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紅森の即興小説集 ~2015年から2022年~  作者: 紅森がらす
即興バトル1時間編
34/38

誕生

制限時間:1時間 文字数:621字

まだまだ人体にはほど遠い姿だというのに、幾度めかのGOサインが出された。

そろそろと這い出した途端崩れ落ちた。

『うぅー』

声にならない声をあげる。

無理だ、と彼女に訴えようにも、彼女は泥だらけの手で再び『僕』を待ち構えるだけだ。

ぐるぐると試験場『轆轤』は回り続ける。

土くれの塊に戻った『僕』は再び試験場に横たわる。

彼女が手を添えると、回転する『僕』の内部に空洞が広がり、外観は360度滑らかに形づくられて天に伸びていく。

器としてはこれで完成なのだ。器としてならば。

「違う……」

彼女は首を横に振って生まれそこなった僕をぐちゃりと潰し殺す。


彼女の師匠は表向きは鬼才の陶芸家だったが、陶器を作る陰で生命の錬成を進めていた。

大道具を制作するため彼に教わっていた彼女は、やがて彼の秘密を知ることになった。

出来上がった陶器人間達は産みの親である彼を殺して埋め、逃亡したという。

そして『僕』の中に師匠がいる、と彼女は信じて、『僕』を生み出そうとしている。


彼女は『轆轤』を両腕で抱きかかえた。

妊婦が自らの腹を撫でるように、彼女は『僕』を擦った。

「おいで、おいで」

彼女が汚れきった手で『僕』を招く。書割だらけのこの世界に招く。


「がはあっ!」

大きく空気を吐き出して、僕は生まれた。手も足もない円筒形で。

「はーっ、はーっ……」

空洞から、息が溢れだす。

「おめでとう、私たちの息子」

母は生まれたての僕に、花を一輪差した。

お題:未熟なドロドロ 必須要素:大道具さん

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