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25 機械兵

 また朝がきた。


 今日は平和であって欲しいよ。昨日は散々な目に合った。

 バレットさんに振り回され死にかけるし、唯にも振り回された。

 僕に抱きついて寝てるユリナと、丸くなって寝てるくーちゃんとみーちゃん。


 ここだけ見たら凄い平和なんだけどなぁ。


 そう言えば最終的にレベルどうなったんだろ? まだ朝早いし起きる前に色々調べてみよう。


 レベルは……888か。キリがいいな。


 しかし凄いレベルだ。

 こっそり鑑定してたAランクのバレットさんですらレベルは106だったのに。


■■機能■■

容量=∞

時間停止

ボックス内鑑定

ボックス内パーティション作成

ボックス内分離≒結合

ボックス内熟成

ボックス内温度管理

ボックス内複製

範囲収納+

ボックス内クラフト+

範囲クラフト+

範囲鑑定

ボックス内錬金

ボックス内転移

■■■■■■


 あれ? なんか昨日と違うなと思ったら、

 見やすくする修正入ったのか制限解除の文字は消え+だけ残ったみたいだ。


 それと、昨日見たボックス内錬金以降にスキルも増えてるな。


 え!? ボックス内転移ってなに?


 ボックス内転移は気になるスキルだけど、その前にボックス内錬金の詳細を見てみよう。


 ●ボックス内錬金●

 より深く理に干渉できる


 つまり……? クラフトのもっと細かく出来る版のスキルかな? 使い込んでみないとよくわからないね。


 ●ボックス内転移●

 次元の繋がりを使い、ボックス内を通り転移する。転移できるのはスキル使用者のみ。5億分の1の確率で転移失敗する


 転移! 凄いスキルきた! でも次元の繋がりってなんだ? それに超低確率ではあるけど転移失敗したらどうなるんだろう……。

 一瞬喜んだが、正直あまり使いたくないな。


 でも、転移できたら便利だし、調べてみよう。次元の繋がり……これは何を意味してるのだろう? 正直見当もつかない。


 わからないなら聞いてみようか。


「みーちゃん起きてる?」

『起きてるニャ』


「実は新しいスキルが増えたんだけどね、スキル説明が意味解らないんだ」

『なにがわからないのかニャ』


「次元の繋がりを使い、ボックス内を通り転移するって説明出てるんだ」

『つまり次元の繋がりが解らないのかニャ?』


「左様でございます」

『多分アイテムボックス同士の事だと思うニャ。個人別に分けられているけど、大元は一つにゃ』


「そうなの?」

『ヨルがそのスキル作った時にアイテムボックス用の次元作ったニャ』


「へぇぇ。スキルのために別次元まで作っちゃったんだ? やっぱアイテムボックスってすごいスキルだよね。

 でも、最近僕のスキルはアイムボックス感が薄れて錬金術師みたいな構成になってきたんだよ。もし、錬金術のスキルを一枠でも選んでたら無駄になってた気がする」


『それは無いニャ。もし錬金術+8にしてたらコウイチはもう一人の(ヨル)になれてたニャ』

「もしかして錬金術って凄い?」


『一枠でも相当な物になったはずニャ。もし+8なら世界を作れたと思うニャ』


「流石にこの世界の事詳しいんだね。でも、ヨルさんの眷属なのに呼び捨てにしていいの?」

『いいニャ。コウイチを呼んでくれるまで5000年待たされたニャ。激おこニャ』


「ごめんね待たせちゃって。でも呼んでくれて本当に嬉しかった」

『うにゃぁぁぁぁ』


 昔みたいに甘えてくるみーちゃんをモフモフしながら、僕はアイテムボックス同士の意味を考え続けた。



◇◆◇◆



「昨日は取り乱してごめんなさい。わたし、みんなと仲良くしたいです」


 朝食前に唯が突然立ち上がってみんなに謝罪を始めた。

 いきなり立ち上がったから、また発作かと思ってちょっとビビった。


「わたし矢吹君が好きです。でも弁えるつもりですから仲良くして下さい」

 唯はテーブルにぶつける勢いで頭を下げた。

 額割る程の土下座見てたから一瞬焦ったよ。


 みんなも謝罪を快く受け入れたみたいで僕もホっとした。


「みんな仲良くなった事だし朝ごはん食べよう」

「こじれた原因の半分は矢吹のせいもあるけどなプププ」


「それは言わないでよ」


「それよりこのベーコン美味いな」


「それヤバいよね、うちとインコが研究して料理スキルで作ったんだけど我ながらヤバイ」


「スキルで燻製塩漬け肉にできるの?それともベーコンそのものを作り出せるの?」

「んー、超簡単に説明すると、マジ凄いスキルって感じ。説明難しい」

「わかるー。ヤバい意味解んないもんね、原理が解ってるものなら、どう作ればいいのかわかる感じ」


「つまり錬金術みたいに何かをスキルで生み出すんじゃなくて、凄腕料理人になれるみたいな?」

「マジそんな感じー。ちょっと違う気がするけど。あと、錬金術って何だかわからない」


 へぇ……スキルって色々あるんだね。僕も模索してみよう。固定概念に囚われるなって言われたしね。



◆◇◆◇



 今、僕はヨルバンの冒険者ギルドに来てます。

 ちなみにモリモリと唯と一緒に来ました。勿論マックスも居ます。

 そしてエルメスさんの瞳が僕を貫かんばかりに輝いております。怖いです。逃げたいです。


「本日はどのようなご用件でしょうか、エリオさん」

「こ、この子、ユイって名前なんですけど、絵師と回復魔法のスキルあるので何か働き口ないかと……」


「そうですねぇ……それよりエリオさんにお話があるのですが」

「はい?」


「後でギルマスルームにいらして下さい」

「は……はい」


「おい、矢吹! このすげぇエロい超美人のお姉さん誰だよ」

 モリモリは小声で話しかけてきた。


「あら、そちらの男性は?」

「探してたサトシ・モリヤマです」


「見つかって良かったですね。私も嬉しいです。それではモリヤマさん、これをこれどうぞ」

 そう言ってエルメスさんはモリモリに合鍵を渡した。

 まさか男なら誰でも食っちゃう系だったのー? なんかショック……。


「悪いが俺には可愛い嫁が居るから合鍵は貰えないよ。でも一晩の恋ぐらいならいいぜ」

モリモリはカッコつけたポーズでキザなセリフを決めた。


「キモッ……」

 唯は辛辣だ


 エルメスさんが目配せすると、事務員さんみたいな服装の人が来てモリモリを連れて行った。

 モリモリは「え?」「え?」みたいな感じになってる。マックスもついていった。


 冒険者から「あいつが今日の書類整理係かぁ気の毒に」「がんばれー」など声が聞こえてくる。


「エルメスさんあれは一体?」

「雑書類室の鍵ですよ。人手が足りないのでランダムで冒険者に手伝わせています」


「あれ? それじゃ……」

「エリオさんに渡したのは最初から私の家の鍵ですから」

ニコって妖艶な笑顔を向けられる。ゾクゾクする。ていうかアレが元気になってしまった。


 唯は何かを感じ取ったのか、前に立ってる僕をギュッと抱きしめてきた。


「矢吹君、この人は誰なんですか? 恋人ですか?」

「いや、違うよ。ここのギルドマスターで色々お世話になってて……」


「エリオさんと私は将来を誓い合った仲ですよ。もう少し先の話ですが」


 このセリフを聞いて唯はキッ! っとエルメスさんを睨みつけた。ブチ切れなくなったのは成長したんだろうか。

 なんか爆発しそうなのを我慢してる感じだ。後頭部に当たるおっ○いからも鼓動が激しくなるのが伝わる。

 そして唯は何を思ったのか片手を伸ばし、狙撃準備完了してる僕のアンチマテリアルライフルをギューって掴んだ。


「わたしもいずれ矢吹君とそうなりますよ」

「はうぅぅぅ」


「そうですよね? 矢吹君?」

「いや……それは……ていうか、弁えるという話は……?」

「弁えながら頑張ります」


「仲がよろしいのですね。ところでお仕事のお話はよろしいのですか?」


「唯、仕事の話しよう? 手離して?」

「仕事の話はしますが、離しません」


「それでは続けますね。絵師のスキル持ちでしたら色々仕事あります。食堂のお品書きから、絵画まで。回復魔法も使えるのでしたら治療院や教会で働けます」


 ていうか掴んだまま話続けないで! なんなのこのニ人。

 そういえばドルフィノで見たメニューの絵も凄かったな。あれも絵師のスキルなんだろうか?


 その後しばし僕は囚われ続けたが、10分ぐらいしてやっと開放された。


 とりあえずは色々と描いて自分に合うものを探すらしい。まずは絵師定番のメニーの絵からやるそうだ。

 でも、何故か唯は回復魔法で稼ぐ気はないみたいだ。



◆◇◆◇



 エルメスさんと話が終わり、唯は面接に行くので去って行った。

 何度も振り返る姿は可愛いというか怖かったよ。


 そして僕は今ギルマスルームに居る


「旦那様からはメスの濃い匂いがするわ。ついに奪われてしまったのね」

 受付嬢モードを解いたエルメスさんが寂しそうに呟く。


「すみません。でも、僕なりに答えを出したつもりです」

「いいのよ。わかっていた事だもの」


「それで僕をここに呼んだ理由は?」

「旦那様は自分の事なのに、ハイエルフの事をよく解ってないみたいなので教えてあげようかと思ったの」


「確かに僕はハイエルフの事を全然解ってないですね。記憶を失ってるような感じですから」

「そうなんでしょうね。旦那様は子供は欲しいかしら?」


「ユリナが居るから今はそれほど欲しいと思わないですね」

「それならいいんだけど、ハイエルフの子供が出来る事は稀なの。恐らく人に種を宿すのは不可能に近いと思うわ」


「え? そうなんですか?」

「極端に尖った種は数を残せないものなのよ。でも私ならば産んであげられるかもしれないわ」


「サキュバスの能力ですか?」

「いいえ、寿命が長いから単純に多く愛し合って確率を上げるだけよ」


「ただの力技でしたか」

「ただ、一つだけ問題があるの。何度も愛し合っていると、いずれは飽きて行為は続かなくなるのよ」


「そんなことないですよ。僕は今でも毎日ドキドキしてます」

「今はまだ何も知らない旦那様。ピュアで愛しいわ。その純粋さを失わないで欲しいの」


 エルメスさんは立ち上がると僕の目の前に来て顔を両手で固定した。エルメスさんの目が妖しく赤く光っている。

 視線を固定された僕はエルメスさんから目が離せない。そして今まで無い程の瞳の力流し込まれた。


「イゼル……イガリ……セノリ……イシ」


 呪文のような声が聞こえる。頭に何かが入ってくる……やがて意識は闇に消えた。


 ……。


 ……。


 ……。


「あれ? 僕は寝ちゃったんですか?」

 どうやらエルメスさんに膝枕されているようだ。柔らかい。そしていい匂い。


「可愛い寝顔だったわ。何回かキスしちゃった」

 そう言って笑うエルメスさんは可愛くてなんかもうヤバかった。


「僕に何したんですか?」

「お手伝いしてあげただけよ。旦那様は知らなくていいの」

 エルメスさんは優しく僕を撫でながらそう言った。


「え? どういうことですか?」


 ピロン♪ピロロロロン♪


 あ、ヨルさんからメールだ。いつも変なタイミングで来るんだよなぁ。


---------------------------------------------------------------


矢吹へ



最近酒を用意しないのは何故じゃ?


そろそろ堪忍袋の緒が切れそうじゃ!


スキル消しちゃおうかなぁ……なんて思っているぞ。


あ、Deleteキーにチラっと指が触れてしまった。


危なかったのぅ。


今のは危なかったのぅ。


後はわかるな?


今すぐ酒屋に向かって走るのじゃ!


あ、そうそう。

今さっきサキュバスに植え付けられた呪いはどうする?


常に初めてまぐわうかの様な興奮を男女ともに与える類の呪いじゃ。


解除してやることも可能じゃぞ。

かけられたままでも特に問題ないが好きにせい。


そんな事より酒じゃ。


手紙読んでないで、はよ走れ。



じゃあの


---------------------------------------------------------------


 相変わらずだなぁ。

 ていうか、スキル消されたらやばいぞ。すぐ行こう! 呪いの件は後回しだ。


「すみませんエルメスさん、ちょっと急ぎの用事ができました!」

「はい、行ってらっしゃい旦那様」


 膝枕は名残惜しいけど、僕は急いで酒屋に走った。



◇◆◇◆



「え? なんだって?」


「ここから、ここまでのお酒を全部下さい」

「は? イタズラならよそでやれよ」

 店員さんに怒られてしまった。だけど僕は急いでるんだ! それどころじゃない。

 札束ビンタならぬ、大金貨をドンドンジャラジャラ出して黙らせた。


 ふぅ……。ヨルさん専用スペースに酒樽20個も入れておいたから、これで暫くは問題ないだろう。


 チェックしたらスキルは消されてなかった。

 助かった。今度から定期的に入れよう。


 疲れた。屋敷に帰るか……。


 僕は屋敷に着くと、新しいスキルの練習することにした。場所は中庭のガーデンチェアに座りながら。


 いつの間にか現れたメイドさんがお茶入れてくれて上流階級になった気分だよ。


 ボックス内錬金……どれ程のものか見せてもらおうじゃないか。

 とりあえず錬金術定番のゴーレム関係に挑戦してみる。


 アイアンゴーレムの核を取り出してスキルを使ってみた。

 解る。核をどう設定すればいいのか詳細にわかる。

 これがスキルのチカラなのか。今朝、芽衣子と渚が言ってた意味が少しだけわかった。


 クラフトで核をいじった時は、表面的な所しかいじってなかったと今なら解る。


 あることを思いついてしまったぞ。


 モリモリには悪いがやらせてもらう! 出来そうな確信あるから衝動が止まらない。

 僕はアイテムボックスから車を取り出した。

 そしてそこに取り付けてあるミスリルゴーレムの核を外した。


 今なら出来る。この核の詳細な設定。

 人の様に。より人間に近いように。言葉を話し、主を守る。


 僕は出来上がった核を、そいつに入れた。

 そう、東の遺跡から回収してきた機械兵だ。


 あの時はホコリかぶって解らなかったけど、ボックス内で綺麗にしてみたら重要機関はミスリル製だとわかった。だから動くはず。


 そして、そいつは動いた。


「はろーご主人さまーはじめましてー!」


「あれ? なんか思ってたんと違う」


 なんかこう……わかるかな? 片言で喋るサイボーグみたいなカッコイイやつ。あれに設定したつもりだった。


「どしたのー? あ、動きチェックするねー」


 ゴーレム機械兵はラジオ体操みたいな動きで関節の調子を見ているようだ。

 時々ギシギシ鳴ってる。油差した方がいいのかな?


 しばらく動いていると音も鳴らなくなり、スムーズな動きになった。


「これで動きはかんぺきだよー仕事はなにすればいー?」


「えーと……じゃあ屋敷の警備で。と、言っても人に攻撃しちゃダメだよ」


「はーい」

 軽い返事してゴーレムは機械兵は歩いて行ってしまった。ほんと解ってるのか?


「キャァァァァァァァァァァァァァァ」

さっきお茶入れてくれたメイドさんの悲鳴が聞こえてきた。


 まさか!


 僕は急いで現場に行くと、木の後ろに隠れて震えているメイドさんと、一生懸命話しかけてるゴーレム機械兵がいた。


「だーかーらー警備してるだけなのー」

「来ないで! ヒィ助けて!」


 会話噛み合ってないな。このままじゃ埒が明かないから説明に行こう。


 そして同じことが起きないようにみんなにゴーレム機械兵を紹介して回った。

 門番さんなんて問答無用でゴーレム機械兵に斬りかかってた。剣折れてたけど。



◆◇◆◇



 夕方にさしかかり、仕事から戻ってきた嫁ズと唯とモリモリにゴーレム機械兵を紹介した。


「どもー。はじめましてー」

 片手上げて挨拶するゴーレム機械兵にみんな驚いてる。ちょっと楽しい。


「矢吹すげぇな! 動いているとすげーカッコイイ! 喋り方と声以外は」


「矢吹っち、何これア○アンマン?」


「ヤバッ。もしかしてこれを嫁にするの? ヤバ」


「コウちゃんこういうロボット好きだもんね」


「……カッコイイ」


 意外に唯が一番食いついてる。ベタベタ触ったり匂いかいだりしてる。


「それでモリモリに謝らないといけない事があるんだ」

「なんだ?」


「車に使ってた核を使ったから、もう車は動かない」

「はぁぁぁぁぁぁぁ? まじかよー! 核を車に戻せよー」


「無理なんだ。フォーマットが変わってしまった」

「そんなぁ……」


「どんまい」

 ゴーレム機械兵がビシッとサムズアップした。


「ミスリルゴーレムまた捕まえるまでちょっと待っててよ。スキルのお蔭で次の核はもっと進化するから」

「まあ、仕方ねーか。そもそも車は矢吹が作ったものだしな」


「違うよ。最後はニ人で仕上げたじゃん。また一緒に作ろうよ」

「おぅ!」



◇◆◇◆



 夕食終わりお風呂も入り、一息ついた寛ぎ中のみんなに告げた。


「というわけで、ゴーレム機械兵だと長いので名前はごーちゃんにしたいと思います」

「どういう訳だかしらねーけど、矢吹が付ける名前は全部同じパターンだよな」


「いや、もし男ボイスだったらごーくんにしたよ?」

「結局一緒じゃねーか」


「ごーちゃんにはしばらく屋敷警備してもらうつもり」

「おっけーいいよー」


「最初は慣らし運転みたいな感じでいいからね」

「はいよー」


「お兄ちゃんユリナ眠い……」


「じゃあ、お部屋行こうか」

「うん」

 僕とユリナは手を繋いで部屋に戻ることにした。


 ユリナをフカフカのベッドに寝かせ、頭をなでなで。


 さあ、行くか。今日は芽衣子の部屋だ。


「ねぇ……なんでこんなドキドキするんだろ。マジなにこれ」

「ヤバい……なんか急に最初にした時の気持ち思い出しちゃった……ヤバ……」


 僕もドキドキしていた。

 ボロ宿の時の、あの高揚感を僕はまた体験していた。


 これか……これがエルメスさんが言ってたことなのか。

 ニ人と結ばれてまだ月日経ってないのに知らず知らずに行為に慣れてしまっていた。

 この先に待つものがエルメスさんの言ってた倦怠期的な事なのだろう。そんな気がした。


 僕たちは愛し合った。激しく、でも心はウブに。

 縦に並んだアナログ端子の赤に挿したり、黄色に挿したり、僕は2つ重ねた機器が壊れるまで暴れた。

 たまに白に挿すと両方の機器が反応して楽しい。

 僕は気が済むまでアナログオーディオ体験をした。


「痛たた……久々に痛くなっちゃったよ」

「今日ヤバかった……うちもちょっと痛い」


「ごめん……止まらなくなっちゃった」

 あの時はニ人が初めてだった事もあって我慢したけど今日はフルバーストしてしまった。


「ねぇ……寂しいよ。矢吹っちと一緒に寝たい。部屋に戻らないで?」

「くっついて寝よ? なにこの気持ちヤバ……」


 僕も離れたくなかったので、全員で僕の自室に戻り寝ることにした。

 その日の夜はニ人に抱きつかれ心があたたかいまま寝れた。


 だが、例の如く下半身に違和感を感じて起きると唯が居た。


「ふふぁりふぉひにしへはんれふか?」


「え? 唯また来たの?はぅ……」

「また来るって言いましたよね? はむっ」


「ふぉぉ……待って、二人が起きたら大変なことになるよ……はふん……」

「なら静かにしてて下さい。はむっ」


「あぁぁ……」


 ……。


 ……。


「じゃあ唯は帰りますね。また来ます。今日も美味しかったです」


『また来るらしいニャ』


「みーちゃん止める気無いのね」

『無いニャ』


 こうして僕は今日も寝不足になるのだった。

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