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つないだ糸は切らないで  作者: gacchi(がっち)


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29.連れて行かれた二人

まさか私が王宮から逃げ出したことが誘拐だと思われていたとは。

たしかに誰にも見つからないようにこっそり抜け出してきたけど、

それがこんなことになるなんて思わなかった。


「アンリ……二人は貴族牢に入れるように言ってきた。

 うちで雇っている使用人で元貴族だからな。

 丁寧に扱うように命じてきたから、ひどいことにはならないはずだ」


「ありがとう……どうしてこんなことに」


「……アンリがいなくなったことでオトニエル国は大変な状況のようだ。

 アンリを探すためにランとレンを指名手配したのだろう」


「私を探すため?結界が維持できなくなったから?」


「それだけではないようだが、王都の結界は消えているそうだ」


「消えて……私がいなくなってからずっと?」


「そうだ」


王都の結界が解除されている……。

私がいなくなれば維持できないとは思っていたけれど、

結界の範囲を小さくするとかやりようはあったはずなのに。


魔獣の影響も出ているだろうし、王都は混乱しているかもしれない。

私のせいで……とは思いたくないけれど。


「オトニエル国に指名手配の解除を要請したが、

 そうなればアンリがここにいることも知られる。

 何かしら言ってくるだろうな」


「何を言われるのかな。結界が消えたことで怒っていると思うけど」


「それは公には言えないんじゃないか?

 結界を一人の令嬢の魔力だけに頼っていましたなんて公表できないだろう」


「じゃあ、何を言ってくると思う?」


「……きっとアンリエットに戻って来いと言われると思うよ。

 王太子の婚約者としての責任を果たせ、とか」


「私はもう王太子の婚約者じゃないわ」


「だが、王太子から婚約の解消を言われたとか、

 陛下から許可をもらったわけじゃないんだろう?」


「それは……そうだけど」


あの時、私はルメール侯爵家の籍を外した。

結果として王太子の婚約者ではなくなったけれど、

陛下やオーバン様に許可をもらったわけではない。


勝手にやったことではあるけれど、ルメール侯爵夫人の署名はある。

責任をとるのならルメール侯爵夫人とジョアンヌだと思う。


「いずれにしても、オトニエル国と話す必要がありそうだ」


「うん……」


「心配しなくていい。何があっても俺はアンリを離すことはしない。

 アンリは俺の妻になるんだから。そうだろう?」


「……うん。シル兄様の妻になるんだから、

 オトニエル国にそう言わなくちゃね」


「アンリを王宮に連れて行くのは四日日後に決まった」


「四日後……」


それまではランとレンをどうすることもできない。

貴族として扱うように言ってくれて本当によかった。

パジェス侯爵家の使用人だとわかっているのなら、

それほどひどい扱いはされないだろうから。


「ただ、ランとレンのことを対応するのを優先したから、

 兄上に話を聞くことができなかったんだ。

 明日以降、もう一度王宮に行って聞いて来ようと思っている」


「オディロン様ならオトニエル国のことも知っているかしら」


「もしかしたら、指名手配のこともわかっているかもしれない」


本当なら私も一緒に行ってオディロン様から話を聞きたいけれど、

元貴族でも平民の立場の私では勝手に王宮に上がることはできない。

シル兄様に聞いて来てもらうしかないと思っていたら、

その日の夜にオディロン様は屋敷に戻ってきた。


「ただいま、シルヴァン。そして、初めまして。

 私の義妹になるのだろう?オディロン・パジェスだ」


「あ、初めまして、アンリエットです」


廊下がざわついているとは思っていたが、

急に部屋に入ってきたオディロン様を見て驚く。


金髪青目のオディロン様は声を聞かなければ女性かと思うくらい綺麗だった。

よく見れば長身で筋肉がついているし、手が骨ばっている。

それでも所作や話し方が優雅で、不思議なことにシル兄様のような色気はない。

まるで精巧に作られた人形に命が灯ったように感じた。


「兄上、よく王宮から出られたな」


「許可を取らずに出てきた。まずいことになっていそうだったからな」


「まずいこと?」


「お前が貴族牢に入れるように指示を出したうちの使用人たち、

 勝手にオトニエル国に護送されそうになっていたぞ」


「はぁ!?」


「オトニエル国に護送って本当ですか!?」


ランとレンがオトニエル国に護送されると聞いて慌てたけれど、

オディロン様はゆっくりと首を横に振った。


「安心していい。パジェス侯爵家の使用人だと伝えていたからか、

 その前に俺に知らせてくれたものがいる。

 護送は止めて、俺の部屋に匿ってある」


「……よかった。オディロン様、ありがとうございます」


「兄上、助かったよ。まさか勝手に護送しようとするなんて」


「ここに押しかけてきて二人を捕縛したのはウダール侯爵家の分家の者だ。

 そいつが勝手にオトニエル国に連絡して護送しようとしていた」


「ウダール侯爵家だと?まさか、これもカトリーヌ嬢が関係するのか?」


カトリーヌ様がランとレンが捕まったことに関係している?


「おそらくはアンリエット嬢が邪魔だから、オトニエル国に帰らせようとしている。

 ランとレンは人質にでもするつもりなのだろう。

 二人の命が惜しければ、何も言わずに帰れと言う予定で」


「あの二人はアンリにとって大事な侍女と護衛なんだ。

 そんなことをすればアンリは帰らなくてはならなくなる……。

 兄上が護送を止めてくれて助かったよ」


「だが、オトニエル国には連絡が行ったようだ。

 アンリエット嬢がここにいると。

 間違いなく迎えにくるだろう。お前たちはどうするつもりだ?」



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