09 お風呂
「ギルドカードを手に入れた!」
手に入れたカードを空にかかげて僕は今猛烈に感動していた。
「おめでとう、お兄ちゃん」
ユリナも一緒に喜んでくれる姿が可愛いので頭をなでなでしまくる。
本当はその可愛らしい狐尻尾もモフモフしたいのだけど幼女の股ぐらに手を伸ばすのは通報案件なので断腸の思いで諦めた。
ギルドカードはテンプレ通りに個人情報が登録されるものであった。
と、言っても名前、年齢、種族しか表示されていない。
僕の場合は年齢でいちいち疑われそうで面倒だなと思った。
何か対策取って欲しいぞ。車の免許証みたいに顔写真付けるとか?
他の地域の冒険者ギルドともオンライン? で情報共有してるから、ヨルバン以外のギルドに行っても偽造や拾ったカード使用の疑いを持たれる心配は無いとのことで一応安心した。
妙にハイテクでよすね。
ハイテクと言えばこれまた定番のギルドにお金預けるサービスもあった。
カードに金額が登録されるからどこのギルドでもお金下ろせて便利。ちなみに利子はつかない。
それもあって僕の場合、アイテムボックスあるから、預ける利点はあまりないけどね。
お金いっぱい預けてると、各ギルドから信用を得られるらしいから無意味ではないけど。
◇◆◇◆
僕の冒険者登録終了後、総合カウンターで受領手続きしていた。ロイさんたちと合流した。
ロイさんは手慣れた様子で手続きを終わらせていた。
「買取はどこでするんですか?」
「冒険者ギルドの裏手にある建物だぞ。さっき馬車停めたところからも見える場所だ」
「冒険者ギルドで買い取るんじゃないんですね」
「あそこはあくまで書類仕事だからな」
あ、やっぱり市役所みたいなもんなんだ。
冒険者ギルド裏口から抜け、馬車の駐車場を横断して買取施設に入った。
なんか工場みたいな雰囲気。
ここは長いカウンターが一つで、中に何人もスタッフが居るのが見える。
「オークまるごと10体と、魔石を売りたい」
ディンさんが伝えると、ごついおじさんがカウンターの奥から出てきた。
おじさんがディンさんから魔石を受け取ってチラっと中を見てフダみたいな物を入れて裏方の人に渡した。
「それで、オークまるごと10体だと? どこに置いてあるんだ?」
「僕がアイテムボックスに入れて持ってます」
「ほんとか?」
買取担当のおじさんはディンさんのことをチラっと見た。ディンさんはまぁ見とけよって感じで頷いていた。
「こっち来い」
案内されて向かった先は大きいお風呂場みたいな場所だった。
解体する前に血抜きして魔法で冷やしたり洗ったりする場所みたいだ。保管する冷蔵庫みたいなのもある。
「とりあえず全部出しますね」
オークを出すとおじさんがチェックし始めた。
「全部頭を一発でふっ飛ばしてるのかよ。肉は新鮮そのものだな。ついさっき仕留めたみたいだ」
「ああ、こいつのスキルはかなり凄いからな」
ディンさんは僕の頭をくしゃってしながらドヤ顔で答えた。
僕もついでにどやっておいた。
「もう行っていいぞ、査定結果はすぐ出す。
僕たちはカウンター前に戻り、しばし査定を待った。
「14番のフダお持ちの方~こちらへどうぞ~」
軽い感じの女性事務員さんに呼ばれて支払いカウンターへ向かう。
「オーク10体、ゴブリンの魔石41個、コボルトの魔石11個、レッドウルフの魔石3個、スケルトンの魔石8個でお間違いないですかぁ?」
「ああ」
「では〆て9363ゴルになります。内訳は必要ですかぁ?」
「いい。いや、オークの値段だけ教えてくれ」
「オークの魔石10個で1000ゴル。本体丸ごと状態が良いのでプラス査定込みで7000ゴルです~」
「やはり状態が良いと高くなるな。一匹700ゴルかよ」
「ですねぇ~そんな値段付けられたの初めて見ましたぁ」
「じゃあ、総額の半分をこいつのギルドカードに入れてやってくれ」
「はいはい~またどうぞ~」
事務員さんは適当な返事しながら僕とユリナの頭を撫でて去っていった。
あれ? オークの売値の半分って話じゃなかったっけ?
「総額でいいんですか?」
「ああ。みんなとも話して決めた事だ」
「わかりました。ありがとうございます!」
「じゃあ打ち上げ行こ? ロイとゴメットはもう行っちゃったし」
そう言って抱きついてくるミリさん。いや、その前にお風呂行こ?
「とりあえず、僕とユリナは先に宿を取ろうと思います」
「え? うちの拠点に来ないの?」
「拠点があるのですか。ちなみにお風呂はあります?」
「無いよ」
「それなら僕たちはお風呂付きの宿に……」
「えぇぇぇぇ……」
「まぁ、いいじゃねーか。でも、気が向いたらうちの拠点に来いよ。場所はギルドで聞けばすぐわかるからな」
「じゃあ、わたしが宿とか案内してあげるよ!」
「打ち上げはいいのですか?」
「いいの。いいの。それにエリオに付いて行った方が面白そうだし」
面白そうって、僕は珍獣じゃないんですよ。
「じゃあ俺はモンルンの酒場に行ってるから、案内終わったら来いよ」
「はいよ」
ディンさんは挨拶代わりに手をひらひらさせて行ってしまった。
「それではミリさんお願いします」
「うん!」
◆◇◆◇
やってきたのは冒険者ギルドから少し離れた高級そうな店が立ち並ぶ場所。
「この辺に来ないと風呂付きの宿はないんだよ~でも毎日泊まってたら破産しちゃうよ? 大丈夫?」
「頑張って稼ぎます!」
「お金勿体ないなぁ……ウチくればいいのに」
「お金は使ってなんぼです。いっぱい稼いでガンガン使えば経済が回りますからね」
「またおじいちゃんみたいな事言ってるし」
ミリさんはヤレヤレだぜって感じで呆れている。
しばし歩くと、高級そうなホテルに着いた。
三階建の綺麗な建物だ。
ちょっと圧倒されつつ中へと進み、フロントで受付の人に挨拶する。
「いらっしゃいませ。三人でお泊りですか?」
「はいそうでーす」
何故かミリさんが答えた。
「あれ? ミリさんも泊まるんですか?」
「うん! せっかくだし、みんなで泊まりたいよ」
「じゃあ、三人で泊まります」
「かしこまりました。本日、二人部屋ならば空いてますがどうされますか?」
僕とユリナがベッドで一緒に寝て、ミリさんがベッド一つ使えばいいか。
「では、その二人部屋でお願いします」
「一泊お一人様夕食付きで300ゴルになりますがよろしいですか?三人ですが二人部屋なので600ゴルになります。追加お一人様お食事分は別料金が発生します」
結構するね。お金の価値はディンさんたちに確認済で、だいたい100ゴルが一万円ぐらいの感覚だった。
つまり一泊三万円ぐらいする宿ということになる。そこそこ高級だよね。
「はい。それでかまいません」
「では、ご案内します」
おおぉ……。結構綺麗な部屋だ。お風呂は各部屋についてるみたいで豪華。
「お風呂のお湯は魔道具を使えば出ますので、何時でも入れます。では、ごゆっくりどうぞ」
今はまだ昼間だけど、まずはお風呂入りたい。エルフの集落出てから何日経ったっけ? 異世界初のお風呂体験だ。
「僕はお風呂入ってから買い物に行く予定です。ミリさんはどうしますか?」
「わたしもそうする」
「ユリナもお兄ちゃんとお風呂入りたい」
「いいよ~。一緒に入ろう」
「わたしも入る!」
「いや、ミリさんはダメでしょう」
「いいじゃん。みんなで入ろ?」
「とにかくダメですので、ソファーで寛いでいてください」
グイグイ詰め寄るミリさんを押しのけて、さっさと風呂に入ることにした。
こちとら中身高校生なんだからね。色々と配慮してほしいわ。
「ふぃぃぃ……。お風呂は気持ちいいな」
「ユリナお風呂に入るの初めて~きもちいい~」
僕の膝の上でお湯に浸かりながらトロンとした表情になってる。
カチャ……
あ、ドアが開いた。
湯気で多少はモヤモヤしてるが、すっぽんぽんのミリさんボディが目に飛び込んできた。
結構大きい……いや、結構なんてものじゃない。
僕は危険を感じて膝の上に居たユリナをそっと横にずらすのだった。
ユリナは「膝の上がいい」って言ったけど今はダメなんだ。察して欲しい!
そして、この状態でお風呂から上がることも不可能。
かなりのピンチだ。せめてタオルでもあれば……。そうだアイテムボックスでタオルをクラフトしよう!
そんな計画も虚しく、ミリさんはバシャバシャ体を豪快に洗ってから、僕とユリナの間に入ってきた。
目の前に浮いてるたわわな果実を見なければ良い。見なければいいのだ。
僕は目を瞑った。そう、これが正しい選択だ。ユリナも居るし、ご乱心は避けたい。
「ユリナ熱くなったから出る~」
だが、ストッパーが出ていってしまわれた。
するとミリさんが僕を抱えて膝の上に乗せた。
「あったかーい」
なんだこのフカフカ枕は。
丁度間にすっぽり入って…じゃなくて。
「あの、僕も出ますので!」
こうなったら、前かがみのまま湯船から脱出するのだ!
前傾姿勢になりそのまま脱出しようと試みた結果、ミリさんに腕を回されてあえなく捕縛された。
しかもミリさんが手のひらで受け止めたものはアレ状態のアレだった。
「え? これって……」
「あの……手を離していただけると……」
「ねぇ、わたし初めてだけどエリオならいいよ」
「なんですと?」
「いいよ」
ユリナも居るんですよ。いいわけあるかー!
「お湯収納!」
全てのお湯を収納して、二人してずっこける形で湯船で倒れたが、なんとか脱出できた。前かがみでね。
ふぅ……。いい湯だった。
体が冷めてくれば落ち着くものだ。美味しい水がうまい!
美味しい水を飲んでるとくーちゃんが闇から出できて一緒に飲んだ。
ユリナとミリさんも飲ませてあげたら美味しすぎてフリーズしていた。
さて、これからの行動計画だが。
1 酒を買う。
2 ヨルさんに質問したい事あるから手紙を書く。
3 稼ぐ。
4 ユリナをどうするか決める。
5 同級生を探す。
でも、まずは買い物だな。
熱も冷めたので、フロントに鍵を預けて三人で街に繰り出すのだった。