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つないだ糸は切らないで  作者: gacchi(がっち)


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32.訪問者

オディロン様という力強い味方が来てくれたのはうれしいけれど、

ランとレンと離れてしまったことには変わらない。


侯爵令嬢で王太子の婚約者だった私をさらったという罪状があって、

オトニエル国から指名手配されていることは事実だ。

王宮騎士が二人を捕まえているため、

許可なくランとレンを王宮から出すことはできないらしい。


今はオディロン様が王宮に与えられている自室に二人を匿ってくれている。

パジェス侯爵家の者をそばに残してくれているそうなので、

陛下の命令がないかぎり二人は安全だと約束してくれた。


王宮にあがる四日後までに対策を考えようとしていたが、

それよりも早く、次の日には王太子ジョージア様が押しかけて来た。


ジョージア様はオディロン様を連れ戻しに来たそうだが、

なぜか私とシル兄様まで会うことになった。

応接室でジョージア様を迎え入れたオディロン様は、

穏やかな微笑を消したまま。


ジョージア様は金髪緑目でそれなりに顔立ちは整っているが、

疲れているのか顔色が悪い。

後ろにいる護衛たちも困ったような顔をしている。


オディロン様が王宮を出たのは昨日なのに、

もうすでに影響が出ているようだ。


「それで、ジョージア様は何をしにきたのですか?」


「何って、お前を迎えに来たに決まっているだろう。

 仕事にならないといろんなところから苦情が来ている。

 帰って来いと言ったのに、どうして帰って来ないんだ?」


「仕事はご自分でなんとかしてください。

 側近の仕事をしている場合ではないのです。

 パジェス侯爵家で問題が発生したと伝言したはずですが?」


「それはお前には関係ないだろう!?」


王太子なのに本当に何も考えていなかったらしい。

この人が王太子でこの国は大丈夫なのかな。

優秀な側近がいれば何とかなると思っていたのかもしれないけれど。


「関係ありますよ。

 このままアンリエット嬢がオトニエル国に連れ戻されるようであれば、

 パジェス侯爵家は継ぐ人間がいなくなります。

 そうなれば私は側近をやめて領地に帰ることになります」


「は?領地に帰る?

 ミュリエルとの結婚はどうする気だ!?」


「それ、私は承諾していないのですが?」


「……いや、だが、お前たちは恋仲だろう?

 ミュリエルがもうすぐ学園を卒業するのだから、

 婚約の話が出てもおかしくない」


「恋仲?いいえ?手をつないだことすらありませんけど」


「は?あんなに一緒にいただろう?」


「それは王族からお茶に呼ばれれば断るのは難しいですから。

 ですが、二人きりでお会いしたことはないです。

 婚約者でもない女性とそういう関係になることはありません」


「嘘だろう……」


妹のミュリエル様とオディロン様が恋仲だと勘違いしていたのか、

ジョージア様は頭をかきむしっている。

これは、オディロン様がミュリエル様に惚れているのなら、

多少強引に事を進めても問題ないと思っていたのかも。


それがオディロン様を怒らせている原因だと思うだけど。


「とにかく、こちらは後継ぎ問題が発生しています。

 側近の仕事をしている場合ではありません。

 この問題で王家との関係が悪化したとしたら、

 父上たちも私に側近を辞めて帰って来いと命じるでしょう」


「ちょっと待て!早まるな!

 その問題が解決すればいいんだろう!?」


「ですが、王家からオトニエル国に連絡したのでしょう?

 誘拐されていたアンリエットを保護したと。

 アンリエット嬢が誘拐などされていないとわかっていながら」


「いや……だが、その令嬢だって王太子と結婚したほうがうれしいだろう?

 本当は帰りたいんじゃないのか?」


「そう思っていますか?アンリエット嬢」


王家らしい考え方にオディロン様は呆れたようだ。

だけど、王太子相手にはっきり言ってかまわないのだろうか。

今の私は平民なのだけど……。

迷っていたらオディロン様が助け舟を出してくれる。


「ジョージア様、アンリエットは今は平民の身分です。

 何を言っても処罰しないと約束してくださいませんか?」


「ああ、そうか。好きに言ってくれていい」


処罰はしないと約束をしてもらえたのなら大丈夫かな。

シル兄様を見るとうなずいている。

では、はっきり言わせてもらおう。


「ありがとうございます。

 私はオトニエル国に戻る気はありません。

 シルヴァン様と結婚できなければ、

 平民のままで冒険者になって暮らすつもりです」


「冒険者だと?侯爵令嬢なのだろう?」


「王宮を出た時点で平民になると決めていました。

 貴族に戻りたいわけではありません。

 ただシルヴァン様と一緒にいたかっただけですので、

 それが認められないのであれば貴族に戻りたくありません」


「ジョージア様、俺からもいいでしょうか。

 アンリエットとの結婚が認められなければ、

 俺もパジェス侯爵家の籍を抜けます。

 アンリエットと共に平民になって暮らそうと思います」


「……シル兄様まで平民になるなんて」


「当たり前だろう。アンリがどこかに行くのなら俺もついていく。

 兄上、あとは頼んだよ」


「ああ、わかった。パジェス侯爵家は私が継ごう。

 二人は好きにすると」


「わぁぁあ!ちょっと待って!待てって!」


もうシル兄様と二人で平民として生きていこうと覚悟を決めたら、

ジョージア様が大声で止め


「わかった!アンリエット嬢はオトニエル国に帰さない!

 それなら問題ないのだろう?」



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