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24 遺跡再び

 チュンチュン……


 朝だ。物凄い怠い。


 もう少し寝ていよう……。


「アレってあんな味するんだねー。最初なんとなく抵抗あったけど意外に飲めた」

「ヤバって感じの味だよね。キュンキュンきてヤバかった。可能ならゴクゴク飲みたい……うちヤバ」

「私は大好きな味♪」


 なんの話だ? ドクター○ッパーの話かな。

 あれは人によって癖になるしね。

 そうに違いない。


 バーーン!


 そんな、よくわからない話がされてる最中にいきなりドアが開かれるた。


「お兄ちゃん!」


「ユリナちゃん、オハー」「おはー」「おはようユリナちゃん」


「あ、おはよう」


「お兄ちゃんなんでここにいるの? 昨日一緒に寝たのに」


「コウちゃんは話し合いに来て疲れて寝ちゃったみたいだよ」


「じゃあ、ユリナも寝る!」


 このパターン前も見たぞ。

 まぁいいや。ユリナを抱き枕で二度寝しよう。おやすみ。



◇◆◇◆



「矢吹さぁ、いくら可愛い嫁が三人居るからって程々にしとけよ。最悪死ぬからな」


「そんなげっそりしてる?」


「げっそりはしてないけど凄い寝不足そうに見えるな」


「睡眠の質が悪かったのかも……」


 結局お昼近くまで寝て、メイドさんが作ったお昼を食べた後屋敷を出た。

 ミスリルゴーレムを早くゲットしないとユイさんの精神が持ちそうにないしね。

 なので僕たちは今、車に乗ってヨルネット近くの遺跡に向かっている。メンバーは僕、モリモリ、マックスだ。

 みーちゃんとくーちゃんは自宅警備兼、ユリナの遊び相手になってもらってる。


 芽衣子と渚は教会に行き、恵は美容師の仕事を探しに冒険者ギルドに行った。

 ニ人は最初働くの渋ってたくせに、今は責任持って働いてるから凄いよ。恵は相変わらず行動力ある。


 エマさんとリリさんはメイド見習いしているようだ。それぞれやることがある。


 それに引き換え、男どもは無職のくせに車に乗り回してヒャッハーしていた。


 遺跡に着くと車を収納し、入り口に進む。

 以前と違ってモリモリがフェンリル連れているおかけで絡んでくる冒険者は居なかった。


 ちょっとテンプレしたかったのに。


「そういえばモリモリってランクは何? 僕はGだけど」

「俺はCだぞ。お前、たまには依頼受けとけよ。そのままだと剥奪されれるぞ」


「あーなんか説明聞かされた時にソレ言われた気がしたかも」

「三ヶ月何も依頼受けないとカードが凍結されるぞ」


「一回も依頼受けたこと無いよ。素材はいっぱい売ったけど」

「じゃあ今度何か一緒に受けようぜ!」

「ラジャ!」


 そんな会話をしつつ、遺跡へと入る。


「モリモリ、マックス、走るよ! 着いてきて」

「おう」「ガウ」


「はぁぁーーーー収納、収納、鬼収納! それそれ収納また収納!」


「ゴーレムが消えていくとか、意味わからなくて笑える、ぶははは」


 僕たちは走る。最深部を目指して!


「止めの収納ぉぉーー!」


「今のアイアンゴーレムで全部か?」


「もう少し行った所にミスリルゴーレムがいるよ」

「よし、行くべ」


 ……。


 ……。


 居ない。ミスリルゴーレムが居ない。


「居なくね? 本当にここか?」


 僕たちが周りを見渡してあたふたしてると、例のミスリルフルプレート装備のバレットさんがきた。

 ヘルムから見える目が相変わらず怖い。


「エリオまた会ったな。お前らも宝石探しか?」


「バレットさんこんにちは。僕たちはミスリルゴーレム探してます」

「何を言ってんだ、少し前にお前が持っていっただろ。あのクラスの魔物は一度倒すとしばらく復活しないぞ」


「えぇぇ? そうなんですか!? 知らなかった……」

「どうするよおい……」

「アンデッドが居る墳墓で魔石を大量ゲットして売りに行くとか……?」


 僕たちが色々話し合ってると、バレットさんがまた話しかけてきた。


「よくわからんが相談なら乗るぞ?」


「ほんとですか? 高く売れそうな魔物何処かに居ないですかね?」

「金が必要なのか?」


「はい。最低あと20万ゴル必要です」

「そいつは丁度いい、このメンバーならやれそうだから行こうぜ、東の遺跡へ」


「東の遺跡? それはギルドでは教えて貰ってないですね」


「あたりめーだろ。危険度SSSだからな」


「だ、大丈夫なんですか?」


「俺一人じゃちとダルいが、アホみたいなアイテムボックス使いとフェンリル使いが居るなら問題ねぇ」


「アホって……」


「ガハハハハハハハ!褒めてやってんだよ」

そう言って僕の肩をバシンバシン叩く。痛い……特製ポーション飲みたい。



◆◇◆◇



 そして僕たちはやってきた(強制連行されて)東の遺跡。


「あの車ってのは速いし、おもしれーな! 気に入ったぜ! また乗せろよな」


「は……はい」


 そんなことより……。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


 グゥゥゥ……ギュォーーーーー


 フォーーフゥッ!


「もう、入り口からして危険な雰囲気出てるんですけど。何この音」


「あぁ、この遺跡ダンジョンは色んなタイプの魔物の寄せ集めで構成されてる。ヤバイ奴らばかりのな。その鳴き声だ」


「か、帰りましょうよ? 命あっての物種ですよ?」

「おいおい矢吹、俺ら死ぬわ」


「男がこの程度でびびってんじゃねぇ! 行くぞオラ」


 一応作戦は立てた。

 バレットさんが遊撃隊として暴れ周り、僕が反発範囲収納バリアで自分とモリモリを包み、防御を固める。

 モリモリはこの防御の中からマックスに指示してバレットさんを援護する。

 そして僕は敵の装備などを回収して武装解除する。武器持ってない魔獣タイプの敵には無意味だけど。


「はぁ……はぁ…ゲロ吐きそう……」


「ガハハ! こいつはキツイぜ! だが滾るな!」


「矢吹! なんとしても生きて帰るぞ!」


 僕たちは今、ほぼ最深部まで来て敵に囲まれてます。

 冗談抜きでピンチです。


 作戦は最初予定通りに出来た。でも、敵が強く、数が増えることによって作戦もくそもなくなった。


 反発バリアでミスってマックスをふっ飛ばしてしまったり、バレットさんが血反吐を吐いて倒れたり。

 手持ちのポーションでなんとかしてるらしいけど、何時まで持つのやら。


 そして今、地竜三体に囲まれている。


 アイテムボックス砲使えば倒せるかもしれないけど、威力調整出来ていないから撃てば遺跡が崩壊するかもしれない。


「どうする矢吹……車に乗って突っ込んでみるか?」

「あいつら車より大きいから無理でしょ……むしろ車に乗って逃げた方が……」

「そうしよう!」


「オラァァァァァァァァァァァァァァァ!」

 そんな僕たちの逃走案を無視して、全身血まみれのバレットさんが剣を振り上げて突っ込んだ。


「マックス!」

 バレットさんの剣が当たったと同時にマックスの衝撃波攻撃も重なる。

 かなりの衝撃がこっちまで伝わってきた。

 地竜の一体は吹っ飛び、ピクピクしてる。でもまだ死んでないようだ。


 だが、次の瞬間、他のニ体の地竜の口の中に光が集る。


「ブレスだ! 地竜の後ろに回れ!」


 だけど、もう遅い。僕とモリモリは逃げ遅れた。


「クソガァ!」

 バレットさんは地竜の一体に飛び乗り、頭を思い切り斬りつけた。

 おかげで一体のブレスはキャンセルされたようだ。


 しかし、もう一体のブレスは無情にも放たれた。


「ちくしょ……リリごめん」


「まただ!」

 僕はモリモリの前に出るとブレスを、


 収納した!


 全てが見える物体ではないブレスの収納は恐ろしく集中力を要した。

 一瞬でも気を抜けば僕もろとも吹き飛びそうだ。怖い……。

 だが、やり遂げたぞ。そしてお返しだ! 

僕はブレスをボックス内でぐるっと回し、アイテムボックスを開放する。

 自分の放ったブレスが自分の口に戻り、一体の地竜は爆散した。


「エリオでかした! オラァッッ!」

 バレットさんは頭を斬りつけた地竜に乗ったままザクザク刺しまくる。

 マックスは、地竜の口の中に衝撃波を撃ち込み支援してる。そして、ついにその一体も倒れた。


 後は気絶してる一体のみ。バレットさんが近づき、タメ攻撃のようなスキルで止めを刺そうとしたその時、バレットさんは吹っ飛んだ。


 寸前に意識戻った地竜が尻尾を張り回したみたいだ。


「最後にしくじったぜ……クソがぁ!」


 バレットさんはすぐに立てないようだ。完全にダウンしてる。どうする? 特製ポーシュン飲ませにいく?


 でも……地竜倒して急激レベルアップ効果で意識飛びそう……。

 この状態ではあまり動けないし、ブレス返しは集中力持たなくて使えない。


 多分増えているであろう、新スキルに賭けてみるか? ステータス!


 レベルは621


 レベルはかなり上がった。


 気になるのは地竜倒したバレットさんや、それに協力したモリモリだって急激に経験値入ったはず。

 それなのに意識失いそうにはなっていない。

 もしかして僕だけリミットを外して経験値が入るボーナスついてないか?


■■機能■■

容量=∞

時間停止

ボックス内鑑定 

ボックス内パーティション作成

ボックス内分離≒結合 

ボックス内熟成 

ボックス内温度管理 

ボックス内複製 

範囲収納+ 制限解除

ボックス内クラフト +制限解除済

範囲クラフト +制限解除済

範囲鑑定 

ボックス内錬金

■■■■■■


 ボックス内錬金?? 面白そうなスキルだけど、今は使える気がしない。

 それと、範囲クラフトの制限が解除されたみたいだ……。これも今はどうでもいい。


 それなら最後の手段! いつものこいつの出番だ! テレレレッテレー。特製ポーション!


「僕は人間をやめるぞぉぉ、モリモリ」

「はぁ?」


 正式スタイル、腰に手を当て一気に飲み干す!


「ニャャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーハッハッハッーーーーー!」


「なんだ!? エリオの奴、気でも触れたか? クソが!」


「またアレか……」


「ニューーーーー! ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ、ニャン!」


 僕は一瞬で地竜へ飛び乗り、その上でダブル招き猫ポーズで変なダンスをしながらニャン! のキメゼリフと共に地竜を踏み抜いた。


 その威力は、地竜の胴体に大穴を開け、衝撃で地面を陥没させた。


「ニャッハーーーーーーーーーーーーーたのしーうれしーおいしーーーー!」


 僕は死んだ地竜の腹の穴に飛び降り、心臓をむしり取るとそのまま……食べた。食べた。食べた。


「オニクはヤッパリナマがサイコーーーーーーーーーーーーーーーーーーーニャハハハーーーーーーーーーハツハツ!」


 満足した僕は穴から飛び出すと、何かが隠されている壁へと近づき、蹴り破った。


「ニャハハーーーーーーーーーーーークンクン、クンクンーーーーーこのカホリはーーーーーお宝ハッケン伝! ニャニャニャニャ」


 僕はお宝が隠された隠し部屋に入って行った。



◇◆◇◆



「おい! エリオの奴はどうなってんだ?」

「俺もよくわからないんですが、薬ヤリ過ぎでラリってるらしいです」


「アホか! ラリって地竜を蹴り一発で殺せるわきゃーねーだろ!」

「それはそうなんですが……まぁ、もうすぐ落ち着くはずですから……」


「おーい! バレットさーん!モリモリーーーーーーーーー! お宝みつけたかもです」

 あいつが蹴り破った壁の穴から声がした。


「ほらね?」

「けっ! なんだかわかんねーが、助かったからいいか! ガハハハハ」


 (ガハハハじゃねーよ。このおっさんのせいで死ぬとこだったよ!)



◆◇◆◇



「モリモリこれなんだと思う?」

「何ってあれだろ……? この場所を守る機械兵とか?」


「だよねー」


 部屋の一番奥の台にSF映画に出てくるような機械人間が横たわっていた。

 結構カッコイイ。男の子はこういうの憧れちゃうよね。後で回収しよ。


「なんだこりゃ! これがお宝かぁ?」

バレットさんは機械兵を見てガッカリしてる。


「あ、お宝はそっちの棚にあります」

 僕はビシッと指差した。


「おぉぉぉ! こりゃすげぇな、人工魔石だぞ」


「人工魔石? なんですかそれ」

「大昔の連中は小さい魔石を集めて一つに合成してたんだよ。今でもたまに発掘されるが、ここにあるのは特上品だ!」


「売れます?」

「20万ゴルなんてコレ一個で余裕だろ」


「やった! やったよ! モリモリ」

「おー。でも疲れたぜ……」


 とりあえず僕は部屋にある物全て収納した。


 もちろん地竜もね。爆散させてしまったやつも収納できるものは収納した。

 爆散させてしまった地竜の魔石は見つからなかった。粉々になったぽい。


 帰りは遺跡の中を車で爆走して逃げ切った、みんなもう戦う余裕なんて残ってないのだ。

 バレットさんとは、もう絶対冒険しないと僕たちは心に誓うのだった。



◆◇◆◇



「こんなに貰っていいのか?お前が見つけた隠し部屋の人工魔石だぞ?」


「東の遺跡なんて僕らは知らなかったですし、だから情報料みたいなもんですよ。あと、地竜は1匹はバレットさんのですからね」

「お前じゃなけりゃ、丸ごとなんて持って帰れなかったし、わりーな助かる」


「いえいえ」

 

 僕たちはヨルネットの冒険者ギルドに行き、お宝の山分けをした。地竜もバレットさんの分はギルドで出した。

 散々振り回されたけど、なんだかんだでバレットさんのおかげでお宝ゲットできたので魔石を分けてあげたのだ。


「おい! テメーら、今日は全部俺のおごりだ! 飲み狂え!」


「おおぉぉ! バレットさんゴチになります!」「さすがバレットさん相変わらず金の使い方狂ってるぜ」「あざーす!」


その後、僕たちはヨルネットの冒険者ギルドに人工魔石を売りに行ったら、一つ40万ゴルで売れた。

 これで一応ミッションコンプリートだよ。


「疲れたな……ユイさん買って帰ろう?」

「だな……しかし、俺ら服ボロボロだな」


「これ着る?」

 僕は複製した芽衣子のブラウスとスカートを出した。

「プッ……お前は似合いそうだよな、それ」


「……実は岡さん達に着せられてアレした事があるよ。僕はクラフトで服のサイズ変更できるの知ってるからさ」

「どんなプレイしてんだよ、お前らは……後で俺にもその姿見せてくれ! そして嫁になってくれ!」


「絶対やだ! これあげるからリリさんに着せなよ」

「その案採用! くれくれ! 今夜は楽しみだぜ!」


 死にかけた僕たちは生還した安心感で完全に変なテンションになっていた。

 熱が覚めるまでそんな会話が続くのだった。



◇◆◇◆



 しばらくすると冷静になって、新品の服を買って身なりを整えてから、僕たちは奴隷商に向かった。


「すみません、取り置きをお願いしたユイさんを引き取りに来ました」

「いらっしゃいませ。これはまたお早いですなぁ。ユイは暴れるのでそこに縛り付けてあります」


 ユイさんは頭も身体も足も動かないように短い丸太に縛り付けられていた。口には猿ぐつわがかけられてる。


「はい、これが残りの分のお金です」


 僕は大金貨35枚が入った箱を差し出した」


「ありがとうござます……はい、確かに確認いたしました。ポーション代はサーピスしておきますよ」


「ポーションのこと忘れてました。ありがとうございます」


 契約も済ませ、奴隷からは即時開放した。ユイさんはうーうー唸ってるし、猿ぐつわを外すか。


「矢吹くぅぅぅん好き! 好き! 殺して……唯を殺して殺して殺して殺して殺してぇ……」


「大丈夫だよ! ほら、落ち着いて」


「矢吹、もうこのまま担いで持っていこうぜ。離れた場所で薬飲ませればいいだろ」


「だね。こんな色々な目がある所で特製ポーションは使えないしね」


 前の通りにアイテムボックスから車を出して、モリモリには運転席でスタンバってもらった。


 僕は、猿ぐつわを付け直したユイさんを担ぎ車の後部座席に押し込んで、僕も乗り込んだ。

 そして急発進して街を出るのであった。


 傍から見たら人攫いそのものだけど、致し方ないのだ。


 道から外れ、誰も来ない開けた場所に車を停めると、ユイさんの猿ぐつわを再び外した。


「矢吹くぅん。キスしてぇ。にぇキスしてよぉ」


「はいはいキスするから目瞑って上向いて?」

「はい! むーーーん」

 ユイさんは唇突き出してキスを待ってる。僕はその口に特製ポーションを差し込んだ。



 そして辺りは闇に包まれた……キラキラキラキラキラ……



「ほんとこぇぇな、その薬の演出……」

「僕もそう思うけど、さすがに慣れたよ」


「矢吹君……なの?」

 ユイさんが正気に戻ったようだ。


「そうだよ。さっきまでの記憶はある?」

「ある……と思う。まるで空から自分を見てるみたいな感覚だった。暴走する自分を止められないの」

 色々と思い出したのか、ユイさんは泣き出してしまった。


 ユイさんを慰めつつ、丸太から拘束を外し、自由にしてあげた。



◆◇◆◇



 三人は今、僕がアイテムボックスから出した旅用の家のソファーに座り、向かい合っている。


「あの……矢吹君、助けてくれて本当にありがとうございます。それと森山君、酷いこと言ってごめんね」


「いや、いいよ。心が壊れるほどのストレス受けたんだ。むしろ同情する」


「そう言えばユイさんのフルネームは?」

「瀬川唯です。できれば今まで通り、唯と呼んでほしいです」


「了解。それでこれからの事なんだけど、唯さんはどうしたい? もう完全に自由だよ」

「矢吹君と一緒に居たいです。あと唯と呼び捨てにして下さい」


「じゃあ、唯は僕の屋敷に来ると言うことでいいのかな?」


「矢吹君屋敷持ってるの?」


「持ってる。部屋も余ってるから問題ないよ」

「行きます。でも水野さんも居るんですよね? 本当に……水野さんと結婚したんですか?」


「役所に届けたわけじゃないけど嫁だよ」


「まぁー気にせず唯も来いよ。矢吹ん家まじでけーし部屋余りまくってるから」


「ハァァァァ!? 唯を呼び捨てにしていいのは矢吹君だけだから! 気安く呼ばないで!」

 唯はいきなり立ち上がり、激昂した。


「あ、ハイ」


 おやおや……素でも結構アレな子なのかな?

 こんな子うちに住まわせて大丈夫だろうか……。


「ごめん……ちょっと言い過ぎた」


「お、おう」


「じゃあ、ここで話して居ても仕方ないし、ヨルバンに戻ろう」

「だな」



◇◆◇◆



 僕たちは車で屋敷に乗り込むと、玄関前で車から降りた。


 メイドさんが扉を開けてくれて僕たちは中に入る。


「すごーーい! なにこれ本当にお屋敷だ。メイドさん居るし。なんか緊張するかも」

「気楽にしていいよ。貴族の家でもないし」


「コウちゃんたちお帰り。あ、ユイさん開放されたんだね」

 恵が小走りでニ階から降りてきた。


「うん……あの時は酷いこと言ってごめんね」

「いいよ。気にしないで」

 恵は天使の笑顔で返事した。


「あ、その子がユイ? 見たことあるかも」

「4組の子でしょ? 確か美術部の。うちの記憶力ヤバ」

 芽衣子と渚もニ階から降りてきたようだ。


「あ……あの、矢吹君この二人は?」


「あーうん。二人も僕の嫁なんだ」


「嫁って言われるとマジ凄い嬉しい……」

「ヤバいよねマジ!ヤバイ嬉しい」


「ありえないし! ありえないし……これじゃあ、わたしの入れる余地がないよ!」

 唯は突然立ち上がり大声で叫んだ。

「好きなんだから……わたし方が絶対……絶対だもん……だもん……ん」

 徐々に呟き声へと変わっていく唯は相変わらず頭を掻きむしっているし……怖い。


 芽衣子たちは驚いてポカーン状態だ。


 僕もだよ。


 とりあえず唯には客間で寝て貰うことにした。

 部屋割決めてる雰囲気ではなくなってしまったのだ。


 そして妙な空気の中、みんな無口で夕飯食べた。空気が重い。

 食事しながらも、唯は何か言いたそうな目で僕をずっと見ていたのが怖かったよ。


 気にしても仕方ないので、日課であるユリナとお風呂に入り、ベッドに寝かしつけた。

 子供の寝顔見ると、癒やされるよね。天使の寝顔だ。


 では出掛けますか。今日は恵の部屋だ。


『どうやらあの娘は元々ぶっ壊れてたみたいニャ』

 僕の膝の上でボソってみーちゃんが呟く。


「みーちゃん……そんな適当な……でも、薬は飲ませて良かったと思う。唯は縛られてたから垂れ流し状態だったんだよね。何故か特製ポーション飲むと服まで綺麗になっちゃうし」


『おつかれさまニャ。闇の雫は頑固な汚れも一発洗浄ニャン』

「洗剤のCMみたいに言わないでよ」


「コウちゃん、唯さんの事どうするの?」


「どうとは?」

「唯さんはコウちゃんのこと本気で好きみたいだよ」


「僕は唯と仲良くできる自信ないよ」

「確かにそうかもね……私もちょっと自信無いかも」


『そんな事はいいからさっさと交尾始めるニャ。早く終わらせてユリナの所に戻るニャ』


「みーちゃんもうちょっと言い方ってものが……するけど」


「コウちゃん……」

「恵……」


 ニ人は重なり合う。

 すっかり馴染んだお互いの攻防は激しい。時にお互いの急所を攻め合い、時に敵を背後から攻めたりもする。

 だが、戦術は互角でも我が軍には残弾数が限られている。今日は上空からの攻撃で撃沈した。

 敵軍のパイロットは激しい動きで我が砲を上空から攻め続けた。昨日初めて乗ったばかりなのに天才か! 奴は天才だ!


 残弾撃ち尽くした砲は力を失い、我が軍は白旗を上げた。

 戦争の後はいつも虚しい。というかダルい。



◆◇◆◇



 恵に浄化をかけてもらい、キスしてから僕は自室に戻った。

 また起きたユリナを心配させちゃうかもだしね。


『コウイチは鳥みたいに早いニャ』

「みーちゃん言い方」


 僕の横ではユリナがくーちゃんに抱きついて寝ている。二人をなでなでしてからみーちゃんを抱っこして僕も寝ることにした。


 おやすみ。


 ………。


 ………。


 ………。


 あれ? なんか足の方で違和感が……オゥ! ハフゥ……。

 これは渚かな? 激しいし。


 よし、こっそり鑑定してやろう。


----------------------


唯 瀬川 



レベル 3


種族 人間


年齢 16


スキル 絵師


    回復魔法


    アイテムボックス


配偶者 無し 処女


-----------------------


「えっ?」


『どうしたニャ』


「ちょ、ちょっとみーちゃん起きてたなら唯入ってくるの止めてよ」

 僕は小声でみーちゃんに抗議した。

『敵意がないニャ。好意しかない人間を止めたりしないニャ』


「そんなぁ」

「ふぁふひふんおひぃたんれふか?」


「はふぅ……な、何してるの唯」

「ぷはぁ……わたしが一番矢吹君を好きなんです。これは絶対です」


「ごめん。僕は恵と芽衣子と渚が好きなんだ」

「……そうですか。でもわたしは矢吹君が好きです。はむっ……」


「おほぅ……ちょっ待って……あっ」


 ……。


 ……。


「唯、今日は戻りますね。また来ます。好きです矢吹君。その……美味しかったです」


 唯はそう言い残し、客間に戻って行った。


『あの娘も番にしてあげればいいニャ』


「そうは言ってもさぁ……なんか怖いよ唯は」


 僕は天使のような寝顔のユリナを抱きしめて、気だるい気分を癒やしてもらうのだった。


 今度こそおやすみ。

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