30 お店
どうもエリオです。
昨日も色々ありました。
エルフとラマンしたり、唯と一方通行逆走したり。
ただ一つ間違いないのは、一方通行逆走は事故が起きるから止めましょう。
絶対だぞ。
チュンチュン……
「ふぉひひぃふぃはいへふ」
「お……おはよう唯」
「ぷはぁ……おはようございます。そういえば昨日、森山君が魔法使いの衣装みんなで揃えたと言ってました。ズルイです」
「じゃあ今度一緒にセイラに行って買う?」
「行きます。でも、その前に衣装着た姿の矢吹君が見たいです」
「じゃあ着てみるかな。実はこれからその衣装を普段着にしようと思ってたんだ。肌触りいいしね」
「それではお願いします! はむっ」
「おうふ……着替えられないんですけど……」
唯のそんな意地悪が何回か続いたけど、魔法使い衣装に着替えてみた。もちろんユリナを起こさないようにね。
「可愛いです! 完璧です!」
「あ、ありがとう」
しばらく唯に褒められ続けて嬉しいと言うか恥ずかしくなってしまうのだった。
「矢吹っち可愛い!」「ヤバ……もうアニメキャラじゃん」「コウちゃん似合ってるよ!」
朝食前にみんなに顔合わせたは褒められたけれど、可愛いは男として褒められたうちに入るのだろうか。
「矢吹はその格好が一番似合ってるから普段からそれ着とけ」
「モリモリは着ないの?」
「矢吹みたいなエルフと違って、俺の場合はセイラ限定だろ」
「別にいいと思うけどなぁ」
「ユリナは着たい!」
「じゃあ一緒に着替えてこよう」
「うん!」
ユリナの中で魔法少女ブームが来たようだ。
朝食が終わり、今日は何しようかなぁと考えダラダラする。
ユリナは僕の膝の上で寝てる。平和なもんだ。
モリモリは佐藤君と清水さんを連れて冒険者ギルドに行くそうだ。何か仕事しないと人はダメになるしね。
七星さんたちは宝石を元手に店を開いた。聞けば出来たばかりなのに結構売上げか良いらしい。凄いな。真面目に尊敬する。
一応僕だって家にはお金入れてるからね。メイドさんの給料とかもあるし。
人工魔石はまだたくさんあるし、売ってお金に変えれば何十年でも持つかもしれない。
はたしてこれからもずっとそんな生活でいいのだろうか。
みんなを見てると僕も何かやった方が良い気がしてきた。
かといって危険な討伐に参加しまくるってもの僕らしくはない。
まぁそのうち何かやりたいこと見つかるでしょう。
さて、今日は何しようか?
そうだ! 今日は片山君ファミリーにヒカリとカレーを差し入れに行こう。
嫁は仕事に。旦那はコスプレして遠くに遊びに行く。ネットがあったら叩かれそうだ。
ユリナはベッドに寝かせてみーちゃんに任せた。
今日はくーちゃんとおでかけしてくる。では……転移!
◇◆◇◆
起点は西野さんだけど、片山君の家の中に転移するわけにもいかないので、海岸沿いに転移した。いつ見ても綺麗な海だ。ここ本当に好き。
「くーちゃん居る?」
僕が声をかけると、闇の中からふわっとくーちゃんが現れた。ある意味くーちゃんが一番チートかも。
くーちゃんを連れて海岸沿いを歩く。そうなると当然、ハイエルフと闇猫のレジェンドレアコンビは注目の的だ。最近は街の人にジロジロ見られるのも流石に慣れたけどね。
海岸ではまだ朝なのに子供が遊んでる。
……というより蟹とか貝を採集してるみたいだ。食べるのかな?
「あー矢吹ちゃんじゃん! 何その衣装ちょーかわいい! あと、その大きい猫はなに?」
声をかけて来たのは、名前覚えてないけど片山君の嫁の一人だ。
「おはよう。この子はくーちゃん。大きいけど危険は無いよ。それと今日は差し入れを持ってきたよ」
「ほんとにー? まだ醤油とかあるよ?」
「今日は違う物だよ。楽しみにしてて」
そんな話をしながら片山君のお嫁さんの大きいお尻を眺めつつ、一緒に歩いて向かった。
違うんです。背丈的にどうしても見てしまうんです。
「悠一ぃ~矢吹ちゃん来たよー」
その声で片山君が出てきてリビングに通された。
「可愛い! 魔法少女がきた!」「でっかい猫連れて魔女っ子が来た!」「うそ……本物だ……」「矢吹……可愛すぎ……」「それって黒豹? 噛まない?」
魔女っ子装備のせいか以前来た時より反応が凄い。
くーちゃんに警戒してる人もいるな。可愛いのに。まぁ僕も最初警戒してたから気持ち解るけどね。
警戒されたままだとくーちゃんが可哀想なので、最初に説明して安心してもらった。
「それで矢吹君は何か差し入れ持ってきたくれたとか?」
「そうそう、これだよ」
僕はお米の大袋二つとカレールーを出した。
「まさか、これってカレーか?」
「そうだよ。清水さんって子が持ってたんだ」
そしてその場は大歓声に包まれた。みんなカレー食べたかったんだね。
大袋の中身は米と知って更に喜ばれた。
その後、みんなで協力してシーフードカレーを作った。カレーは誰が作っても美味しいのだ。
清水さんとかいう例外を除いて。
「まじ矢吹ちゃんカレーの天使だわ。うちに住もう?」「やっぱり矢吹君ここに住みなよ?」「矢吹君いい匂い……クンカクンカ……抱いて寝たい」
食事の後、そんな勧誘されながらもみくちゃにされているんだけど、片山君が見てるからね? おっ○いそんなグイグイ当てないで……。
「しかし矢吹君には色々お世話になりっぱなしだな。何か俺に恩返しできればいいんだが」
「じゃあ、ドルフィノでの家の購入方法を教えてもらえない?」
「家が欲しいのか? うちのニ階に住んでいいんだぞ?」
「僕も男だから自分の家が欲しいんだ。別荘みたいな感じ」
「なるほどな。家は商業ギルド行けば契約できるぞ。ヨルバンは違うのか?」
「僕の場合は、直接家主と契約したからね。じゃあ、商業ギルド行ってくるよ」
「もう買いたい家見つけたのか?」
「ほら、バルコニーから見える一軒挟んだ隣りにあるボロい家。あそこがいいんだ」
「確かに空き家みたいだけど改装なんかしたら逆に高くつくぞ?」
「大丈夫! そこはスキル頼りで」
「そうか。ご近所になれるのは嬉しいよ。家が住めるようになったらお祝いに行かせてくれ」
そう言って僕に向ける笑顔は、女の子なら誰でも恋しちゃうイケメンスマイルだった。
◆◇◆◇
ここが商業ギルドか。ここは見た目が完全に市役所ぽい。
中に入り、いくつもあるカウンターの適当な所に行き家を買いたい旨を伝えた。
「海岸沿いの52番ですか。あそこは手入れもされていなく、海風にさらされてかなり傷んでますが良いのですか?」
ちなみに52番とは家に割り当てられた数字。片山君家は50番。番号の見方は片山くんが教えてくれた。
「構いませんよ。家は好きに作り変えていいんですよね?」
「購入されるなら問題ありません。ですが、著しく景観を損ねる外観の家は認可されません」
「わかりました。購入します」
「はい。ありがとうこざいます。ギルドカードお持ちでしたらご提示ください」
僕がギルドカードを提出すると、受付の人が銀の板に当てて何かしてるんだけど表情がいまいち芳しくない。
「何か問題でも?」
「いえ……それが、お客様のカードが使われた際は『ローズ騎士団に来るように伝えよ』のメッセージが出まして……」
「な……なるほど。知り合いなんですよシモーヌさんとエリーシアさんは。ははは」
「そうですか、それでは確かにお伝えしました。購入手続きも入金が終われば完了です」
こうして僕は15万ゴルを払い家を購入した。
早速購入したボロ家にやってきたのだが、改めて見ると本当にボロいな。ドアとか壊れてるし。
もちろんこのまま使うつもりはない。ボックス内に入れて修復するのだ。
「では、収納!」
……。
……。
家が消えた土地には、三人の子供が居て呆然となっていた。
しかも全員真っ裸だ。どうやらこの子らの服まで収納してしまったらしい。
そして、よく見たらさっき海岸で蟹や貝を拾ってた子たちみたいだ。
「えっと、君たちはここにあった空き家に住み着いてたのかな?」
「ここは俺達の家だ! 家をどこやった!」
勝ち気な少年は、小さなぞうさんを振り乱しながら食ってかかってきた。
「お兄ちゃん寒いよ……」「お兄ちゃん……」
妹と思われる子達は震えている。
「とりあえず、話は後にしよう。仮の家を出すから移動して欲しい」
「ふざけんな! 服と家返せ!」
「はいはい、それはすぐ返すから。くーちゃんお願いします!」
すると、くーちゃんが闇から出てきて少年たちをグイグイ押し出した。
「や……闇猫」「闇猫様が来てくれた……」「闇猫様初めてみた!」
そして更地となったそのスペースに旅用のそこそこ大きい家をアイテムボックスからその場に出す。
「綺麗な家が急に……」
男の子たちは茫然となっている。
「さあ、みんな入って。まずはお風呂に行こう」
躊躇している三人をまたくーちゃんがぐいぐいと中へ押し混んでくれた。
子供たちは、とにかく汚かったので、お風呂場に案内したんだけど、入り方が解らないみたいなので、僕が手取り足取り教えてやっと綺麗になった。浄化スキルまじで欲しいです。
子供たちが着てたと思われる服をスキルで綺麗にしてから出そうと思ったけど、アイテムボックスで見る限りボロ布だった。これは着せられないな。
兄には僕が以前着てた服をサイズ調整して着せ、妹たちにはユリナの服を着せた。
「お姉さんは何者なんだ? ヨリュア様の使いか?」
「僕は男だよ。それにただのハイエルフだよ。神の使いじゃない」
「信じられない……」
少年の視線の先では、くーちゃんにくっついて二人の妹は寝ている。お風呂入ったら眠くなるよね。
「それより、もしかして君たちは戦災孤児なのかな?」
「……そうだよ。帝国のやつらがうちに乗り込んできて全部持って行った……そして……父さんと母さんを……」
少年は泣き出してしまった。ユリナとほぼ同じぐらいに見える子供達にその現実は辛かっただろうな。
よし、決めた。
「ここはもう僕の土地で空き家じゃない。でも、行き場の無い子供を追い出すのは忍びないので、うちで働いてみない?」
「俺たちに出来るしごとあるのか?」
「できるよ。多分ね。そんな難しい事はさせないよ」
「食べ物ないし……妹たちももう限界なんだ。働かせてくれ! いや働かせてください」
少年は深々と頭を下げた。妹二人を大事にするいいお兄ちゃんなんだね。
話が決まったので、アイテムボックスから芽衣子と渚が作った甘口カレーライスを出して三人に食べさせた。
「なんだこれ……美味すぎる!」「おいし!」「うまうまうまうま!」
やっぱりカレーは異世界でも子供の人気みたいだ。
満腹になった三人をベッドに寝かせ、僕は家を改造する。というか、ほぼ作り直しだな。
海岸沿いはニ階建てまでしか許可されていない。外観も真っ赤とかそういう派手なのはダメらしい。
アイテムボックスに回収した家は、見た所、木材があちこち腐ってたので、形状を参考に作り直した。元の家は廃棄しよう。
一階は一部開放してお店をやるスペースとする。
そう、僕がやりたいのは海の家だ。ドルフィノの海岸はいつも人が多い。それを狙ったお店がちらほらあるしね。
一階は三分のニ程を開放……だけどガラス張りにする。海が見えた方がいいし。
ニ階は住居スペース。僕の部屋とリビング風呂トイレいくつかの部屋、三人には同じ部屋で我慢してもらおう。
建築材料は東の森の奥からみーちゃんが取ってきてくれたトレント材。なんと、この木材腐らないらしい。
ガラスも海岸の砂から作り出せる。少量のミスリル混ぜるけどね。以前と違ってボックス内錬金使えるのでガラスに色がついたりしない。
子供達が夕方起き出した頃に、家はほぼ完成した。あとは家具だな。
「僕はそろそろ帰らないとだから、今日はこのままこの家で泊まってくれる?」
「わかった……明日も来てくれるのか?」
「もちろん」
僕は夕ご飯を三人に出して、みんなの頭をひと撫でしてから転移で戻った。
◇◆◇◆
屋敷の庭に転移して出ると、玄関付近に見知らぬメイドさんとおじさんが居た。
「あの……あなたたちは?」
「私たちは今日からこちらで務めさせていただきます執事と、メイド三人でございます。名前はドルジュと申します」
「あ、どうもエリオと言います……って、執事?」
「矢吹様、私が説明いたしますわ」
僕の後ろには七星さんが居たようだ。全然気が付かなかった。
「この方たちは私が独断で雇わせていただきました。屋敷の人数が増え、仕事が滞ってきていましたので」
「なるほど……そうだったの?」
「はい。それからお屋敷にかかる税金やメイドへの賃金等もしばらく支払われてなく、経理関係の仕事できる方を雇いましたの」
「恵たちにお金渡して満足してたけど、言われてみればメイドさんに給料払っておいてとは伝えてなかった気がする……」
「ですが、矢吹様は何も心配いりません。税金関係や、その他支払いは妻である私に全てお任せ下さい」
「いや、さすがにそれは悪いよ。せめてお金は払わせてよ」
「矢吹様がそうお望みであればそうしますわ」
七星さんは高貴な笑顔で返してくれた。
◆◇◆◇
「僕は知らないうちに七星さんにお世話になってたんだなぁ」
夕食後、ユリナを抱っこしながら僕は呟く。
「俺も知らなかったよ。あいつただの世間知らずのお嬢様じゃなかったとは」
「正直、電車の乗り方とか知らない感じのお嬢様だと思ってたよ」
「それは知らねーんじゃねーの? あいつが満員電車に乗ってる姿が想像できん」
「苦手な人だったけど、見方を変えないとダメかもしれない」
食休み後、改めてお礼を言うために七星さんの部屋を訪ねた。
「七星さん、今いいですか?」
「ええ、どうぞ。鍵はかかってませんわ」
部屋に入ると驚いた。七星さんは服を着ていなかった。
「な、なんで裸?」
「私就寝時は服を着ませんの」
「まさか裸族の人だったとは……話しにくいので服着てもらっていいですか?」
「わかりました。ですが私は矢吹様の妻ですから問題ありませんわ」
服を着た七星さんと向き合う。よく見なくても美人なんだけど、得体が知れない何かを感じる。
「屋敷の事、色々ありがとうございました。このままだとメイドさんたちが怒って出て行ってしまう所でした」
「お礼など必要ありませんわ。妻の務めですから。ですが、お礼をして下さるなら……」
「くださるなら?」
「子種が欲しいですわ」
「それは無理です。ごめんなさい」
「寂しいですわ」
七星さんは本当に寂しそうだ……。演技なのか本気なのか解らないけど、流されると大変な事になるので逃げよう。
「それでは僕は行きますね」
そう言い残して逃げるように部屋を出た。
気を取り直してユリナとや風呂入ろ。
ユリナとお風呂場でマッタリとして、フカフカのベッドに寝かせて、今日は恵の部屋だ。
「コウちゃん今日はこれ着てみたの」
なにぃ!? これは……あの人気アニメの姫キュン・マジカルパワーのヒロインの衣装! しかも後半仲間になるミライちゃんの衣装!
「なんでこんな物が存在してるの?」
「これは清水さんが作ったんだよ。裁縫+1のスキルで作ってるんだって」
「なるほど……極振りに気付いてたんだ清水さん」
「それでどう? 似合ってる?」
「似合ってるかだって? 似合ってるに決まってるでしょーーー!」
それは魔法少女同士の戦いだった。
魔法少女同士の戦いなのに何故か肉弾戦だが。
マナーとして、戦いの最中に衣装をパージしてはならない。これは絶対だ。
ズラすのはオッケーだぞ。
やがて長い小手先の勝負の末、ニ人に友情が芽生え、合体攻撃。
激しい肉弾戦の打ち合う音が聞こえる。お互い最後の攻撃だ!
やがて、マジカルスティクは敵を倒すために最後まで力を放出し、その役目を終えた。
「コウちゃん凄く興奮してた……」
「そりゃ……男なら仕方ないよ」
「もう一回する?」
「当然!」
劇場版、姫キュン・マジカルパワー外伝が始まった。
自室に戻り、ユリナと恵と就寝中、丑三つ時にいつもの妖怪バール娘がやってきた。
「ふぉいふのふふぃなんへふほね?」
「ゆ……唯までコスプレ衣装作って貰ったの? むふぅ」
「ぷはぁ……敵女幹部の衣装と聞きましたよ……はむっ」
「うぅ……そのキャラが一番人気なんだよ」
「ぷはぁ、じゃあ悪に徹しますね」
その夜、妖怪バール娘にはありったけの釘を抜いて行った。
◆◇◆◇
翌朝、朝食後に今日もドルフィノに行くことをみんなに告げた。
「実は海岸沿いに家買ったんだ、別荘みたいな感じで。今日はその調整に行ってくる」
「コウちゃん、そのうち連れてってね?」「矢吹君と別荘で……」
「ウチらも連れて行ってくれるの?」「別荘もちの旦那かっこいい……ヤバ」
「ユリナ行きたい!」
「今はまだ住める状態じゃないけど、出来たらみんな呼ぶから遊びに来てよ。じゃあ、ユリナは一緒に行こうか」
「うん!」
今日はみーちゃんにお願いして飛び立った。
別荘地に着くと何人か家を見ていた。昨日までのボロ屋が綺麗な家に変わってるんだから驚くのも仕方ない。
家に入るとお腹を空かせていた三人に朝食を出す。その際にユリナを紹介した。
「俺はトーマだ。あたしはシノ。あたしはユノ。」
「ユ、ユリナ……です」
ユリナはちょっと腰が引けてる。初めての人には緊張しちゃうんだよね。解るよ。かつての僕と同じだから。
みんなには一旦外に出てもらい、旅用ハウスを収納して昨日作った家を出した。
うーん、なかなかいい感じだ。
でも、海の家というよりオシャレな別荘みたいだ。まぁこれでいいか。
後は家具類買わないとだね。万が一のために、みーちゃんにはユリナたちの護衛になってもらい、家の中で待っててもらう事にした。
◇◆◇◆
ドルフィノの事業用品のお店に出向き、家具と調理器具は一通り買った。というか、お任せした。
家具屋で店舗を作ると言ったら、必要な物のテンプレみたいなのがあってそれで揃えてくれた。調理器具もしかり。ただし、調理器具は一部僕のスキルで作った。
後は、店長になってくれる人だなぁ。
店員は片山君の嫁さんにやってもらうつもり。攻撃特化でスキル取った子がニ人いるんだけど、戦いに馴染めなくてずっと家に居るらしい。
片山君の家から近いし、働き口探してると言ってたから丁度いいだろう。
屋敷の経理の失態を繰り返すわけにはいかないので、お金のやりくりしてくれる人を探さないと。
見つからなけれは僕が店長をやろう。
その辺のことを相談しよう思って商業ギルド入ると、エリーシアさんが居た。
ヤバイ……逃げないと。
だが、回り込まれてしまった。
「こんにちはエリオさん、おひさしぶり」
「お、お久しぶりです。では、僕は用があるので失礼します……。あれ?」
動けない。よく見たらローブをしっかり掴まれていた。いつの間に?
「家を買って家具なども買い集めていると聞きましたよー」
「どこからそんな最新情報を……?」
「騎士団の諜報力をナメてはいけませんよー。エリオさん」
「はい……」
「商業ギルドに何か用があったんでしょ、ほら一緒に相談しにいきましょ」
僕はエリーシアさんに捕らえられたままギルドの商談スペースに連れ込まれた。
「つまり、経理の者を雇うにはどうすればいいかということですね?」
「そうです。そんな大規模な店じゃないから普通の人でも出来ると思います」
「なるほど……」
返事をしながらも商業ギルドの職員さんは顔を引き攣らせた。僕がエリーシアさんに抱っこされながら話してるからだ。
騎士団の副団長に抱っこされてる相手と話すって、どんな気持ちなんだろう。ほんとすみません。
「エリオさん提案があります」
「はい……なんでしょう?」
「ローズ隊本部に近々引退する事務の者が居ます。雇いませんか?」
「いえ、そんなエリートぽい人は必要ないですので」
「普通の事務員さんですよ」
「遠慮しておきます」
「ギルド員さんどうですか? エリオさんに紹介出来る人居ます?」
「い……いえ、おりません。で、では、私はこれで」
職員さんは逃げるように出ていってしまった。
詰んだ。またしても詰んでしまった。
エリーシアさんが斡旋する事務員って絶対監視役か何にかでしょ。
「じゃあ、いきましょエリオさん」
「……はい」
僕は再びローズ隊本部に行くハメになってしまった。
「お久しぶりですわ、エリオさん」
「お久しぶりです、シモーヌさん」
何そのニコニコ顔怖いんですけど。
「単刀直入に聞きます。どうして逃げたのかしら?」
「はて、何のことやら。僕は地元に戻っただけですので」
「わかりました。そういう事にしておきましょう」
「恐れ入ります」
「それで事務員を探してると聞きました」
「はい」
「エリーシア、連れてきて」
「ハッ」
連れられて来たのは50歳ぐらいのおばさんだった。
なんか凄く優しそうだ。この人なら大丈夫そうかも?
「シイリスと申します。よろしくお願いします」
「あ、はい。エリオです。よろしくお願いします」
思わずよろしくお願いしますって言っちゃったよ。
「シイリスさんはとても優秀な方だから、力になって貰えるはずですわ」
「小さな店舗の経理ですけど、本当にいいんですか?」
「ええ、構いません。歳ですし、そろそろゆっくりしようと思っていましたので」
「そうですか……」
色々話し合った結果、結局断れずにシイリスさんを雇う事になった。
意外にあっさり帰してもらえた僕は、シイリスさんと共に店に戻った。まずは子供達と顔合わせしてもらおう。
シイリスさんは見た目通り実際優しい人だったので、子供達はすぐ懐いていた。
後は片山君の嫁さんに話を持ちかけたら二つ返事でOKしてくれたので、雇用問題は解決で一安心。
ユリナと三人は仲良くなったみたいで一緒に遊んでいるし、それも一安心だ。
後は、提供する料理だね。スキルなんて無くても誰が作っても美味しいカレーは外せない。
あと外せないのが焼きそば。麺はこの世界にも存在するので問題はソースなんだけど、僕と芽衣子と渚で協力して作ったオ○フクソースのパクリ品がある。
ラーメンなんかも出したいね。それは後で考えよう。
子供達なのだが、子供だけでは危ないと言うことで夜は片山君の家で預かって貰うことになった。
子供を助けたつもりになってたけど、僕は本当に人に頼ってばかりだよ。
また明日集合の打ち合わせして、みーちゃんに乗って帰った。
◇◆◇◆
夕飯もお風呂も終えてユリナも寝かせた。
今日は友達ができたからなのか興奮してなかなか寝てくれなかったよ。
そして今日は渚の部屋だ。
「ウチらはコスプレしないからね」「あのヤバ可愛いニ人とは違うもんねー。うちら」
「いや、ニ人共可愛いよ。恵と唯に劣ってるなんて思えない」
「ほんとに? なら嬉しいけど」「ヤバ……うれしい」
今日も敵兵ニ人かがりに追い詰められている。
我が砲と弾倉を同時に攻めるとはなんという戦術。
弾倉を同時に攻撃されると危険だ。
砲を同時攻撃されると更に危険だ。
いそげ補給部隊! 急ぐの……だ……。
兵站は尽きた。敗北である。
評価、ブックマークありがとうございます! 今日は心がささくれてしまう事があってグチャグチャな気持ちで書いたせいで、いつも以上にグダグダになった気がします。すみません。




