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いざない
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妖精が舞い降りたかと思った。
妖しくほほ笑みながら彼女は私を誘うように、踊るように先へ進んだ。
この先着いていったら戻れなくなるようなそんな思いが頭を過ったが、それは美しいただの感傷として思い出の向こうへ消え去っていった。
花園が目の前に広がる。彼女を追ってそこに飛び込もうとする私はいつの間にか衣服をつけておらず、醜い肢体を晒していた。こんな醜い自分がこの花園を傷つけはしないかと躊躇する。しかし、彼女は私を呼ぶのだ。私にしか分からない囁き声で。
申し訳なさを覚えながらも花々を踏み荒らす。花々は私が通った後、何も起きなかったように再び立ち並ぶ。どこから来たのか覚えていない。
少女は泉の前で待っていた。静かに、力強く湧き出る泉。
その水を全身に早く浴びたいと思った。喉を潤したいと思った。
息遣いが荒くなっているのを感じる。今にも目の前の神秘の泉に飛び込もうと思っている。
しかし、私の足はどうしても動かなかった。
美しい少女の泉を前にして、私の命は枯れていった。妖精はただほほ笑む。
お題:少女のあそこ