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紅森の即興小説集 ~2015年から2022年~  作者: 紅森がらす
即興バトル1時間編
32/38

ずれゆく運命

限時間:1時間 文字数:1353字

私と、幼馴染の大輔は特に意識してないのに行動が被ることがよくあった。

ランドセルにつけたキーホルダーが同じ熊のものだったけど、記されている観光地が違っていて実はご当地ものじゃなかったことを知った。中学の席替えで斜め後ろ、陽の良く当たる席へ移動すると、大輔もちょうど斜め後ろの席へ行った。ただし、その時教室は別だった。高校は別のところへ行ったものの、大輔がパン食い競争で食パンに食らいついてる頃、私は遅刻しそうで食パンを咥えて走っていた。

別に、迷惑にも運命にも感じるほどの被りではなかったし、向こうもそう思っているはずだ。

でも、今だけは。

「なんで、よりによって大輔なの……」

私の運命の前に立ちはだかったのが、大輔だなんて。眩暈がする。

「俺だって聞きたいよ。夏美は、ノゾミ先輩とどういう関係なんだよ」

私は、

「ノゾムさんに思い切って告白したら、ちょうど僕はもう一人に告白されたところで、迷ってるって! 二人で話をつけてこいって! そう言われてここにきたの!」

てっきり、ライバルの子も女子だと思ってた。それが、大輔がやってくるだなんて……。大輔、ホモだったの? そして、ノゾムさんは私と男とで迷っていたの? 色々ショックで泡を吹きそうだった。

「ちょっと待て、ノゾムさんって誰だ? ノゾミ先輩はうちの高校の演劇部長だけど、夏美の前では『ノゾム』なのか?」

大輔がおかしなことを言い始めた。

「え? ノゾムさんは、電車で痴漢からかばってくれたサラリーマンだけど……」

どうも、話がずれている。

私達は想い人の写メを見せ合った。

「確かに、これはノゾムさんだけどなんで女装してるの……セーラー服で……」

なんてことだ。ノゾムさんが痴漢よりも痴漢だったなんて。私は卒倒しそうだった。

「そっちのノゾミ先輩こそ男装だろ。なんで電車なんか乗ってんだ?」

スーツをぴしっと着た社会人のノゾムさん。今まで背景画像にしてお守りにしてたけどもう信じられない……。

「ともかく、同一人物だと分かった以上、どちらかの姿が嘘だってことになるな」

「ノゾムさんが変態だったなんて……」

「電車にスーツを着て乗ることと、セーラー服を着てうちの学校に生徒として通ってくること。現実的により難しいのは後者だな。だからノゾミ先輩が男装している可能性の方が高い……って、聞いてるか夏美」

「聞いてない、聞いてないよ~」

「あと、考えられるのは兄妹・親戚関係とか……。でもなぁ、先輩は天涯孤独の身だって言ってたはずだし」

「孤独だからって女装して高校に忍び込んでいいの?!」

私は大輔に掴みかかった。

「おい、落ち着け!」

微妙な距離だった幼馴染の二人、初めての喧嘩である――といっても、私が一方的に感情的になってるだけだけど……。


「さて……運命は、決まった?」

ノゾムさんの声が降ってきて、私たちは思わず空を見上げた。

にこやかにほほ笑むノゾムさんの顔があった。顔だけがあった。

ノゾムさんの体はゆらゆら蠢いていた。

「実は僕、雌雄同体なんだよね。だから君たち地球人の二人のどちらかに、男か女にしてもらおうと思ってるんだけど」

「はああ?」

私と大輔は同時に叫んだ。そして、

「そんなの、知るか!」

と二人の運命を蹴り飛ばした。

お題:ダイナミックな感覚 必須要素:三角関係

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