10/38
翔びたい
制限時間:15分 文字数:239字
シューズをスケート靴に履き替えた足を一歩踏み出す。
観客とステージの間には目に見えない壁があって、歓声も私に向けられたものではなく、遠くでわんわん響いているようだ。
眩い光が照り返し、透明な世界をより透明にしていく。とても洗練された清々しい気分で、予期していた緊張感など皆無だった。
さあ、滑り出そう。私は柵に手をかけ、乗り越えた。
「やめろー!」
「思い直せ!」
透明な世界を突き破って地上から声援が届く。待ってて、今飛んでみせるから。
私は人生最後で最大のジャンプを跳んだ。
お題:近い床