2/38
美術室
制限時間:15分 文字数:430字
図工の方が楽しかった。
先生が個性を大事にしてたっていうか放任主義というか、とにかく自由に描かせてくれていたので、あたしの画用紙からはみ出して折り紙でどんどん付け足していった絵とも工作ともつかない作品は、飾っている教室からもはみ出そうな勢いで飾られていたんだ。
でも中学になってから名前を変えた「美術」は画法に沿って描くことを要求されて、このスケッチブックの枠をはみ出すことは決してない。
2Bの鉛筆を回して尖らせる。しんとした美術室に木の匂いがふっと零れる。
目の前には真っ白の石膏像。授業中は、この石膏像を生徒皆がずらりと取り囲んでいたのだが、今彼の前にいるのはあたし一人。
薄暗い教室、影でグレーになった画用紙に鉛筆の先を滑らせる。
さぼるのは一年の終わりごろから慣れてるけど、まさか美術室にこもって真面目に絵を描いているなんて思われまい。
外では時間が過ぎていくけど、美術室の中では時計しか回らない。
絵の中の石膏像があたしに微笑みかけた気がした。
お題:絵描きの14歳