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53 妖精伝説

「妖精伝説?」

 

 それは美月に突然聞かされた噂。今、巷で囁かれているらしい。なんでも、小さな妖精が飛んできて危険が迫ってるのを教えてくれたり、落とし物を見付けてくれたりするのだとか。

 異世界でならともかく、現代日本でそんなオカルト地味た話なんて本当にあるのだろうか? ていうか異世界でだって妖精なんて見たこと無いよ。


「それ本当なの? ム○とか読みすぎなのでは?」

「動画も出回ってるよ。ほら、これ」


 美月が見せてくれた動画は確かにソレっぽいものが映っている。とはいえCGなのか本物なのか僕には見当つかない。

 それに映ってるのはチラっとだからよくわからない。普通に考えてネッシーの時みたいに誰かが作った映像なのだろう。


「CGとかじゃないの? こんな非現実的な生物が居るわけない」

「エリオがそれを言っちゃうんだ?」


 確かにー! ってお互い笑いあってその会話は終わった。まぁ、言われてみれば僕はファンタジー生物そのものだもんね。

 もしかして白ヨルさんが、この世界をファンタジー化しようと画策してるのだろうか……。 




 こんな話が出た翌日、ついに美月の妹さんの凛ちゃんが来る事になった。

 秋葉原駅で待ち合わせなので美月は駅前に行く。僕が一緒にいると目立ってしまうから部屋で留守番だ。そんな訳で部屋でFPSをプレイしてたら美月から電話がかかってきた。


「どしたの?」

「凛が到着時間過ぎても待ち合わせ場所に来ないの。電話しても出ないし……」


「乗った電車間違えたとか? スマホの電池が切れたとか? もしくは降り口間違えて秋葉原駅で迷ってるとか?」

「凛は事前に電車の経路は確認してたから、駅で迷ってるというのが一番あるかもしれない。どうしよう……」


「わかった。僕が待ち合わせ場所の旧ガ○ダムカフェ前に居るから、美月は周辺探してみては?」

「そうしてくれる? じゃあ、少し見回ってくるね!」


 てな訳で、旧ガ○ダムカフェ前に来た。今は同じバ○ダイ系のお店になっている。カフェの時一度行ってみたかったな。

 凛ちゃんの顔はスマホの写真見て知ってるから会えばわかると思うんだけど、問題は僕目当てに集まってしまった人たちが多すぎて会えるか不安だ……。


「エリーちゃんなにしてんの?」「動画撮ってるの?」「写真撮らせて貰っていいですかー?」「エリーちゃん俺と結婚してくれぇ!」

 色んな言葉が僕に浴びせかけられるが秋葉原ではもう慣れっこだ。ファン公式ルールみたいなのが勝手に出来て、一定以上は近寄っては来ない。

 僕は笑顔で手を振っていれば良い。ファンの人たちは大勢集まってはいるけど、見渡す限り凛ちゃんらしき人は居ないな。


 美月に電話して凛ちゃんと会えたか確認しようとしたその時、まさかの生命体が僕に降臨した。

 空から舞い降りる神秘的な姿をした妖精。ティ○○ーベル的なそのフォルムは、まさにthe妖精だ。それを見てギャラリーはザワつく。多分動画めっちゃ撮られてる。


『エリオ~じゃなくてエリーちゃん。凛ちゃん見つけたわよ』

「え? え? 誰?」


『わからないの? 顔をよく見て』

「……もしかしてバルデュアスさん?」


『Yes! びっくりした?』

「びっくりしたけど、それより凛ちゃんは何処に?」


『ok! ついてきて』

「なんでそんな喋り方してるの……」


 なんでバルデュアスさんが居るのかは謎だけど、彼女を追いかけて僕は走り出した。神田方向だ。

 バルデュアスさんは僕が地上を走っているのを解っていないのか、兎に角一直線に飛んでいく。仕方ないから神田川を飛び越え、店舗やビルの屋上の上を飛び跳ねて進む。

 神田川を飛び越える際は、ボートに乗ってる人に目撃されて色々やばい。てか、神田川ってかなり汚いのにボートに乗って大丈夫なんだろうか……って今はそんな事どうでもいいか。


 そんな感じに妖精の後を追っていくと、大通りから少し外れた小道の植え込みに潜り込む様に女性が倒れていた。女性は薄着で傷だらけだ。意識はあるが、目が虚ろで何かおかしい。


『凛ちゃんはこの子でしょ?』

「え? 全然違いますよ?」


『でもほら、目の感じとか似てない?』

「うーん……。まぁ、写真と比べると似てなくもないかな。でも違いますよ。この人は髪の毛染めてるし、凛ちゃんより明らかに年上」


『違ったかぁー。日本人の顔は見分けるの難しいわね』

「それより、この人何かおかしい。救急車呼んだ方がいいかも」


 その言葉を聞いた女性は、目を見開いて僕を睨む。何? なんか怖いんだけど。


「救急車は呼ばないで下さい……。あと、私に構わないで下さい」

「そうですか? 本人がそう言うなら無理には呼ばないですけど」


『いいの? その子、このままだと数ヶ月以内には死ぬわよ。脳の神経伝達系がメチャクチャになってる。内臓もかなりボロボロだしね。恐らく薬物乱用じゃないかしら』

「もしかして鑑定みたいな事が出来るのですか?」


『魔力を通して身体の状態が解るのよ。その辺は説明が難しいわ』

「それが本当なら放置という訳にはいかないですね」


 僕がスマホを出して119を押そうとした時、こっちに走ってくる女の子が見えた。こっちに走ってくるのは探していた凛ちゃんだった。

 かなりの勢いで走ってきた凛ちゃんは僕たちの前で急停止をする。息を切らせてるな。中々言葉を発せないみたいだ。


「美月の妹さんの凛ちゃんだよね? なんで此処に来たの?」

「ハァ……ハァァ……。エリーさん、ハ、ハァ……はじめまして! 凛です! よろしくおねがいします」


「こちらこそ、よろしくです。大丈夫?」

「ふぅ……。もう大丈夫です。此処に走ってきた理由は、山手線からその女性が男達に追われている姿が見えたから、急いで駆けつけました」


「それだったら警察に通報するだけでいいんじゃない? 巻き込まれたら危ないよ」

「私、こう見えて空手4段ですから。それより、その女性は大丈夫なのですか?」


「んー。色んな意味で大丈夫じゃないみたいだね。凛ちゃん僕の後ろに回ってくれる?」

 

 僕たちが会話している間に女性を追っていたと思われるチンピラぽい5人が近くまで来ていた。倒れている女性は動揺して逃げようとしたが、足腰が立たずに失禁して声にならない叫び声を上げている。


「っんだおめぇら、そこ退けや」「邪魔だコラァ」「エリーちゃん……」「失せろや!」「ガキは消えろ」


 なんかチンピラの中に一人、僕のファンが居るぽいな。

 しばし睨み合ってると、チンピラのリーダーぽい男はズカズカと僕に近付いてくる。同時にすぐ横に黒いバンが停まった。スライドドアが開いて、中で男が待機してる。


 チンピラリーダーは僕を押し退けると、後ろで倒れている女性の腕を掴む。そのまま引きずってバンに乗せようとする。

 こういう連中と関わりたくはないが、見過ごす訳にもいかないので行動しようと思った時、凛ちゃんがチンピラリーダーの手を叩いて女性を開放させた。


「ってぇな! オイ、このガキも攫っちまえ!」

 リーダーが仲間に命令すると、仲間がゾロゾロと集まってくる。それを見て凛ちゃんは戦闘態勢に入った。美月の妹とは思えない程好戦的だ。なんと勇ましいことで。


 僕は、凛ちゃんを掴もうとする男の腕を取り、男に内側に腰を入れると巻き込むように背負投する。人間離れした身体能力の僕に地面に叩きつけられた男は白目剥いて失神する。

 一人倒されたのを見て、僕を背後から捕まえようと迫るチンピラ二人に両肘を鳩尾に入れて同時に倒す。

 仲間たちがあっと言う間に倒されて、残されたリーダーと、僕のファンぽいチンピラは少し腰が引けたようだ。


「怪我したくないなら帰った方がいいよ?」

「……んだぁ、オメエ! 攫ってバラしたるわ」「エリーちゃん本当につよい……カッコイイ!」

 リーダーはポケットからナイフを出すと、僕の太ももを抉るように刺しに来る。


「エリーさん!」

 それを見た凛ちゃんが飛び出そうとするが、僕が手で制した。僕はそんなトロい攻撃に当たらないし、聖女の護りをかけてるから仮に当たってもダメージにならない。

 

 割と慣れた手付きで足を刺しに来るが、太ももに当たる直前、身体を翻して男の横に移動すると、掌底を男の腹に押し当て、黒いバンの中にぶん投げた。

 飛んで行ったチンピラリーダーはバンの中で待機していた男と衝突して抱き合って気絶した。汚い絵面だ。


「リーダーさんはお帰りみたいだけど、どうします?」

「は、はい! 俺っちも帰ります! エリーちゃんとお話できて嬉しかったです! 動画頑張って下さい!」


 僕のファンのチンピラさんは、キラキラした目で僕を見ながら倒れている男たちを引きずって車に押し込むと、車を発進させてこの場を去って行った。


「さて、その女性をどうしたものかな」

「エリーさん、すみません。私が先走ったせいで危険な目に巻き込んでしまいました」


「凛ちゃんがやらなくても僕がやってたから問題ないよ。ただ、いくら格闘技経験があっても戦うより逃げる選択した方がいい」

「はい。すみませんでした」


「まぁ、僕もつい最近それで失敗して大切な人に迷惑かけたし、人の事を言えたもんじゃないけどね……あ! 美月のこと忘れてた」

「あっ……」



 この後すぐに美月に電話して、タクシーで駆けつけてきた美月に二人して怒られた。

 僕の肩に乗ってる妖精についても色々聞かれたが、説明したくても僕自身が何故バルデュアスさんが居るのか解らないので説明は後回しでお願いした。


 警察か救急車かどっち呼ぶか迷ったけど、本人がそれを望んでないので、結局女性もタクシーに乗せてマンションまで連れてきた。とりあえず事情を聞こう。場合によっては警察に通報しないとだね。

 女性はソファーに座ってぐったりしている。目は何処を見てるのかわからないし、涎も垂れてきた。


「どうして薬に手を出したのですか?」

「……え? 妖精が見えるよ。あはははは! 可愛い! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「ありゃ……薬の離脱症状かな」

『会話にならないし、治してあげれば?』


 魔法が世間にバレたら困るので、治していいのか少し考えたけど事情が解らないし仕方ない。聖女の奇跡を女性にかける。ついでに聖女の輝きで身体も綺麗にする。


「気分はどうですか?」

「……私、どうして?」


 女性は急に健康体になって逆に違和感を持ったみたいだ。僕は薬物を使った事ないから解らない感覚だ。


「どうやったとか詳しくは話せませんが、あなたの身体を治しました。元の健康体に戻った筈です。それで、男たちに追われていた理由を話してもらえますか?」

「治った? 嘘……」

『面倒ね。さっさと話さないと直接記憶にアクセスするわよ』


「ヒィ! 妖精が見えるって事はまだ治ってないんじゃ?」

「その妖精はここに居る全員に見えてますよ。それよりあなたの事情を話して下さい」


 やっと語り出した女性が言うには、大学の知り合いに誘われて合コンに行ったら、酒に睡眠薬盛られて気が付いたら車の中で乱暴された後だった。

 その時の動画や写真で脅されて風俗で働かされて、耐えられなくなって警察に駆け込もうとしたら掴まって薬漬けにされたらしい。聞いてるだけで胸糞悪い。


 女性は震える体で涙ながらに話している。その姿に嘘偽りは感じなかった。美月と凛ちゃんは女性の涙を拭いてあげたりして慰めてる。


『神経の流れを見る限り、その子は嘘は言ってないわ。エリーは日本は安全って言ってたけど、そうでもないみたいね』

「スマホで見て知ってるのでは? この世界の中では日本は安全な部類の国です。ていうか、何でバルデュアスさんが居るのか説明して欲しいです」


『仕込みは完璧って感じよ』


 バルデュアスさんの説明によると、いつぞや僕のスマホの画面をわざと割った時に、直す際にこっそり分体をスマホの中に仕込んだらしい。

 そんなこと可能なのかよ……。でも、それならみーちゃんも来れるのか?


『一応言っとくけど、フェンリル王は無理よ。分体作れないしね』

「あ、そうっすか」



 さて、この人をどうしますかね。このまま帰したらまた反社の食い物にされる確率高いな。警察に任せるのが一番だけど、彼女はそれを望んでない。

 ほとぼり冷めるまで此処に置いておくのもアリかもね。彼女は青森から出てきて一人暮らしで東京の大学に通っていたので、今回の件は親にはまだ知られてはいないらしい。


『反社なんてエリーが殺っちゃえばいいじゃない』

「また、知っててそんな事を言う。そんな事したら逆にこっちが犯罪者ですよ」


『バレなきゃ犯罪じゃないって、この世界の邪神が言ってたわよ』

「アニメの言うことを真に受けないでください」

 こんな感じにバルデュアスさんと冗談交じりに話していると、さっきからツッコミ入れてくてウズウズしてる美月が話に入ってきた。


「それで、今度はエリオと妖精の関係を聞かせてくれる?」

 美月と凛ちゃんと女性の目が僕を捕らえる。こうなったら全員思いっきり巻き込んでしまおう。面倒になったとも言う。


「凛ちゃんは僕の事を美月に聞かされてるよね?」

「はい。姉の恋人なのだとか。でも、聞かされてるのはそれだけです」


「それだと、同性愛カップルみたいだね。僕は男なんだ。スキルで女にもなれるけど。それと、これが一番重要だけど僕は異世界から来た本物のエルフなんだ」

「性別の件は意味が解りませんが、本物のエルフについてはあまり驚きませんね。本物じゃないかってネットで言われてましたし。実際、本物にしか見えません」


「妖精はその異世界で精霊王と呼ばれている存在なんだ。僕のスマホに紛れてやってきたらしい」

「スマホに紛れてって意味解りません。まるで異世界でもスマホ使っているみたいじゃないですか」


 確かに途中から説明したのでは意味わからないよね。僕がバスの事故で死んでから異世界で暮らし、再び日本に来るまでの経緯をかいつまんで話した。

 これには凛ちゃんも女性も驚いている様だった。こんな話されてもすぐには受け入れ難いよね。


「という訳で、そちらの女性を治したのも僕の治癒魔法なんだ。虫歯とかも治せるから気軽に言ってね」

「……さすがにそれは驚きました。そういえばそんなバス事故ありましたね」

「私を治してくれてありがとうございます。日に日に身体が蝕まれていって本当に怖かったの。何度死のうと思ったか……」


「今更ですがお名前をお聞きしても? ちなみに僕はヨーツーブではエリーと名乗ってますが、エリオが本名です。呼び方はどっちでも構いません」

「では、エリーさんと呼ばせて下さい。私は工藤楓と言います」

「私は山城美月、この子は妹の凛だよ」

「凛です。よろしくお願いします」

『バルデュアスよ。今まで通り妖精と呼んでくれていいわ』


 全員自己紹介と事情が飲み込めた所で、今後どうするか決めよう。工藤さんは僕たちのマンションに隠れているのが一番安全だけど、いつまでもそうしては居られない。

 警察以外で工藤さんを守る何か良い方法はないだろうか。それに今回の騒動で、もしかしたら美月や凛ちゃんも反社に目を付けられたかもしれない。


 うーむ。結局僕が反社の事務所に乗り込んでボコボコにするのが一番なのかな。いや。更なる争いに発展するか。アオイたちが居てくれたら監視とかお願いするのだけどな。

 待てよ、この世界にも精霊って居ないのかな?


「バルデュアスさん、この世界って精霊居ますか?」

『居るわよ。ただし、向こうの精霊とは違う。呼んでみればわかるわ』


 この会話を聞いて、みんなはどんな精霊が呼ばれるのかワクワクして見ている。僕もワクワクする。可愛いのが来るといいな。


「いでよ! 水の精霊!」


 ……来ない。僕は両手を天に掲げたポーズのまま固まる。みんなが少し笑っている。やめて笑わないで。


『~の精霊ってのは居ないわ。それを意識して呼んでみて』

「先に言って欲しかったです……」


 集中して意識を不思議なものを感じ取れるように研ぎ澄ます。何か居るな。これの事なのだろうか。


「来やがれ! よくわからない存在!」


 すると、辺りを陰鬱な雰囲気が漂いだす。美月と凛ちゃんは真顔になって工藤さんは目を見開いて固まっている。ん? 僕の上に何か居るの?

 僕も顔を上げて上を見ると、思わず息を飲んだ。な、なんだこいつ……。


 そいつは全身の皮を剥いで肉がむき出しになってる細身で長身の女性だった。瞼のない大きな眼球が僕を見下ろしてる。正直怖くて動けない。


「あ、あの……バルデュアスさん、これが精霊?」

『どう見ても物の怪の類でしょ。近くに居るものを感じるままに呼んだらダメよ』


「は、はい、お帰り願おうと思います」


 僕はこの妖怪ぽい人に「お帰り下さい」と何度も訴えるが、首を振るばかりで帰ってくれない。美月たちは怖すぎたのか三人くっついて離れた場所で僕を見守ってる。


『いいじゃない。その子と契約すれば。結構強そうよ。可愛いし』

「いやいやいやいやいやいや!」


「あたし……おまえとちぎり、かわしたい」

「しゃべったーーーーーーーー!」


『ていうか、エリーの生気を使って実体化してる時点で契約は成されたも同義よ。使い魔として可愛がってあげればいいと思うわ』

「しかし、こう言っては妖怪の人に失礼だけど、怖すぎて無理です」


「あたし……こわい?」


 妖怪さんは悲しそうだ。いや、表情は変わらないから雰囲気の話だけど。なんか、酷いこと言って僕がいじめたみたいな感じだ。


『エリーの生気をもっと使って姿を変えてみたらどう?』

 バルデュアスさんは妖怪さんに近付くと、色々とアドバイスしている。力の使い方がどうとか、良い香りを出すやり方とか教えている。

 イマイチ要領を得ない妖怪さんの態度に面倒になったのか、バルデュアスさんが妖怪さんに直接力を注ぎ込む。その力は僕から引き出されているぽい。


 つか、バルデュアスさんと僕は契約しているわけでもないのに、何で僕の力を引き出せるのだろう? そうこうしてる間に妖怪さんの姿が変わっていく……。

 やがてすっかり姿が変わった妖怪さんは、妖怪ではなく美少女になっていた。


『これならどう? エリオ好みなんじゃない?』

「確かにそうかもですけど、この顔何処かで見たこと……あ、死のロベリア?」


『そう。エリオの心の中で最近一番印象に残っていた女性をモデルにしたの』

「何度も殺されかけましたしね、そりゃ印象にも残るでしょう。ですが、ある意味以前よりもっと怖く感じるかも」


『気に入らないの? 我儘ね。これならどう?』


 そしてまた外見が作り変えられていく。バルデュアスさんは高○クリニックで働けばいいと思うよ。

 整形のコツを掴んだのか、それはすぐに出来上がった。今回のは誰をモデルにしたんだろう?


「誰をモデルにしたのですか?」

『肉が剥き出しなのが怖いんでしょ? だから皮を盛ってみたの。これがこの子が本来あるべき姿なのかもしれないわ』


「……なるほど。この妖怪さんはどういう存在なんだろう」


 姿を変えた妖怪さんは僕にゆっくりと近付いてくる。見た目は普通の女性になったけど、裸で巨乳なのに雰囲気は怖いままだ。ていうか怖い!


「あたしと……ちぎりかわす」

「そ、そうするとどうなるの?」


「あたしが、おまえの……なやみ、かいけつする」


 妖怪さんは両手を前に出して僕を捕まえようと迫ってくる。長い髪がだらりとして、まるで巨大な貞○に襲われている感じだ。僕は足がすくんで動けない。

 バルデュアスさんにヘルプの視線を送るが、ニコニコして危機感はまるで無い。


 もう一歩近付けば捕まりそうになった時、走り寄ってきた美月が僕を抱えて部屋の隅っこまで避難した。美月が頼もしい。こういう切羽詰まった時は女性の方が強いのかもしれない、


「どうして……じゃま、する」

「エ……エリオに手を出さないで!」


「ヴヴヴヴぅぅぅ……!」


 ご機嫌を損ねてしまった妖怪さんは怒りの表情で唸り声を上げる。せっかく盛ったお肉も霧の様に消え去って恐ろしい姿に戻った。

 妖怪さんが一歩進むと、一瞬で僕たちの元に現れた。僕を見下ろし、長い髪を伸ばして全身に絡みつけてくる。僕は恐怖のあまり言葉も出ない。

 美月は僕に巻き付いた髪の毛を必死に外そうとしてるが、実体が無いのか髪を掴めないでいる。ついには凛ちゃんまでやってきて髪を外そうとしてる。


『エリー。大丈夫よ。彼女を受け入れなさい』

「……そ、そんなこと言われても怖いですよ」


『何が怖いの? よく見ると可愛いじゃない。筋肉と腱と血管の作りがよく解って勉強にもなるわよ』

「そんなフォロー要りませんって! 助けて下さい!」


『美月ちゃんだって凛ちゃんだって一皮剥けば彼女と同じなのよ。もしその子達の皮が剥けたら、もう愛してあげないの?』

「いや、そんな屁理屈はいいので助けて下さい、お願いします!」


『少しうるさいですよ。テレビの音が聞こえません。あ、テレビに私とエリーが映ってるわ。中々綺麗に撮れてるわね』


 工藤さんはとっくに気絶して倒れてるし、美月と凛ちゃんは必死に髪を外そうとしてる。バルデュアスさんはテレビつけてニュースを観ていてこっち見ずに話している。

 無関心と言うか、楽観的と言うか、よくわからん精霊王様だ……。しかし、ここまで危機感が無いということは本当に無害なのかもしれない。

 

 こうなったら、してやろうじゃないか。するぞ! その契約! 絡まってくる髪への抵抗をやめて自分の中に入ってくる妖怪さんの何かを受け入れた。


「あぁぁーーー!」


 妖怪さんは叫び声を上げると再び皮が戻って、恍惚の表情を浮かべ、両手で自分の頬を爪で引き裂いた。その勢いのまま自分の乳房までを引き裂き、辺りに血が飛び散る。

 これには美月も凛ちゃんも顔を引きつらせている。ていうか、心臓がドキドキする。なんだこれ? 目眩もするし意識が……。



◇◆◇◆



 気が付くと僕はソファーに寝かされていた。どうやら美月に膝枕されてるらしい。美月は僕の意識が戻ったのに気が付くと安堵した表情を見せる。


「あれからどうなった?」

「えっとね……」


 美月はなんとも言えない表情でテレビの方を指差す。そこにはバルデュアスさんと仲良さそうにしてる妖怪さんが居た。一緒にバラエティ番組を見ている。

 ただ、妖怪さんからは恐ろしい雰囲気はまるで無く、大柄な女性にしか見えない。あ、妖怪さんがこっち見た……。おっとりとした表情で、何処かカナ(ママ)を連想させるものがある。


 妖怪さんはパタパタとこっちに歩いてくると、僕の顔を覗き込む。なんかちょっと可愛いので動揺する。飛んできたバルデュアスさんが僕の肩に泊まり、状況を報告し始めた。


『エリーの魔力と生気と結びついて、この子かなり進化したわ。ある意味あっちの妖精より強いかもね』

「えりー ちぎりかわしてくれて ありがとう」


「ど、どういたしまして」

『まだ怖いの? もうエリーの使い魔なんだから可愛がってあげないとダメよ』 


「わかりました……。ところで妖怪さんには名前あるんですか?」

「ようかいちがう あたしはさまようたましいだった ころされたうらみ、はらすため でも、もうひつようない なまえはフミ」


 名前はフミさんね。聞けば彼女は明治生まれで、頭のおかしい地主に拷問されて生きたまま全身の皮を剥がされたらしい。その怨みを晴らしたい一心で存在し続けた彼女は悪霊と化していたとのこと。

 ていうか、幽霊とかってマジで居るのね。全然信じて無かったよ。もしかして宇宙人とかも居るのだろうか。


「フミさんは今どういう状態なの? 僕にはまるで生きている普通の人間にしか見えない」

『エリーの魔力を使って仮初の肉体を作ってる感じね。精霊の実体化と同じよ。やり方を教え込むのに苦労したわ』


「これからよろしく えりー」

「よ、よろしくね」


 そんなこんなで始まった、妖精と幽霊がいる生活。波乱の予感しかしねぇ……。




 翌日、朝食後に工藤さんは自分が借りてるアパートへと帰ると言い出した。幽霊が怖いからとかではなくて、頑張って入った大学生活を途中で諦めたくないみたい。

 しかし、帰してしまって大丈夫だろうか……。また反社に掴まったら今度こそ危ない気がする。


 何か彼女を救えるスキルでも追加されてないだろうかと、自身のステータスを見てると異世界通販がアクティブになっている事に気付く。

 こっち居る時に異世界通販って意味ないじゃんと思いつつ、スキルを使用してみると買えるラインナップがテスの物になっている事に気が付く。


 武器防具アクセサリー食料まで色々ある。アクセサリーの項目を見てみると防御の腕輪や指輪を見つけた。

 

 ●精霊の腕輪……第四階位の魔法まで防ぐ。物理防御効果無し。200万円。

 ●魔人の腕輪……物理防御特化型。地竜の突進も防ぐ。150万円。

 ●フェンリルの腕輪……あらゆる攻撃を防ぐが装着者の魔力を消費する。400万円。

 ●幸運の指輪……良い事があるかも。2500万円。

 ●ストレージリング……総重量10tまでアイテムを収納可能。500万円。

 ●フラッシュリング……目眩ましの光を放つ。使用者には効果無し。20万円

 ●インパクトリング……衝撃波を放つ。中型の魔物も吹き飛ばす。30万円

 ●イージスリング……第七階位の魔法を防ぎ飛竜のブレスも防ぐ。8000万円。

 ●破壊神の指輪……絶対無敵防御&超絶破壊攻撃。オススメ。今ならなんと0円。


 色んなのあるな……。ていうか最後の何だ? どう見ても罠にしか思えない。ていうか対価が日本円? まぁそれは構わないけどね。お金はあるし。

 ストレージリングは便利そうだ。これは美月と凛ちゃんに買ってあげよう。あと魔人の腕輪とフラッシュリングがいいかも。インパクトリングは人を殺しかねない。


 魔人の腕輪とフラッシュリングをタップして購入を決定してみた。予想通りアイテムボックスに品物は届いていた。お金は払ってないけど、商品届いた。銀行から引き落とされてるのか?


「工藤さん、これを持って行って下さい」

「これは?」

 

 アイテムの説明をしつつ装備してもらう。試しに軽く工藤さんにチョップしてみたら見えない壁に跳ね返された。これは凄いな。

 あと、トイレに行ってフラッシュリングを試しに使ってもらった。ここで使われたら全員ム○カになってしまうしね。


「この異世界グッズで身を守って下さい。あと、何かあれば気軽に電話して下さい。助けに行きますので」

「ありがとうございます。もうだめだと思ってたのに、また生きるチャンスを与えてくれたばかりか……こんなに良くしてもらえて私、本当に感謝してます!」


 工藤さんは涙を流しながら僕の手を取る。僕も工藤さんが立ち直ってくれると嬉しい。それだけを願った。




 マンションの入り口まで工藤さんを見送って一息ついたので、二人用に買ったリングとか渡そうかね。


「美月、凛ちゃん、これ買ったからあげるね」

 魔人の腕輪、ストレージリング、フラッシュリングを二人に手渡す。ストレージリングの説明をするとかなり驚いていた。二人はテーブルの上にあるコップを出し入れして使い方の練習している。


「凄い便利ねコレ……こんな物があったら世界の常識がひっくり返りそう」

「便利だし楽しい! ありがとうございます! エリーさん! あ、お義兄さんと呼んだ方がいいですか?」


「エリーでいいよ。ともかく、これで二人の安全はある程度確保されたね。少し安心した」

「ねぇ、指輪はエリオが付けて欲しい」


 美月は左手を差し出す。明らかに薬指に嵌めろアピールしている。いいだろう。そのノリに付き合ってあげよう。

 僕は美月の左手を取ると、薬指にストレージリングを差し込む。それを見て美月はうっとりとしている。改めて見ても美月は綺麗だな。最初見た時よりも綺麗になってる気がする。


「お姉ちゃん朝からラブラブ過ぎでしょ。でも、お姉ちゃん本当に綺麗になったよね。恋をするとこんなに変わるものなの?」

「ていうか、精神的なの関係なく美人度が上がった気がする。僕も今それを不思議に思ってた」


『毎日の様にエリーの体液を摂取していれば、そうなって当然よ。ハイエルフは特別な生き物だから、その体液、特に精液は摂取した生物を根本的に変えてしまうわ』

「えっ!? そんなの初耳なんだけど!」


『大丈夫よ。ハイエルフの因子に引っ張られて外見が綺麗になって魔力持ちになって老け難く寿命が伸びる程度の効果しかないし』

「それじゃ美月は魔法使えるのですか? 寿命が伸びるって重要な変化じゃないですか」


『魔法は使えると思うけど魔法の知識が無いこっちの人間には難しいかもね。美月ちゃんが今後どうなって行くかは私としても興味あるわ』

「美月……ごめん、まさかこんな事になるなんて」

「謝らないで。私はエリオと一緒に居られるなら何百年だって生きたい」


「美月……」「エリオ……」


「そういうのは帰ってからにして下さい。お姉ちゃん、今日は編入試験と面接に行くんだから準備して」

「そうだった! 昨日色々あったから忘れてた!」


「美月も行くの?」

「うん。凛の保護者だしね」


 それから美月は化粧したりスーツを着たりして忙しそうにしてた。凛ちゃんは前の学校のセーラー服姿だ。セーラー服って可愛いよね。


 準備が整うと、予約してたタクシーに乗って二人は出掛けて行った。残された僕は、何かやってるバルデュアスさんとフミさんに視線を向ける。えっ!?


「何でフミさんセーラー服着てるの? ていうか、バルデュアスさんもセーラー服だし」

『私がお手本見せて服を構成する練習させてるのよ。可愛いでしょ?』


「にあう?」


「うん。物憂げな文学少女って感じで可愛いよ」

「う、うれしい……」


『私は?』

「とても可愛いですよ。妖精がセーラー服ってアニメキャラみたいだ」


『エリーもお揃い着ましょう。クラフトで同じの作れるでしょ?』

「えぇ。作れますけど。今度の動画にセーラー服で出るのもいいかもだから、作ってみようかな」


 こうして作った凛ちゃんのセーラー服をアレンジしたセーラー服を着てみる。鏡に映る姿は我ながら超可愛いな。


『お揃いの服も出来たので、みんなで出掛けましょう。秋葉原を見て周りたいわ』

「本気ですか? 目立つなんてもんじゃないですよ」


『目立つと何か問題有るの? 動画配信なんてしてるエリーの言葉とは思えないわ』

「そう言われると返す言葉がありません……」


 そしてやってきた秋葉原駅前。当然目立つよね。セーラー服のエルフと、その肩に乗ったセーラー服の妖精。その隣に高身長のセーラー服の女性。

 ギャグマンガでもこんな取り合わせは滅多に無いと思う。


『まずはラ○オ会館に行ってみたいわ』

「アキバの定番きましたね」


 エスカレーターに乗って上の階に上がり、フロアをぐるっと回って色んなお店を冷やかしつつ、またエスカレーターで上っていく。


『こっちの世界にもこういう本あるのね』

 三階の本屋で試し読み用の青年コミックをめくる妖精。周りのエロ漫画スキーの兄貴たちも戸惑っている。 

 僕も試し読みしたいけど、一応有名人なので残念だけど諦めてスルーした。よし、上の階に行こう。

 


『フィギュア可愛いわね。あれなんて気に入ったわ。エリーの部屋にも似たのあるわね』

「ア○ターのですね。僕もこのメーカー完成度が高くて好きなんですよ」

「にほん……かわった こんなおにんぎょうみたことない」

 四階のフィギュアの売ってるお店のガラス棚にたくさん並んでるフィギュアをみんなで眺める。中にはかなりエッチなのもあってフミさんは恥ずかしそうにしてた。可愛いな。


 

『ここ気に入ったわ! あのお人形なんてとても可愛いわ! エリー買いましょう!』

 バルデュアスさんが気に入ったお店は八階にあるドールのお店だった。確かに可愛いけど、何となく男は入りにくい雰囲気あるな……。でもよく見ると男性客も多い。


「この人形が気に入ったのですか? 綺麗な顔だし服とかちゃんと出来てるんですねー。凄い」

「さわっても いいのかな」


 僕たちが色々と話してると店員さんがやってくる。とても優しそう。


「この人形を購入したいですが」

「こちらは非売品の子でして、お売り出来ないんです……申し訳有りません」

 店員さんはとても申し訳無さそう。非売品なのかぁ。確かに値札は付いてないけど。


『じゃあ、これがいいわ』

「この子は70番のヘッドをウーナちゃん風にメイクしたもので、ほぼ同じ子をフルチョイスでお迎え可能ですよ。約二ヶ月程かかりますが」


『もう! 今すぐ買える人形はどれなの!』

 妖精と店員さんのやり取りに思わず笑ってしまう。他のお客さんたちも笑っている。ていうか、店員さんの妖精にも接客態度崩さないとはプロだな。


 結局買えるのはスタンダードと呼ばれるのと、ワンオフという人形だけだった。これだけ展示してあって買えるものはあまり無いのね。不思議な店だ。

 先週にあったワンオフ販売会? の時に売れなかった人形があって、バルデュアスさんはそれ気に入ったみたいで買うことにした。

 それでも二週間ぐらいは展示され続けるから、すぐに渡してもらえないらしい。意味判らん。あと10万円以上して値段に驚いた。


 

 その後、ロイ○ルホストで食事してからアキバをブラブラした。本当に色んなお店あるよね。個人的にメイドカフェは興味がなかったから行った事なかった。

 でも、バルデュアスさんは行ってみたいらしい。ほんと俗物精霊王だ。僕のファンと思われる人たちをゾロゾロと連れてメイドカフェを目指す。


 何処がいいんだろう? なんか最近はボッタクリのお店があるとネットに出てたな。まあ、ぼったくられるのはそれはそれで面白い体験かも。

 スマホで店を調べてると、バルデュアスさんが御徒町方向へ飛んでいく。


「ちょっ、どうしたんですか?」

『人の感情の強い揺らぎを感じるわ。ついてきて!』



◆◇◆◇



 バルデュアスさんを追っかけて辿り着いたのは、人気のない裏路地だった。僕とフミさんは超人的な足の速さなので、ファンの人たちはさすがに誰もついて来れなかった。

 そこで急発進する白いバンを目撃する。あの車が怪しいのかな?


『女の子が無理やり連れ込まれたみたいよ。中で凄い感情が乱れているわ』

「拉致ですか? 昨日もそんな事あったし、都会は怖いですね」


『助けてあげないの?』

「ナンバーは覚えましたから警察に通報します」


『そんな悠長な事を言ってたら楓ちゃんみたいに乱暴されちゃうわよ。そもそも、今まさに車の中で乱暴されてるみたい』

「……わかりました」


 僕たちは白いバンの走り去った方向に全力で走る。フミさんは余裕でついてくるな。幸い車の位置はバルデュアスさんが探知してるから迷わず追えた。

 上野の駅近くで信号待ちで停まったバン。なんか揺れてる……。手遅れだったかな。いやいや、だとしても放置は出来ない。

 僕は意を決して白いバンの中に聖女のゆらめきで転移した。


 煙草の煙でむせ返りそうな車の中では、女性の下着を必死に脱がそうとしてる男と、手足を押さえつけてる男たちが居た。


「どうやら間に合ったみたいだね」

「なんだこいつ!!」「何処から入った!」「ファ!?」


「んんーーーーーーーーーーーーーー!」


 猿ぐつわを噛まされた女性は僕に助けを求めてる。さて、どうやって助けようかね。この狭い車内では動き回れない。

 全員に腹パンしようかなと思った時、男たち全員が髪の毛で拘束された。その締め付け力は凄いらしく、毛が肉に食い込んで骨が軋みを上げる。

 

 振り向くと、いつの間にか現れたフミさんから長い髪の毛が伸びていた。フミさんは鬼の形相でめっちゃ怖い。


「フミさん、それ以上すると死んじゃうから一旦止めて!」

「わかりました」


 女性の猿ぐつわを外すと、泣きながら僕に抱きついてくる。相当怖かったよね。ごめん。バルデュアスさんに言われなかったら手遅れになる所だった。


「もう大丈夫ですよ。一応聞いておきますが、この男たちは知り合いですか?」

「エリーさんいい匂い。すんすん……ちゅる」


「うひゃっ。ちょ、なんですか」

 僕に抱きついた女性は泣きながら首をペロペロしてくる。なんだこの人? もしかして助けない方が良かった?


「すみません。本物のエリーさんに会えて興奮してしまいました」

「それならいいですけど、それで質問の答えは?」


 しかし、そんな話してる場合ではないようだ。運転手ごと毛で巻き込まれているので、車は動かせずに後ろからクラクションが鳴る。都会だから車多いし邪魔だよね。

 仕方ないので、運転手の首にだけ髪の毛を巻いて、とりあえず停車して大丈夫の場所まで走らせた。運転手は余程怖いのか、手とかプルプルしてるし事故らないか心配した。


 少し車を走らせて、かつてバイク屋街だったと言われている辺りに停車して車を出る。煙草臭くてたまらないしね。男たちは拘束されたままだ。


「エリーさん、ありがとうございます! この男たちは知り合いと言えば知り合いです。○○テレビのスタッフです」

「あなたは芸能人か何かですか?」


「わたしの事知りませんか? 一応テレビにも出てるのですが。如月亜梨沙と言います」

「すみません。テレビは深夜アニメしか観ないもので」


『昨日テレビで観た気がするわ。罰ゲームで激辛ラーメン食べさせられてた子でしょ?』

「あ、はい。そうです。ところで妖精さんはわたしの幻覚ですか?」


『そんなわけないじゃない。失礼ね』

 バルデュアスさんは如月さんの頭に着地すると髪の毛を引っ張って幻覚じゃない事を思い知らせてる。


「痛い! 痛いです! わかりました。これは現実です」

「ところで、こいつらどうします? 警察に突き出します?」


「……開放してあげて下さい。わたしが悪い部分もありますので」

「そうですか」


 僕の指示に従ってフミさんが髪の毛を消すと、男たちは急発進して逃げて行った。あんなにスピード出して事故らなきゃいいけど……。


「それと、如月さん。ブラがずり上がって片方のおっ○い出てますよ」

「え!?」

  

 中々の美乳ではあったが、数々の美乳を見てきた僕には冷静で居られる経験値があった。嘘。ちょっと興奮した。

 如月さんは服を直して、髪の毛もボサボサになってたので直してる。


「それでは僕たちは行きますね」

「待って下さい! エリーさんは普段ボクっ子だったのですかぁ~うにゅう可愛い! じゃなくてお礼させて下さい!」


 お礼は必要ないと、丁寧に何度も断ったのに如月さんはついてくる。押しの強い人でちょっとうざいかも。


「実はあの男たちは、枕要求してきたから従うフリして仕事受けてそのまま逃げようとして掴まったんです」

「……」


「あいつらの脅しのセリフをバッチリ録音出来たから、逆にそれを使って脅し返してやろうかと思ったけど失敗しました」

「……」


「あの、エリーさん聞いてます?」

「……芸能界が大変なのはわかりました。でも、約束破ったのなら自業自得かもしれませんよ」


「芸能界は食うか食われるかですよ。騙される方が悪いんです。そもそも出演料が15万の仕事でわたしを抱けるなんて思わないで欲しいです」

「そうですか」


「エリーさんは凄い収入ですよね! お願いします! わたしも一緒に動画に出演させていただけませんか? もちろんギャラは必要ないです」

「すみません。共演の話は基本断ってるんですよ」


「それなら、わたしのチャンネルで出演していただくのは? ギャラは130万円までなら用意出来ます!」

「すみません。よく知らない人のチャンネルに出演も断ってますので」


「それなら……」


 なんかいい加減ウザかったので、バルデュアスさんとフミさんを連れて転移で秋葉原に戻った。しかし連日ハ○エース案件見ることになるとはね。都会ヤバイ。

 再びメイドカフェ探しに戻った僕たちは、ネットで検索してド○キの上にある有名な所に行ったら並んでたので、どうしようか迷ったけど妖精さんがイライラしてるのでやめた。


 ブラブラと歩いてると、じゃん○らの近くにメイドカフェを見つけたので入ってみた。ここはドラマの舞台にも使われた老舗のメイドカフェの系列店らしい。

 バルデュアスさんは定番のもえもえでキュンなオムレツ食べたり、チェキでメイドさんとツーショ撮ったりと楽しんでいた。僕とフミさんも一緒に撮って壁に貼ってもらった。

 でも、何故かフミさんは写真撮ると謎のブレが出てしまい、それだけが残念だった。心霊写真にならないだけマシか。


 メイドカフェ……案外楽しいかもしれない。また来ようかな。



『次は原宿の竹下通り行きたいわね。あと、ラ○ォーレというデパートの地下にエリーに似合う服が売ってるわ』

 バルデュアスさんが僕のスマホ操作して見せた店舗は、いわゆるロリィタ系の服だった。確かに可愛いとは思うけど、こんなにフリフリなのは……。てか、一着3~4万円ぐらいする。


「いや、今日はもう勘弁して下さい」


 まだ遊び足りないのか、ゴネる妖精を宥めて、僕たちはマンションに帰るのだった。


 部屋に戻ると、美月たちは帰っていた。編入試験は手応えがあったらしい。これなら問題無さそう。

 ネットには僕が妖精連れて歩いてる動画がいっぱい上がっていた。もう色々手遅れだ。開き直るしか無い。都合悪ければ白ヨルさんがなんとかするだろう。


 夕食は、美月が作ったビーフシチューを食べてお風呂に入ってから就寝した。もちろん僕は美月求め合う。


 美月はスイッチが入るとかなりえっちでやばい。見た目は美人で出来る女って感じなのに、その最中はアヘ顔ダブルピース上等な感じだ。喘ぎ声もかなり大きい。

 隣の部屋で寝てる凛ちゃんに聞こえてなければいいんだけど……。それがちょっと心配。


 ちなみに妖精さんとフミさんは寝る必要が無いので、リビングでノートパソコンいじったり実体を解いて街の散策に出掛けたりしてる。あの二人仲いいよね。


 美月との夜の格闘技も終わり、眠りにつく。あっちの世界に居た時は、この後に唯が来たりエリカが来たりしてた。そんな前の話でもないのに懐かしく感じる。

 今回はいつ戻すつもりなんだろう? 白ヨルさんの気持ち次第って困るよね……。



 ……。



 ……。



 ん? この感じ、唯が来たのか……。あ、ちょっと歯が当たって痛い……えぇ!?

 意識が覚醒して足の方を見てみたら凛ちゃんが唯と同じ事をしていた。


「ど、どうして?」

「……ぷはっ……ごめんなさい。私もお姉ちゃんみたいに綺麗になりたくて。それと魔法をどうしても使ってみたいのです」


「いや、ダメだって。美月にバレたら大変な事になるよ」

「お姉ちゃんは一度寝たら簡単には起きないの知ってます。お願いします。一回だけでいいから下さい」


「だ、ダメだよ。こういうのは好きな人にしてあげないと」

「それでしたら問題無いです。エリーさん好きですし。私、興味を持ったら抑えられないんです。お願いします!」


「ほんとダメだって、魔法使えるアイテムあるから、それあげるよ」

「本当ですか? でも、自分で魔法使ってみたいです……」

 凛ちゃんは僕の相棒を見つめながら物欲しそうに見ている。そうこうしてる間にも開けたお口が迫ってくる。僕はガシッと両手で凛ちゃんの顔を掴むと転移で隣の部屋に送り届けた。


 自分の部屋に戻った僕は、横で寝てる美月を撫でながら放心状態で考える。これはダメだ。部屋に鍵かけとこう。

 僕のアノ液をエリクサーみたいに使われたら困るのだよ。それに綺麗になって魔法使えたら僕が何かしたの丸解りじゃん。美月に嫌われてしまう。


 今後の凛ちゃんとの付き合い方に頭を悩ませて、ため息ついて眠りについた。


数日前にしゃぶ葉に行きました。お肉頼んだらロボットがお肉を運んで来て驚きました。

しゃぶしゃぶは個人的にそんなに好きではないのですが、デザート関連が充実していてお肉よりそっちばかり食べてました。行ける人は平日ランチが安くて時間無制限食べ放題でとてもオススメです。


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