05 黒猫
木から降りると輝く石を収納し、ぺちゃんこになってる要モザイク状態の狼も収納する。
輝く石は何故か血や泥などの汚れはついてなかった。本当に謎のアイテムだ。
早速ボックス内クラフトを試してみよう。
狼の死体を弄るのもあれなので、こぶし大の石を収納してクラフトしてみる。
おぉぉ……石がまるで粘土みたいに自在に形を変えることができる。
ただし、手で粘土細工するような不自由さはない。
頭に思い浮かべた通りに造形できる。
ハッキリ言ってめちゃくちゃ面白い! これは老後の趣味に最適かもね。
魔力を使ってと書いてあった様に、確かに何かが抜けていく感じはあるな。
MP的なものが可視化されれば限界まで使ってしまう心配しなくて済むのだけど、無いものは仕方ない。
レベル制のゲームみたいな世界なのに変な所で不便だ。
おっと、足が止まってたな。
歩きクラフトしつつ進むぞ。
ついでに範囲収納を発動させながら歩く。
右手の森に向けてスキルを発動させつつ歩く。収納できるものは根こそぎ入るだろう。
このままだとアイテムボックス内がゴチャゴチャするのでスキル内に[拾い物]を収納するスペースを作った。
一応ヨルさん専用スペースも作っておこう。
■■アイテムボックス+8■■
所持ゴル 20000
美味しいパン 89
美味しい水 89
特製ポーション 88
バナナ
幕の内弁当
カップ味噌汁
お茶
革の鞄
芋虫 20
高品質傷薬
輝く石
黒い手紙
▼拾い物
▼ヨルさん専用
■■機能■■
容量=七星さんちのトイレぐらい
時間停止
ボックス内鑑定
ボックス内パーティション作成
範囲収納
ボックス内クラフト
■■■■■■
うーん……。もっとスッキリさせたいな。
僕はパソコンもフォルダを整理したいタイプの人間だったので気になってしまう。
■■アイテムボックス+8■■
所持ゴル 20000
▼お薬
▼食べ物
▼大事な物
▼拾い物
▼ヨルさん専用
▼その他
■■機能■■
容量=七星さんちのトイレぐらい
時間停止
ボックス内鑑定
ボックス内パーティション作成
範囲収納
ボックス内クラフト
■■■■■■
よし。これでいい。スッキリ。
ちなみに芋虫はその他に入れた。
[ヨルさん専用]に入れておいたらどうなるのかちょっと興味あるが、スキル剥奪されそうだからやめよう。
◆◇◆◇
しばらく歩くと[拾い物]スペースには石や枯れ草や木等が大量に入っていた。
他にも折れた剣や錆びた鉄など様々な物が入ってる。
では、折れた剣をクラフトしつつ更に歩くとしますか。
どれぐらい歩いただろう?
もう二日はずっと歩いてる気がする。
眠くならない上に、お腹が減らない疲れないと自分の体がどうなってしまったのか、ぶっちゃけ怖い。
もしかしてエルフはみんな超人的なんだろうか。
もしくは特製ポーション飲んだせいでラリっちゃってる説。後者臭いな。
歩きスマホならぬ、歩きクラフトしてるうちに折れた剣は立派な短剣に生まれ変わった。
ヤバ……カッコイイ! 鞘を拾った木で作ろう。
多分もうスキルは体に馴染んでいる。
アイテムボックスに入れるも出すも一瞬だし、範囲収納も使い込むうちに随分範囲が広がった。
今はもう20メートル先のものまで収納できる。
あれから幾度となく狼に襲われはしたけど木がある限り僕は無敵だ。
ゲームで言うところの安全地帯ってやつだね。
狼には拾った石をボックス内から勢いつけてぶつければ一撃で終わる。
アイテムボックス内をギュッと圧縮して細長い出口から石を吹き飛ばすイメージ攻撃が成功した。
狼の頭に当たると爆散してしまう威力だ。
音速近く出ているのかもしれない。
途中左折できる道が見えてきたけど、コロロムさんが言ってた西へ進もう。
真っ直ぐ進めよ。進めばわかるね。
あれからまた一日が過ぎ、更に進む。
さすがにお腹減ってきたので美味しいパンとやらを出して食べてみる。
「うまっっっ! 何これウマっ! 名前に恥じない美味さ!」
子供の頃に近所のパン屋さんに焼きたてのパン貰って食べたあの時以上の美味さだ。
表面はサクサクしてるのに中はしっとりバターの香り……。
一個ラグビーボールぐらいの大きさなのに一気に食べきってしまった。
美味しい水も飲もう。水も期待できそう。
「Oh……」
例えるならば、砂漠で何日も彷徨い、やっとオアシスを見つけて飲んだ水ぐらい美味い。
これまた一気に飲んでしまった。瓶は再利用できそうなので収納しておこう。
ドカ食いしてしまったせいでお腹がパンパンだぜ。
そろそろ寝たくなってきた。
何処かいい場所見つけて寝よう。寝場所はどうするのかって?
直径4メートルぐらいの大岩をゲットしたので、中身くり抜いて部屋にクラフトしてみた。
一見ただの岩だから道端にあっても不自然じゃない。実に合理的な家だ。
まぁ、よく見ると空気穴があるし、裏に回れば扉もあるので偽装は完璧とは言えない。
でも、この辺りは見晴らしが良すぎるので岩を出すのはもう少し進んでからにしよう。
見晴らしの良い場所に、ぽつんと大岩があるのは、もし通った事がある人が見たら怪しむだろしね。
◇◆◇◆
飽きずに範囲収納を展開して歩いていると、今一気に色んな物が入ってきた。
道から結構離れた場所に壊れた馬車があったらしい。
積み荷の服や布が大量に入ってきた。どうやら布の商品を運ぶ馬車だったみたいだ。
馬車に何があったのか理由は解らないけど、拾った物は有効利用させてもらおう。
しばらく進むと草木がが生い茂る場所に出たので、少し道から外れた場所に岩の家を出した。
ついでに拾った布で布団と枕作ったので、快眠できそうだ。
改めて思う。このアイテムボックスは本当に優秀すぎる。
素直に感謝したくないけど、ヨルさんには大感謝だ。
天におわす? ヨルさんに感謝したふりをしながら「では、おやすみなさい」
◆◇◆◇
「ふぁぁ……ふぅ……」
どれぐらい寝ただろう? 欠伸が止まらない。岩の中だから、日差しが入ってこなくて体内時計が狂っている。
眠いけど起きて歩こう。
と、その前に空気穴から周りを確認しないとな。
出たら目の前に狼や魔物が居ましたじゃシャレにならない。
前ヨシッ! 後ろヨシッ! 右ヨシッ! 左ヨ……。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
何かが中を覗いていた。動揺して心臓がバクバクする。
チラっとしか見てないから自信は無いが、人の目では無かった。
目は金色で瞳は黒く細長かった。
魔物か? それとも大型の猫科の生き物か?
勇気出してもう一度見てみよう。
恐る恐る穴を覗くとそれは少し離れた場所に移動していたようだ。
……猫だな。
でっかい猫だ。
猫というか黒豹? いや、あんなに獰猛な顔じゃない。
シュッとした細身の顔の猫で、ボディは黒豹って感じ。
正直モフりまくりたい。
僕を襲うかもしれない危険性を考慮して10分ほど葛藤した結果、出てみることにした。
もしかしたらみーちゃんなのかもしれないとか少しだけ期待もしている。
「よーしよしよし……いい子だからおいで~美味しいパンがあるよ~」
大きな黒猫はパンには興味ないようだ。美味しいのにな……。
その後も色々アピールしてみたが結局襲われる事も近寄って来ることも無かった。
みーちゃんとは関係ないのかな……。
◇◆◇◆
ついてくる。
一定距離を保ってあの大きい黒猫がついてくるのだ。
直感を信じるならあの黒猫に敵意はないと思う。思いたい。
不思議な黒猫だ。
存在感ありまくりだし、何かカリスマ的なものを感じる。
猫界のスーパーモデルか?
一応用心のために全方位範囲収納を展開しておこう。
実はアイテムボックスの新しい使い方を開発したのだ。
範囲収納を展開しても生きた狼などは入れることが出来ないので、すり抜けてきてしまう。
ならば、入らないものはすり抜けるのではなく反発するように出来たらいいんじゃね? と思い、練習と努力の結果やり遂げた。
全方位反発バリアを手に入れたのだ。
誤字や矛盾点は見つけ次第修正します。