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海坊主の正体
制限時間:15分 文字数:374字
海坊主が出ると聞いて訪れた砂浜に、のっそりのっそりと這い上がって来たのは顔を真っ赤にして今にも我々スタッフに襲い掛からんとする阿修羅像であった……。
「いやあしゅなんとかとは違うよワイ」
人間が作ったものとは思えない「いや作り物やないよ」怒りのあまり膨れ上がった顔「これは元々やし……」が我々に向かって迫ってくる。祈祷師が前に出た。
「阿修羅よ、その怒りを鎮めたまえー」
「鎮めたまえー」
我々は祈祷師に続いて祈った。
「なんやなんや、網やのうてビデオカメラで撮影してくれはるみたいやから来たんに」
阿修羅像は六本の腕……蠢いているおかげで八本に見えるそれをぐにゃりぐにゃりとおどろおどろしく交差させた。それはまるで、祈祷師の祈りに対抗するかのように。
「ワイはオクトパスやー! ほらっ」
ついに阿修羅像の怒りにふれ、我々の目の前は真っ暗になった。
お題:阿修羅誤解