつらがそうさせただけのことだ。


腕輪をつけさせるとすぐに魔力を吸われたのか崩れ落ちる。


「苦しいだろう?アンリエット様がどれだけ魔力が多くても、

 すべてを吸われていたのなら同じこと。

 アンリエット様と同じように苦しめばいい」


もうそれどころじゃないのか、反応もしない。

つまらないが、それだけ苦しんでいるのならいいか。


「最低でも十年は生きていてもらうよ。

 ああ、魔力量が増えたのなら、増えただけ吸うようになっているから。

 その苦しみは少しも楽にならないから。

 せいぜい長生きして、国のために役に立ってくれ」


もう動くこともできない元宰相と元侯爵を同じ寝台に並べる。

お世話しなければ何もできないのだから、一か所に置いておいたほうが世話が楽だろう。


「こんなことでアンリエット様が喜ぶとは思わないけど、

 各国に向けてきちんと公表しないとね」


アンリエット様がいれば愚かな兄上が王太子でもなんとかなると思っていた陛下と王妃も。

もういらないからこのまま幽閉させてしまおうかな。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ