表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

500文字チャレンジ

言えなかった言葉

作者: あや

修学旅行の夜と言えば?怪談?枕投げ?それとも恋バナ?

恋バナをするのが苦手だ。だから聞き役に徹する。それでも、話を振られることはある。

「初恋の相手はだぁれ?」

決まって私はこう答えるの。困ったように眉を下げて。

「初恋はまぁだ。」と。

初恋は未経験なんて、そんなものは真っ赤なウソ。本当は初恋だって経験しているし、好きな人はその時から変わっていない。明かすつもりはないけれど。


初恋は小学校4年生の時。彼は眉目秀麗で、成績優秀、人柄が良くいつも人に囲まれている。全てが平々凡々な私は釣り合わない。だからこの気持ちはぐっと飲み込んだ。


その年の6月、急に転校が決まった。クラスの皆はお別れ会を開いて、手紙もくれた。彼は違うクラスだったけれど、帰り道にいつも大切にランドセルに付けていたストラップをくれた。シルバーのそろばん。

「お守り。」たった一言、そう言って。


今になって思う。最後なら伝えてしまえば良かったのに。でも、言えなかった。最後にこの心地よい空気を壊すことがあまりにも怖かった。だから私はこの気持ちに蓋をした。溢れてこないよう、きつくリボンを締めて。


一度話せば、この思いはきっと溢れて、私を蝕んでいく。せめてこの思い出を美しいままにするために、心の奥深くに沈めるのだ。それでも、もし、もう一度彼に会えた時は。この箱を取り出して、薄紅色のリボンを解こう。そうして、ずっと言いたかった、たった一言を紡ぐのだ。


「大好きだよ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ