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了
制限時間:15分 文字数:311字
応募しようとしている小説の内容すら思い浮かばず、行き詰っている私の前に少女は降り立った。
「僕を主人公にしてみなよ」
明るい藤色のセーラー服、頭にカンカン帽を乗せたその子を見た瞬間、涼しげで、ああ夏だなぁと思った。
大人とも子供ともつかない瑞々しい瞬間。中性的な美しさが、危うささえ覚える少女の一人称が「僕」であるのはぴったりだと思えた。
「付き合うよ、先生」
少女は私の肩をぽん、と叩いて、お猪口に新しく日本酒を注いでくれた。
「ありがとう」
私はお猪口から酒を飲もうとして、ふとそれを少女の口元に押し付けた。
「……早く大人になりなさい」
「……っ?!」
藤色の万年筆が机からぽとりと落ちた。
私はその日で筆を折った。
お題:僕と小説練習 必須要素:日本酒