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臭い

制限時間:15分 文字数:427字

隣のテーブルに座った女性客二人のうち手前の一人が、腰かけた途端に手をぶらぶらさせる。

「あー、ここ、くっさ!」

その声の尖った口調で、暗に俺への非難であることは明らかだった。ここは今どき珍しい煙草の吸える喫茶店だというのに。

「げほっげほ!」

女性はわざとらしく咳をした。

「ねえマリコ、マリコは気にならないの? マリコはこの店~」

そして、同意を求めるふりをして発言の責任を押し付けようとするようにマリコに話しかける。

ああ、鬱陶しいババアだ。

俺はイライラしながらも、煙草の煙を目で追いながら落ち着こうとした。

「気にならないよ」

マリコさんが天使のような美しい声で言った。

「ええー!」

マリコさんじゃない方がのけぞった。

「だって、お互い様じゃない? 匂いなんて。香水とか、口臭とか、本人ほど気にならなかったりするもんだよ~」

「そうかしらね」

「それに」

マリコさんは銃口を構えた。

「ちょっと火の臭いが立ち込めている方が、誤魔化しやすいしね」

お題:最後の火事 必須要素:口臭

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