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02 プロローグその2

 ヨシッ! やっと自由になったので友の森山(モリモリ)の所に行こう。空中に浮かんだような状態なのに普通に歩けて違和感凄い。


 歩きながら見渡すと、まだヨルさんの眷属さんとスキル選びしてる人も多いようだ。


 モリモリは……あ、居た。眷属さんへ何か必死に言い寄ってるみたい。


「だから、テイマーがいいと思うんですよ! 俺にテイムされてくれません?」


『無理です。死んでください』

「もう死んでるんで! お願いします!」


『いい加減にしてください。削ぎますよ』

「何を!?」


 流石はモリモリと言うべきだろうか。

 眷属さんは茶トラ猫耳美人さんだし、ケモミミ娘大好きの奴にとって理想と言えよう。

 とはいえ、眷属さんマジでキレそうなのでそろそろなんとかしよう。


「モリモリ~僕は決めてきたよ。そっちはテイマーにするの? ていうか、やっぱ行くんだね」

「お、矢吹来たのか! モチのロンだろ行くに決まってる。ケモミミハーレムが俺を待ってる!」


 そんな話をしていると、眷属さんがスッと僕の前に来てその場から押し出されてしまった。


『すみませんが、決定するまで会話はお控えください』

 怒った猫のような瞳で威嚇されてしまった。


 どうやらスキルに関しては他の人が干渉してはダメみたいだね。しばらく大人しくしてよう。


 その後、体感的には一時間ほど眷属さんとすったもんだしていたモリモリのスキルがやっと決定したようだ。眷属さんもため息を吐きつつ去っていった。


「待たせたな! 俺はテイマーと水魔法とアイテムボックスにしたぜ!」

「そうなんだ、僕はアイテムボックスにしたよ」


「他は?」

「アイテムボックスオンリー極振りした」


「は? 極振りなんてできたの!?」

「やったら出来た」


「まじかよ……。そういうの最初に教えてくれよ猫耳ちゃん……」

「いや、僕も自分で気付くまで教えてはもらえなかったよ」


「はぁ、まあいいか。つーか、アイテムボックスだけで大丈夫か?」

「大丈夫だ問題ない。だってモリモリ一緒に行動してくれるんでしょ?」


「おぅ。でも、もう一人ぐらいは攻撃できる人が欲しいよな。水魔法とテイマーががどれぐらい戦いに使えるのかわからんし」


 確かにそうだね……。しかし僕の友達はモリモリしか居ないし、モリモリの友達にに期待するしか無い。命がかかってるので寄生プレイもやぶさかではない。


「じゃ、俺は仲間集めてくるぜ! 矢吹は女子スカウトしてこい」

「僕クラスの女子と会話したことないんだけど」


「一緒に来てくれないと死んじゃう! とか言って泣き落とせばいけるだろ。期待してるぞ!」

 そんな無責任なセリフを残してモリモリは野球部の佐藤くんの所へ行ってしまった。


 僕はどうしよう……。


 ん? なんか視線を感じるぞ。


 あれはギャルグループ三人組だ。三人してこっちを見てる。学校に居た時もよく見られていた。何か気に触る事でもしちゃったのかな?


 グループリーダーポジの仁科さんは美人だけど近寄り難い。

 花澤さんは人当たりいいけど、何考えてるのかわからないフワフワした感がある。

 水野さんはかなり可愛けど普通というかギャルぽくない。何故ギャルグループに居るのか謎。

 ギャルたちがどんなスキル選んだのか気になるけど、聞きに行く勇気なんてない。無論彼女たちをスカウトする気もない。全力で目をそらすのだ。


 そして、あそこに居るのはモテ男の片山君だ。

 泣いている女子たちを慰めてる。

 高2でありながら身長160センチ無いチビで童顔な僕とは違い、片山くんは180センチ以上ある。

 顔もモデルみたいにカッコイイ。

 これで性格も良いというのだから、モテるのは当然だよね。完璧すぎて嫉妬する気も起きない。



「だから、数人ずつバラけさせる意図はなんなのですか!」

 突然聞こえた大声の方を見ると、クラス委員長の相川さんが、人をダメにするクッションみたいなのに寄りかかるヨルさんに猛抗議している姿だった。


『嫌なら行かなければ良い』

「論点をずらさないでください! 全員一緒でいいじゃないですか!」


『合流すればよいじゃろ。話が終わったら皆で打ち合わせでもせい』

「……わかりました。ちなみに1グループ何人で送るのですか?」


『決めておらん。一緒に行きたい者同士適当に固まっておれ』

「はぁ……。もういいです」


 どうやら委員長は諦めたようだ。


 なんかヨルさん冷たいよね。僕にはそんな冷たくなかった気はするけど。眷属絡みのおかげなのかな?


 そうだ、団体移動推進派の委員長なら一緒に行ってくれるかも? 勇気を出して声をかけてみるか。


 腕を組んで何か考え事をしている委員長に近づくと恐る恐る声をかけた。


「あの……委員長」

「……」


「委員長……その、ちょっとイイデスカ?」

「……? あぁごめんなさい。何?」


「良かったら僕と森山と、多分佐藤君も来ると思うんだけど一緒に行かない?」

「ええ、そうね。行きましょう」


 委員長に着いて行くと15人ほど集まっていた。少し落ち着いたので、改めて見渡してみると、さっきまでそこに居た人が何人か消えていることに気がついた。もしかしたら助かって魂が元の体に戻ったのかな? と、キョロキョロしながら考えていると委員長に告げられた。


「田山君や宮下さんはさっきまで居たのに今は居ない。行かない決めた人は退場させられたのかもしれないわ。ヨルという人が全員に向けて死んだと言ってたし、助かった人は居ないと思う」

「なるほど。委員長の推理が当たっている気がする。あ、あの人……名前なんだっけ、今消えた」


「吉田さんよ。なんで覚えてないの」

「影が薄くて……僕が」


「これから共に行動するんだから、ちゃんと覚えて」

「りょ……」


 委員長に怒られてしまった。でも、何とかなりそうでホッとしたよ。

 モリモリは佐藤くんだけじゃなく三人連れて向こうのグループと交渉してるみたいだ。あっちのグループは見たこと無い人が多い。多分他のクラスだと思う。バス数台巻き込んだ事故だったのだろうか。


 おっ、モリモリの交渉も上手く行ったのか、五人引き連れてきた。コミュ力高いなーモリモリ。


 結構な人数が集まってるし、転移の時に僕だけはじかれたりしないか不安になってきたよ。


 そんな事を考えていると、パン! パン! っと乾いた音が辺りに響いた。

 どうやらクッションから起き上がったヨルさんが柏手を打ったようだ。



『全員終わったようじゃの。転移する前に何か聞きたいことはあるか?』



「では、(わたくし)から一つよろしいですか? 事故の現場はどうなってますの? 正直この状態が信じられません」


 お嬢様口調で質問したのは、本当に超お嬢様の七星さんだ。日本のトップ企業七星グループの直系らしい。

 なんでこんな普通の学校来てるんだろう? 薔薇なお姉さまとごきげんようするお嬢様学校行けばいいのに。

 庶民とはかけ離れた価値観の人で、ぶっちゃけかなり苦手だ。



『ほれ、少々過激な映像だから苦手な者は目を閉じよ』



 ヨルさんが指をクルっとすると、テスの大地から事故現場の映像に切り替わった。


 これは……。


 バス二台とトレーラー乗用車色々巻き込んで大変ことになっている。

 他のクラスのバスは炎上してるし、うちのクラスのバスから運び出されたらしい制服姿の遺体が並べられている壮絶な映像が目に飛び込んでくる。


 改めて実感したのか、泣き出す女子や唖然としてる人、目を背けた人も居た。

 大平くんだけはニヤニヤしながら見てるけど多分虚勢だろうね。自分の遺体を見て笑って居られる人がいると思えないもの。


 この状況を作った七星さんもかなり困惑しているようだ。


「申しわけありません……。皆様……聞くべきではありませんでした」


『もう良いかの? では、最後の説明をして送り出す……』


「少しお待ち下さい!」

『なんじゃ急に。びっくりするじゃろ』


「ここを! ここをズームアップしていただけますか?」


 七星さんは何かを見つけたようで興奮している。


『面倒じゃのぅ……。ほれ、これで良いか?』


 すると、とんでもない場面が映し出された。

 僕が七星さんに覆い被さり、壁ドン状態で七星さんと接吻状態になっていた。


「矢吹さん! せ……責任取ってくださいますわよね?」

「無理です」


(わたくし)を弄んでお捨てになりますの? 酷いですわ」

「でも、これって偶然体が重なり合ってしまっただけだし……」


「関係ありませんわ。私の初めてを奪ったのですから責任取っていただきます!」

「勘弁してください」


 こんな不毛なやり取りをしてると突然空間が揺れた。何事かとヨルさんの方を見ると、腕を組んで仁王立ちしているヨルさんがプルプルしている。あれは、もしかしなくてもキレてるのかな? 


『いい加減にせよ! 何時までじゃれ合っておるか。面倒じゃ、もう征け』


 その言葉を最後に、僕たちは使用後のドラ○ンボールの如く、散り散りに飛ばされてしまうのだった。

誤字や矛盾点は見つけ次第修正します。

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