表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅森の即興小説集 ~2015年から2022年~  作者: 紅森がらす
即興バトル1時間編
36/38

おにぎりゴールイン!

制限時間:1時間 文字数:1326字

おにぎりは海外ではライスボールって言うらしい。

そんなことを授業で聞いたっけな、と思いながら私はまだ仄かに温かいごはんを手で転がし始めた。

今日は彼氏の試合の日だ。絶対に勝ってほしい。

私の詰めるおにぎりは願いを込めたサッカーボールの形。

「うへへ、完璧」

サッカーのルールもよく知らない私が出来ることって、お弁当作りくらいだもんね。

バスケットを持って家を出たところに、お隣の結婚相談所の羽田無運所長が立っていた。羽田所長は恋愛・結婚アドバイスのプロで、何を隠そう彼氏と付き合うことが出来たのもこの人のおかげなのである。

「あ、羽田所長、見てください! 彼氏にお弁当を持って行くんですよ」

「ふんむ」

羽田所長はカイゼル髭の先をつまみながら私のバスケットを見た。そして、

「セイヤ!」

と天高く蹴り上げたではないか!

「えっ」

私がぽかんと口を開けている隙に、バスケットは近所の小学生場戸ミントくんの頭上に落ちたかと思うと場戸ミントくんが頭突きを食らわしてどこか遠くへ飛んで行ってしまった。

「な、なんですか?」

「試合はもう、始まっているんだヨ?」

羽田所長が言った。

「彼の元に無事にライスボールをゴールさせること、それが今日のキミの試合ダ!」

「なんと……」

知らなかった。私は既にサッカーを始めているのだった。

そうと分かれば全速力でボールを追うまでだ。私はスカートの端を持って走り出した。

ビルの陰からさっと何者かが現れた。

クラスメートの大宗逐子さんだった。彼女は目配せを私に送る。が、それが何のつもりであるのかは分からなかった。

大宗逐子さんはバレリーナのような回転をすると、両手を広げ、通せんぼをするかのように私の前に立ちふさがった。

私は二、三歩後ずさった。

すると、大宗逐子さんの前を猛烈な勢いで御利捺神社のお神輿が駆け抜けていった。

お神輿の上には私のバスケットが!

はっ、大宗逐子さんは、それを教えてくれたんだ。

私は感謝しながらお神輿を追った。

あと、少し……あと少しで!

私はジャンプして、スカートを手ではためかせた。私は空に舞い上がった。いける!

「そんなはしたない真似はいけまセン」

羽田所長の声がしてはっと我に返った私は墜落しそうになるけど、

「負けるかあああ!」

最後の力を振り絞ってバスケットをキャッチ……するのはハンドになるので、足で思いっきり蹴っ飛ばした。彼の元に届くように願いながら……。


「うん、イケるんじゃないかな」

彼氏はサッカーボール型のおにぎりをおいしそうに食べてくれる。ちなみに試合のことは勝ったのか負けたのかよく分からなかった。私はサッカーをよく知らないから。

「ん?」

おにぎりを食べ終わった彼氏は、自分の手をじっと見た。

「どうしたの? あっ」

彼氏の指にはおにぎりに仕込んであった婚約指輪が嵌まっていた。

おにぎりの具を婚約指輪にするのはそういえば羽田所長のアイディアだった。

まったく、さんざん困らせておいてこんなハッピーエンドを計画するなんて、さすが結婚相談所の所長である。

彼氏は口を開いた。

「いや、結婚はしないから。ていうか、あんたも彼女のつもりじゃないから」

どっひゃー!

お題:うへへ、サッカー 必須要素:結婚相談所

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ