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34 忍者

 僕はギャル達を無視して三階の自室へと歩く。当然ギャル達も着いてくるのだけど、スルーだ。


「矢吹さあー、何か言えよ」「あらぁ? わたしたちはタイプじゃないのかもぉ」

「仮に恵が了承しても芽衣子と渚と唯が許さないでしょ?」


「別に他の子はどーでもいいよ」

「どうでも良くないのでお引取り下さい。もしくは芽衣子たちに了承得てから来て下さい」


 僕はそのまま自室に向かった。

 この二人に振り回されるのだけは勘弁なのだ。先生を見ていて痛感したよ。


 すぐ起きると思うけどユリナをベッドに寝かせ、夕飯まで僕もソファーで休むか。

 もちろん自室はカギをかけたから問題ない。


 しかし聖女のスキル凄いよなぁ。アイテムボックスとはまた違ったチートぶりだ。

 七星さんに聞くの忘れてたけど、聖女のスキルはどうやって会得したのか気になる。聞いた所で今更意味ないか。

  

 聖女の雫についても謎だな。あの白い液体は手渡されたから貰ったけど、あれを店で売ってるんだろうか? 後で聞いてみよう。 

 そうだ、僕も聖女の雫を作ってみるか。作ろうと意識して集中する。どうやら好きな場所に作り出す事が出来るみたいだ。

 手のひらを上に向けて、そこに聖女の雫を生成した。

 

 薄いな。カ○ピスを薄く作った感じ。僕が昨日飲んだ物とは違う。多分これを店で売ってるんだろうね。

 手のひらに作り出した聖女の雫を鑑定。



●聖女の雫●

聖女の力を濃縮させた薬

あらゆる怪我や病気を癒す



 やはり僕が貰った物とは違うね。


 実験のためにアイテムボックスに入れてみたが、特に違和感は感じなかった。ボックス内転移も使えると思う。

 アイテムボックスに入れても平気なら、瓶詰めポーションをアイテムボックス内で作れるな。


 どうせならこっちの世界では見たこと無い、蓋の部分を折って使うアンプルタイプを作ってみるか。

 こっちの技術じゃ難しいかもだけどアイテムボックス内クラフトなら簡単だ。

 まずビンを作る。底に穴を開けておいて、そこに聖女の雫を注入して底をクラフトで塞ぐ。


 おー! 完璧じゃん。グググ……折りにくい。ビンを改良しないとだな。


 何回かの試作で折りやすく、勝手に折れにくい構造を見つけ出した。これを大量複製と。

 なんか薬師になったみたいで楽しいな。

 でも、この世界は勝手に薬作って売っても大丈夫なんだろうか? 後でこれも七星さんに聞いてみるか。


 楽しくなった僕は、恵が夕食を知らせに来るまで薬を作り続けるのだった。


 夕食はシーフードグラタンだ。最近は七星さんが色んな食材を買い付けてきてくれるので、本当に助かる。

 僕は食材の目利きとか苦手なんだよね。チーズや牛乳なんて何処から仕入れてきてるのだろう?

 芽衣子と渚の腕前と、様々な食材のおかげでうちの食卓の味は日本に居た頃以上になっている。

 そのうちユリナの舌が肥えて屋台とかで食べなくなったら悲しいものがあるな。

 今と所、そんな気配は無いが。


 

 夕食も終わり、ユリナを寝かせてから恵の部屋に行く。


 そんな予感してたよ。ギャル二人も居た。


「ごめんねコウちゃん。蘭子と真美に頼まれると断り難くて」

「仮に恵が良くても、芽衣子たちも居るからさ。大切な友達なのは解るけど帰ってもらおうよ」


「矢吹ってそんなあたらしの事嫌いなん?」

「二人共良い人だと思うよ。でも、二人って僕が便利な存在だから利用したいだけに見えるし」


「それは否定しないかなー。でも、そんなの当たり前だよ? 結婚の条件に相手の年収や容姿は大事な条件じゃん」

「そうよねぇ。矢吹君ほんと可愛いし、いっぱい稼いでるし、こんな世界に来たからこそ結婚相手には最適ね」


「二人は意外にリアリストなんだね。失礼な言い方になるけど、男女の関係をもっとゆるく考えてる人達かと思ってた」

「はぁ? あたしら処女だし。失礼じゃね」「酷いわぁ……。めぐちゃん、わたし酷い事言われちゃった」


 二人は憤慨しているようだ。ギャルだからお股が緩いみたいな言い方は、確かに僕の失言だ。

 ていうか、流されまくったとはいえ僕のほうが色々アレだよね。お前が言うなって返されたら反論できない。


「ごめん。言い過ぎました」

「まーあたしら、よく男と遊んだりしてたから、そういう目で見られてたのは知ってるけどさ」


「偏見で決めつけてごめん。だけど芽衣子たちの許可なく二人を嫁にするなんて出来ないよ。それは納得して欲しい」

「わーったよ。説得してみる」「めぐちゃんより厳しいかもぉ?」


「そういうわけで、二人は部屋に戻ってもらえる? 恵と話したいこともあるし」

「そんなにめぐと早くやりたいの? がっつき過ぎじゃね」


「ごめん蘭子も真美も今日は帰って? コウちゃん困ってるし」

「めぐもそんなに早く抱かれたいのかよー。そんなにイイものなの?」


「うん。凄い幸せな気持ちになれるよ」

「へぇー。ちょっとやってるとこ見物してっていい?」


 このパターン前もあったぞ。これは危険なので追い出すべし。

 僕はセクハラ覚悟で二人を両脇に抱えて部屋から連れ出した。二人共ウエスト細くて助かったよ


「コウちゃんごめんね」

「いいよ。あの二人相手に恵も大変だったね」


「コウちゃん……」

「恵……」


 キスはいいよね。気持ちがあたたかくなる。

 ずっとこのまま繋がっていたくなるね。


 勿論、総合格闘技の公式ルールゆえに唇は離してはいけない。


 お互いグラップリング選手としてもうベテランだ。


 どちらも譲らない。


 体格差のある我々には公式ルールは厳しい。


 だが、その無理な戦いがお互いを燃え上がらせる。


 マウントを取られた!


 ガードポジションで耐えるのだ。反撃の時を!


 くそっ! もうダメだ。決して僕が弱いんじゃない。相手が強すぎるのだ。


 僕は30秒も耐えられずタップアウトした。



「すげぇ……。こんな、なんだ……」「あわわ……。思ってたより激しかったわぁ」


 は? なんでギャルコンビ居るの?


「あの……? いつからそこに?」

「コウちゃん……恵……の時から居るけど?」「二人がラブラブでキュンって来ちゃった」


「さっき僕は二人を連れ出した筈なんですが……」

「あたしら忍者のスキル取ったからね。運ばれたように見せてただけー」「変わり身の術面白いわぁ」


「……観戦料は取らないので帰ってもらっていいですか?」

「第二ラウンドも見ていくよ。ほら始めなよ、カーン」


 ヤケになった僕と恵はボクシングルールに変更し、綺麗なラウンドガール達に見守られ、最終ラウンドまで戦うのだった。

 ちなみに一ラウンド持って二分ぐらいだ。


 観戦後、ギャル二人は足をもぞもぞしながら帰っていった。勝利した気分だ。


「コウちゃんごめんね……」

「なんかもう途中からどうでも良くなっちゃったよ。あはは」


 浄化スキルで綺麗にしてもらってから、二人で僕の自室に行き、寝てるユリナを撫でてから三人と二匹で寝た。

 妙なテンションのせいで二人は中々寝つけなかったのは言うまでもない。



 そして丑三つ時。妖怪バール娘が現れる。


「ひょふぁふぃっふぁひふいはんふぇふへ」


「おぅふ……唯は寝不足にならないの?」

「ぷはぁ、唯はショートスリーパーなんですよ。はむっ」


「ぬぐぐ……羨ましい」

「ぷはぁ、寝てていいですよ。はむっ」


いっぱい釘を抜かれたおかけで母屋が崩れるように眠りに落ちた。



◆◇◆◇



 翌朝、僕は作ったアンプル式のポーションをどうするか考えていた。

 朝食後に七星さんの部屋へ行き、売るにはどうしたら良いのか聞いたら、薬師ギルドで審査登録しないと売れないとの事。


 でも、ヨルバンで売ると七星さんのポーションと被っちゃうからドルフィノで売る事にした。

 例のポーションのことも聞いた。あの渡された白いポーションは僕に飲ませる為に作った特別な物だったみたい。そういえば、青山さんもそんなこと言ってたような気がしなくもない。

 すぐ飲んでくれると思ってたらしいけど、怪しい薬なんて飲まないよ。常識的に考えて。


 

 早速ドルフィノへ移動だ。

 今日は初めて使う聖女のゆらめきで移動。慣れれば手を繋いで他人も転移できるらしい。

 まだ慣れてないので、ユリナはみーちゃんに乗って行ってもらうことにした。


「聖女のゆらめき!」


 スキルを使って理解した。行きたい場所を思い浮かべるだけでそこが見えてくる。

 記憶というより映像的に。そこに行く! その意志だけでいい。


 発動!


 僕はドルフィノの店の屋根の上に立ってる。綺麗な青い海が見えて清々しい。

 このスキルは凄すぎる。連発は出来なそうだけど、完全にボックス内転移の上位互換だ。


 さて、いつもの森にユリナとみーちゃんを迎えに行こう。




 今ドルフィノの薬師ギルドに来ています。

 何故か居たカリンさんとバッタリ会って、逃げようとしたら捕まりました。

 特に怒っているようでもなく、ニコニコしてるのが余計に怖い。


「エリオさん、どうして薬師ギルドに来たんですか?」

「じ、自作のポーションを審査してもらおうと思いまして」


「こっちですよ」

 カリンさんに手を引かれ受付の一角に連れて行かれた。


「ルーゼさーん、私の夫がポーションを審査して欲しいんだって」

「ふぁ? その女の子がカリンの旦那なのかい?」


「エリオは男の子だよ。でも、凄い可愛いでしょ」

「そうかいそうかい、惚気なら家でやんな。で、ポーションを見せてごらん」


 ルーゼさんと呼ばれた人はかなりの高齢の女性だった。笑顔だけど目が鋭い。怖くて目が合わせられない。


「こ、これです。お願いします」

「んー? これはどうやって開けるんだい」


「上のこの部分が折れる構造です。奥まった部分が折れるので口を付けても唇が切れたりすることはありません」

 僕はポキって折って実演してみせた。


「ほぅー。こりゃ面白いね。問題の中身は……今鑑定かけた結果、かなりの効果があると出てるね。審査の結果は一週間後に知らせるよ」

「はい。よろしくお願いします」


「では、エリオさん行きましょう」

「どこへですか?」


「アリーナ叔母様の屋敷ですよ。叔母様がエリオさんにずっと会いたいって言ってるの」

「ユリナもおばーちゃんに会いたい」


「ぐぬぬ。ユリナがそう言うなら断れないか……」

「エリオさん、断るつもりだったんですか? 酷い……。ぐすん」

 いかん、また女の武器を装備されてしまった。この場はさっさと切り抜けよう。

 僕たちは外に出て竜車を使ってアリーナさんのお屋敷に向かった。


「ところでカリンさんは何で薬師ギルドに居たんですか?」

「私あそこの職員ですから」


 なんてこった……。行く度にカリンさんと会っていたら身がもたないぞ。何か対策しないと。


 アリーナさんのお屋敷に着くと、相変わらず大勢のメイドさん達にお出迎え受けた。

 こういうのは良いよね。ここまでならば何回でも来たい。


 前に来た豪華な客間に通されて暫く待っていると、アリーナさんとオシャレに着飾ったカリンさんが来た。

「お久しぶりね、エリオくん。お店上手く行ってると聞いてるわ」

「アリーナさんご無沙汰してます。おかげさまでお店は繁盛していますよ」


「そう。それは良かった。お店が落ち着いたのなら何時で来てね。エリオくんはカリンの夫になるんだから気軽に来ていいのよ」

「は、はあ。わかりました」


 しばし社交辞令でをお茶を濁してると、ユリナがアリーナさんと話をしたそうだったので、場を譲った。


 ユリナはアリーナさんとおしゃべりして楽しそうだ。前みたいに執事に睨まれる事も無くなった。

 一応僕がカリンさんと婚約してる立場だからだろうか。


 そして今、僕はカリンさんの部屋にいる。

 カリンさんは僕が座ったソファーの隣に座り、体を預けてくる。

 良い香りと柔らかい何かのせいで、既にヤツは目覚めてしまった。


「エリオさん。どうして私を抱いてくれないんですか?」

「ど、どうしても何も仮にも婚約中にそういう事しちゃダメなのでは」


「ダメじゃないですよ。抱かれないまま放置されるなんて、私、悲しすぎてどうにかなりそうです」

 ヤバイ……また泣き出されてしまった。しかも絶妙なボディタッチしてきて気持ちいい。なんて手強い人なんだ。

 だが、僕だって数々の修羅場をくぐり抜けてきた男だ。こんな時の対処法ぐらい心得ている。


「あ、用事思い出しちゃった! 帰りますね! 失礼しますー」


 僕は聖女のゆらめきで客間に転移して、用事あるからと言ってユリナを脇に抱えてダッシュで逃げるのだった。

 僕のあまりの早業に、みんな呆気に取られてたぞ。フフフ。

 許せカリンさん。僕は貴族関係の人とそういう仲なりたくないのだ。絶対面倒な事になるし。

 しかし、薬師ギルドに行く度にこれじゃ面倒だから何か考えないとな。


 先生が確か薬屋でバイトしてるとか言ってたから、もし認可されたら薬師ギルドへの運び屋をやってもらえないか打診してみよう。

 もしくは薬屋に卸すか。いっそ薬屋を開店するのもいいかも。先生がそこで働いて貰えれば更に良い。


 どっにしろ認可待ちだから考えるのは後でいいや。



◆◇◆◇



 お店に戻り、最近追加で出したメニューのラーメンを食べてると、先生が居たので、ラーメン持って隣に座ってを声をかけた。

 先生もラーメンを食べている。ズズズズーっと豪快にすするのはこの店で先生だけだ。

 

「先生こんにちは。ラーメン毎回食べてますね」

「あぁ、こんにちは。ラーメン食ってると落ち着くんだよ。この、昔ながらの定番の醤油ラーメン美味し!」


「でも、麺がこれじゃない感あるんですよね。かん水ってのを使ってないからかも。先生なら錬金術で作れないですか?」

「麺はもう慣れたから、俺は別にこれでもいいと思うぞ。かん水はどうだろうな。やってみるか」


「僕の知識では塩っぽい何かというぐらいしか解らないので、是非お願いします。それと僕が薬屋を開いたら働いてもらえたりします?」

「また店開くのか? 薬屋ならば俺のスキル活かせるし働かせて貰ってもいいかもな」


「じゃあ決定で! これお祝いなので飲んで下さい」

 僕はキンキンに冷えたビールを二本出してラーメンの横に置いた。


「ラーメン食いながらビールかぁ……。ここが異世界ってのを忘れちまうよ」

 そう言いながらも美味しそうにビールを喉に流し込む先生だった。日○屋に来た気分になってるぽいね。


 ちなみに店でビールとコーラは提供してる。海の家にドリンク無いなんてありえないしね。

 ドリンク複製は規制コードに引っかからないらしい。


 昼食後、二階のリビングで寛いでるとママ……カナが休憩で上がってきた。

 カナは僕を見つけると両手を広げてカモン!の合図をした。


「ママーー!」

 躊躇なくカナの胸に飛び込む。僕はこの魅力に抗えなくなっていた。


 僕は一匹の子猫になるのだ


 ふみふみしながら吸い付く。


 僕は子猫なのだ、きっと子猫に転生したのだ。


 転生したら子猫でした! に、タイトル変えよう。そうしよう。


 僕はイイコイイコされながら子猫であり続けた。


「ママはお仕事に戻るね。はい。いいこいいこ。でも、吸っても出ないからね」

 休憩終わったカナは少し恥ずかしそうに呟いて戻って行った。


『コウイチは中々業が深いニャ』

「見てたの? 恥ずかしい……」



◇◆◇◆



 薬屋を始めると決めた僕は、また商業ギルドに来ていた。

 位置的に海岸沿いより街中の方がいいと思うので、良い物件無いか聞いてみるつもり。


「薬屋を開きたいので、街の中心あたりで空き物件が無いか相談に来ました」

「はい、ございますよ。ここと、ここですね」

 職員さんは地図を広げて物件の場所に印を置いてくれた。


「ここって確か高級なお店が多く有る辺りですよね?」

「そうですね。三階建の綺麗な物件ですよ。賃料は月に2万5千ゴルかかります」

 日本円で250万円ぐらいか。都会並みだね。


「一応キープします、もう一つは?」

「こちらは……。場所は良いし建物自体も綺麗なのですが、いわゆる事故物件でして、オススメできません」


「幽霊が出るとか?」

「出ると聞いてます。しかもいくら掃除しても血のシミが浮かび上がってくるそうです。今はもう誰も近づけません」

 なにそれ怖っ!!

 だが、僕には穢れを祓うスキルがあるのだ。試してみる価値はあるな。


「その事故物件の方のお値段は?」

「ここは買取のみで20万ゴルです」


「立地的に破格ですよね。大赤字になりませんか?」

「物件を持ち続けているだけで税金かかりますし、こちらとしては早く手放したいのです」


「なるほど……。こんな内部事情を僕に話していいんですか?」

「エリオ様が王家と縁の有る方なのは存じております。駆け引きするお相手ではございませんので」


「わかりました。その事故物件の建物を僕が買います」

「それは本気でしょうか? 後にキャンセルはできませんが」


「問題ないです。事情を知って買ったという署名もしますよ」

「それでしたら……」


 僕は買った物件に早速来てみた。ユリナはトーマ達と遊んでるからここには居ない。

 居なくて良かった。まだ建物に入ってすらいないのに、ヤバイ気配がビリビリと伝わってくる。

 

 あかん。これは手に負えない。そんな気がする。


「みーちゃん、ここってどう思う?」

『さっさと回れ右した方がいいと思うニャ』


「そんな……みーちゃんでもこういうのはどうにもならないの?」

『建物ごと消滅される事は出来るニャ』


「それじゃ意味ないんだよなぁ……」


 どうする……僕一人でダメだが、二人ならどうだ? 二人の聖女ならば。

 頼るのは気が引けるが、今はその方法しか無さそうだ。


 僕はみーちゃんを抱いたまま聖女のゆらめきを使った。


 エリオ商店に転移すると、奥に七星さんを見つけたので声をかける。

「七星さん、相談事がありまして……」

「嬉しいですわ。矢吹様に頼っていただけるなんて」

 七星さんは涙を浮かべて感激している。みーちゃんは微妙な顔してるけどね。


 ここまで来たんだ、頼るしか無い。僕は事のあらましを七星さんに伝えた。


「成程。悪霊が蔓延る建物を祓うのに(わたくし)に力を借りたい、そういう事ですね?」

「左様でございます」


「勿論協力させていただきますわ。初めての夫婦共同作業ですわね」

「夫婦では無いですが……は、はい」

 七星さんは頬に手を当ててとっても嬉しそうにしている。


「何時なら空いてますか? その時にまた来ます」

「今すぐで構いませんわ。すぐ行きましょう」


「わかりました。では、僕と手を繋いで下さい。聖女のゆらめきで転移します」

「はい。よろしくお願いします」


 おずおずと僕の手をギュッと握る七星さんはちょっと可愛かった。


 では、発動!


 僕たちはこれから何が起こるとも知らずに、意気揚々と転移するのだった。

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