YOYO太郎
制限時間:1時間 文字数:1401字
百瀬太郎はなんか桃太郎みたいな名前だという理由で、鬼退治に出かけることになった。
何故自分がと思う百瀬だったが、おばあさんにみたらし団子を渡されてしまったので、出かけないわけにはいかない。確か伝説だときび団子と言ったらしいが、きび団子なんて今となっては良く分からないし、みたらし団子の方が報酬として相応しいのではないかと判断した。
百瀬太郎は「ワンワン」と鳴く声を聞き、これは最初の家来ではないか、と期待した。
勢いよく飛び出てきたそいつは、犬は犬でもAIBOだった。
「うわサポート終了しちゃった奴だよ」
百瀬太郎はちょっと失望したが、ロボット犬というのはそれはそれで可愛かったので連れていくことにした。みたらし団子は首輪の飾りになった。
次に出会ったのはゴリラだった。
「みたらしくれウホ」
ととても素直なゴリラであったし、戦力的にただの猿より頼もしかったので百瀬太郎は普通に仲間として迎え入れることにした。
さてここまで来ると百瀬も次のパターンを考えだした。次は雉という鳥が来る予定ではあるが、果たして実際にそうなるのだろうか。考えてみれば、犬と猿はそれなりに一般的な動物であるが、雉だけ少々マイナーな部類に入る。今の時代に存在しているのだろうか。滅びてはいないだろうか。
別の鳥類が来るのではあるまいか。キジバトとか。百瀬太郎は空を仰いだ。
「ケーン」
高らかな声が響き渡る。百瀬太郎は目を細めた。
飛行していた何かが真っ逆さまに落ちてくる。グサッ。
「おっふ!」
百瀬太郎の額にそれが突き刺さった。意外に血は出なかった。
「ジ・ケーン、ジ・ケーン」
と鳴き続ける、灰色をしたそれは……、
「紙飛行機?」
新聞紙を折った紙飛行機であった。訝しく思いながら新聞を広げた。
「なになに、パンツ泥棒で逮捕の鬼ヶ島良平が脱獄……くっだんねー事件だな。三面記事かよ。……はっ」
「”キジ”だウホ」
ゴリラが頷いた。AIBOは充電切れで倒れた。
こうして百瀬太郎はAIBOを抱え、記事を片手にし、ゴリラを連れて鬼ヶ島良平の捜索へ向かったのである。
「よーし、しょっ引いてやる!」
百瀬太郎は捕縛用の綱を用意してやる気満々である。
「捕まえるのはオラに任せるウホ!」
ゴリラも胸を叩いた。
翌日になると新しい記事が届いた。百瀬太郎が読み上げる。
「鬼ヶ島良平、やっぱり縞パン派……。なあこの新聞ネタないんじゃないか?」
「ウホ……」
疑問視しながら歩いている百瀬太郎とゴリラの前に、パンチパーマでパンツ一丁のおっさんが現れた。
「わあ! あいつだよ!」
鬼ヶ島と思しきおっさんは声を聞くと一目散に逃げだした。
「追えー!」
「ウッホ! ウッホ!」
百瀬太郎とゴリラは必死になって走るが、おっさんは意外と速く、今にも見失ってしまいそうだ。
「くっ……」
せっかく鬼ヶ島までたどり着いたのに、ここで諦めるしかないのか。
「まだだウホ! 退治するんだウホ!」
後ろからゴリラの声援が聞こえる。AIBOは百瀬太郎の腕の中で丸まっている。
「そうだ……!」
百瀬太郎は綱を握り締めた。
丸いAIBOに綱を括り付け、地面に向かって叩きつけるかと思われた寸前、技を繰り出した。
『Walk the dog ――犬の散歩――』
である。
このヨーヨー技で鬼ヶ島の足元を救い、見事再逮捕することが出来た百瀬太郎一行であった。
お題:調和したゴリラ 必須要素:ヨーヨー