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華族道
制限時間:15分 文字数:346字
イタリア帰りの息子は、すっかり軟派な軟弱男になっていた。色男、とはどうも呼びたくない。
道で見知らぬ女性に道を聞くと思いきや一輪の花を手品のように出現させ、突如デートに誘いだす。お前はイタリアにナンパ留学に行っていたのか!
留学前は私以外の女性とまともに目も合わせられなくてタジタジとなっていた可愛い息子はどこへ?
こうしちゃいられない、私は息子を大和男児に戻すべく、教室に呼んだ。
「活けてみなさい」
息子は用意された花をしげしげと眺めた。
「やってみるよ、マム」
ウインク。ああ軽いこと。
彼は、溢れんばかりの緑と、白いカスミソウで彩られた、赤いカーネーションの作品を作り上げた。
「僕がイタリアで何よりも学んだことはね、マムを大切にすることなんだ。ハイ、プレゼント」
その手には乗るか。
お題:イタリア式の花