もえるねこ
うちの猫は、使命感に燃えている
飼い主のものを、全力でお守りするのだと
飼い主のものは、自分が守り通すのだと
飼い主のものに、何人たりとも触れさせはしないと
私の持ち物が私の手を離れたとき、猫は己の使命感に則り…その身を挺するのだ
たとえば、晩御飯の準備をするとき
フリーザーの上にスマホを置けば、すぐに猫がやってくる
たとえば、ウォーキングから帰ってきたとき
トレーナーを脱いでソファの上にかけて水を飲みに行けば、すぐに猫がやってくる
たとえば、新しい靴を買って部屋の中で紐を結ぶとき
左足の靴紐を結び終わって右足の靴に取り掛かれば、すぐに猫がやってくる
たとえば、学校のプリントに記入をしているとき
電話が鳴ってとりに行こうと立ち上がれば、すぐに猫がやってくる
飼い主の大切なものは、私が見張っておきますからねと気を利かせる
飼い主が肌身離してしまったものを、私が確保しておかねばなるまいとはりきる
飼い主を不安にさせるようなことがあっては、私の沽券にかかわりますとやる気になる
私がいますから、安心してください!
私がいますから、なにがあっても大丈夫ですよ!
私がいますから、用事を済ませてきていいですからね!
安心してください、私が見ておきましたよ!
大丈夫ですよ、私が誰にも触らせませんでした!
用事は済みましたか、私、まだまだお役に立てますけど!
スマホケースに両前足を揃えて乗せ、自慢げに私を見上げる…猫
ソファにかかったトレーナーの上で香箱を組み、目を細めて私を見る…猫
真新しい靴に全身を預け、ぐるぐるとのどを鳴らしながら私を意識する…猫
ちゃぶ台のプリントの上でアンモナイト状態になり、白いあごを私にさらす…猫
猫はずいぶん、得意げだ
猫はとても、満足げだ
猫はかなり、ご機嫌だ
猫は…、ひと仕事終えた空気をまとっている
猫は…、飼い主の役に立った自信にあふれている
猫は…、自分がいなければ大変なことになっていたという雰囲気をかもし出している
なんという……けなげな、猫
「あーもー!!何でこの猫はすぐに人のものの上に乗るだね?!」
猫にとって残念なのは、まごころが飼い主に蔑ろにされがちだということだ
猫にとって嘆かわしいのは、努力が飼い主に疎まれがちだということだ
猫にとって予想外なのは、お褒めの言葉が飼い主からいただけないということだ
「はいはい、いつもありがとね!!!」
なけなしの感謝の言葉をもらい
やや強引ではあるが抱っこをしてもらい
一方的ではあるものの位置を移動させてもらい
「にゃーん」
猫の不満そうな声を聞くとき、飼い主は…
猫に、この上なく萌えるのだった




