表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/58

12.お父様との約束(ジョアンヌ)

せっかくオーバン様の婚約者になれたのに、

陛下もお父様も渋い顔をしてアンリエットのことばかり。


オーバン様とゆっくり話すこともできず、

また馬車に乗ってルメール侯爵家の屋敷へと戻る。


「ねぇ、お父様。

 どうしてアンリエットなんて探すの?」


「……あれがいないと困るからだ。

 どうして俺に黙って勝手な真似をしたんだ」


「勝手な真似って、お父様が全然屋敷に帰ってこないからじゃない!」


「そ、それはそうだが、帰るまで待てばよかっただろう」


「一週間も待ったわよ!」


どうせ女の人のところにいるんだろうって、お母様も呆れていたもの。

いなかったことをそれ以上追及されたくないのか、

お父様はすぐに話を変えた。


「アンリエットがいなくなったら、お前が苦労するんだぞ?

 オーバン様が学園を卒業する時までにお前を選んでもらって、

 お前を王太子妃に、アンリエットを側妃にするつもりだったんだ」


「側妃に?いらないわよ、そんなもの」


「じゃあ、お前は王太子の仕事ができるというんだな?」


「は?オーバン様の仕事はオーバン様がするんでしょう?」


何を当たり前のことを言うのかと思えば、

お父様から聞く話は知らないことばかりだった。


「オーバン様の仕事はアンリエットがしていた」


「え?」


「オーバン様は王太子教育が終わっていない。

 十六歳から王太子の仕事を少しずつ任されていくのが普通なのだが、

 王太子教育が終わっていないせいでできていない。

 そんなことを貴族たちに知られたら困るから、

 オーバン様の代わりにアンリエットが王太子の仕事をしているんだ」


「そんなの知らない……」


「知られたら困るからな。オーバン様がやったことになっている。

 知っているのは王族と宰相くらいなものだ」


「じゃあ、お父様はどうして知っているの?」


「アンリエットに命じるように宰相に頼まれたからだ。

 アンリエットは俺の言うことには従うという契約を結んでいた。

 魔術で誓約させたものだ。

 だから、側妃にする時も俺が言えば素直に署名するはずだったんだ」


署名するはずだった……。

どうして過去形になっているの?


「今、探しているのでしょう?

 見つかったら署名させたらいいじゃない」


「だから!お前が侯爵家から籍を抜いただろう!

 あれが誓約させた契約書だったんだ!」


「……だって、知らなかったんだもの」


そんな大事な契約なら教えてくれていても良かったと思うのに。

知らなかったし、お母様も何も言わなかった。

お父様だけの秘密にしていたのが悪いんだと思う。


「王家よりも先に見つけなければ」


「どうやって王家よりも先に探すの?」


「王家が王都を探している間に見つける。

 アンリエットが行きそうな場所なんてすぐにわかった。

 隣国のパジェス侯爵領だ」


「それってアンリエットの両親が亡くなった場所じゃ……」


「仲が良かったものがそこにいるはずだ。

 契約させた後、王宮から出られないと知って泣いていたからな。

 もうパジェスに行けないの?って」


「ふうん」


王宮から出たいなんて意味がわからない。私なら喜んで住むのに。


「あれ?アンリエットは馬車に乗れないんじゃないの?」


「それも俺がアンリエットにつかせた嘘だ。

 宰相から頼まれていた。王宮に置いてくれと。

 最初の頃の結界は王宮の周りだけだったからな。

 屋敷に連れて帰ると結界が維持できないと言っていた」


「じゃあ、本当にそのパジェスってところに行ったの?」


「とりあえずは隣接しているオビーヌ侯爵家を目指しているだろう。

 そこはアンリエットの祖父母がいる場所だ。

 逃げ込まれたら簡単には手を出せなくなる。

 早馬を出して、その手前で捕まえて連れてこさせなければ」


「せっかく追い出したのに連れ戻すなんて……」


「無理やりにでも連れて来て、もう一度契約させる。

 今度は俺だけじゃなく、お前にも従うようにしておこう。

 それならいいな?」


「うん。だけど、その契約をしないって言ったらどうするの?」


アンリエットを追い出した時、嫌がっていなかったのを思い出す。

あれはお父様に従うのが嫌で出て、王宮から行きたかったんだ。

だとしたら、連れ戻したとしても契約したがらないんじゃないだろうか。

従わないのなら、また追い出すつもりなのかな。


「アンリエットがもう一度契約しなかったら?

 そうだな……その時は殺すしかないな」


「え……」


「従わなければ、邪魔にしかならない。

 王家はアンリエットを王太子妃にするつもりなんだぞ。

 今までのことを恨んでいたとしたらルメール侯爵家は終わりだ。

 そうなれば、お前は側妃にもなれない。

 それでいいのか?」


「よくないわ。オーバン様の妃になるのは私だもの」


「だろう?大丈夫だ、お前は気にすることはない。

 オーバン様に選ばれることだけ考えていればいい。

 あとのことは任せておきなさい」


「うん。わかったわ」


殺されるのは少しだけ可哀そうだと思ったけど、

私がオーバン様の妃になれないのは嫌だから仕方ない。


殺されたくなければ、素直に契約すればいいんだし。

契約しないで殺されたとしたら、それはアンリエットのせいよね。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ