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二人っきりの忘年会
制限時間:15分 文字数:362字
「今年度赤字確実なのに喜べると思う~?」
社長が発泡酒のげっぷを吐き出した。
このまますべてを忘れ去りたいとでも言うかのような暗い目をしていた。
「元々あんまり継ぎたくなかったんだよね、俺」
「ははあ」
(これは来年、うち危ういぞ)
私は社長のグラスに新しく開けた発泡酒を注ぎながら居酒屋を見渡した。
所狭しと置かれた日本酒の数々には様々な書体のラベルが踊る。
『業績不振』『倒産』
……おや、あまり良くない名前ばかりのような……。私は目をこすった。
するとそんな酒名は存在しなかった。やはり私も酔ってるか。
再び目を凝らすと、
『事業拡大』という酒名が目に入って思わず飲みたくなった。ごくりと喉を鳴らすと、
「お前が飲むのはこれだろ」
社長が出した酒には『下剋上』とラベルが貼ってあった。
私のグラスに並々と酒が注がれた。
お題:来年の策略