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盗みのみ
制限時間:15分 文字数:323字
目の前にはいつも固く冷たく閉ざした鉄格子、外には看守の姿も見えない。私は意を決して身を捩り始めた。関節外して数十年、この技術であらゆる家に空き巣に忍び込んでいる。
手首が隙間から空を掴む。だが、私は希望を掴んだつもりでいた。二の腕から肩にかけて滑るように外へ外へ向かう。
監視用に眼球を片方ここに残したまま、もう片方を腕と一緒に伸ばす。そう、特訓の末ここまで身体を駆使擦ることができるようになったのだ。
眼球と手はもちろん看守室へ向かう。そこにはお目当てのものがあるはずだ。
私は隙間を見つけ、看守室の中を覗いた。確かに私の望むそれはそこにあった。
次に私が伸ばしたのは当然だが舌だ。
看守のウイスキーをちびちび舐めるのがここ最近、やめられない。
お題:ねじれた囚人