18 水野さん
エーゲ海の様に綺麗な海と街を見下ろす坂で、朝の輝く光を受けてその少女は居た。
「水野さん……」
僕は無意識に呟いてしまった。
「え?」
はっ……どうしよう? ユリナが居る前で事情を話すべきか?
この世界の権力者とかならともかく、ユリナに秘密にする理由はないよね。
「水野さん、お久しぶりです」
「君は誰なの?」
「ヨルさんの独断で、この姿にされた矢吹光一だよ」
「――!?」
水野さんメチャクチャ動揺してる。
両手のひらで口を隠して「私の年収低すぎ!」って感じで僕を見ている。僕の評価低すぎィ。
ユリナは何のことか解らず「?」って顔して僕を見ている。
「本当に矢吹君なの?」
「そうだよ。一宮高校3組の」
「そうなんだ……」
なんだろう? 物凄く動揺しているのは解る。
ただ、芽衣子と渚と出会った時みたいな歓迎されている感じではない。
悲しいけどこんなものだよ。学校ではただの陰キャに過ぎなかった僕は、ギャルグループと水と油なのさ。
少し気になるのは水野さんと今初めて会話したはずなのに、何処かで聴いたことがある声な気がする。思い出せないけど。
「水野さんに聞きたいことがあるんだ。この街に森山が居るらしいんだけど、会ったことある?」
……返事がない。屍じゃないよ。何か考え事しているみたいだ。
「……え? ごめん聞きそびれちゃった」
あ、復活した。
「森山がこの街にいるらしいんだ。知ってる?」
「ごめんなさい。見かけたこと無いよ」
「それならいいんだ。急に声かけてごめんね。じゃあ僕たちは行くよ」
こうして僕の初恋は異世界で終わりを告げたのだった。
「待って! 今は時間無いけど、話したいことがあるの! 今日の夕方冒険者ギルドに来て!」
「は、はい」
それだけ言い残し、水野さんは貴族の屋敷が多いと思われる方に走って行ってしまった。そんな短いスカートで走って大丈夫? あ、パンツ見えた。
所詮布だけど、見えるとちょっと嬉しいと思ってしまうのは男の性なのだ。
とりあえず拒絶されてたわけじゃなくてホッとした。
「お兄ちゃんあの人だれ? ともだち?」
「そうだよ~岡さんたちと同じで僕と同じ学校に居た人なんだ」
「がっこー?」
「この大陸には学校ないの?」
「ユリナはがっこーわかんない」
どうやらユリナは学校を知らないようだ。
ユリナに字の読み書き教えてくれる教師も雇うかな……。
水野さんとの会話も終わり、一息ついた僕たちは緩やかな坂を降りていく。下の方は庶民が住む街みたいだ。
綺麗な街並みを歩いていると、オシャレな店構えのレストラン見つけたので入ってみた。
離れた位置で食器を片付けてる店員さんに「お好きなお席にどぞー」と声をかられたので、窓際の席に着いた。
お客さんもそれなりに居るのに、ホールがワンオペなのか結構忙しそう
しばし待つと、店員さんがメニューを持ってやってきた。かなりの美人さんだ。
「いらっしゃいま……あらー可愛い! うそ、凄い可愛い!」
「あの、メニューいいですか?」
「あーはいはい。どうぞー。お客さんは男の子? 女の子?」
「男ですよ」
「男の子かぁ。ねぇ、チューしていいかな?」
「何言ってるんですか。メニュー見せて欲しいんですけど」
「つれないなぁ。では、お決まりの頃にまた来まーす」
店員さんはふてくさながら去って行った。店選び失敗したかも。
メニューを見ると海産物を使った物が多い。料理の詳細はかなり綺麗な絵で描かれていた。絵なのに美味しそう。凄いな絵師。
僕は大きな海老を使ったグラタンみたいなやつ。ユリナも同じのを頼んだ。
結構大きいみたいだけど、ユリナが食べ切れなければ中身をアイテムボックスに入れればいいしね。店員さんの態度はともかく、料理はかなり楽しみだ。
そうこうしてるうちに、美人店員さんによってグラタンもどきは運ばれてきた。店員さんは何故かその場を去らずにテーブルの横に立ってじっとこっちを見てる。なんか気になるけど、お腹空いてるし気にせず食べることにするか。
「ウマ! 海老の肉がプリプリでうま! そしてこのホワイトソースもコクがあってマカロニぽい何かと絡んで美味い」
「おいしー! こんな食べ物はじめて」
海に近くないと海老は中々食べられそうもないもんね。
良いこと考えた。海の食材をたっぷり買って帰ろう。そして芽衣子と渚に調理してもらう。完璧な計画だ。
しかし、このグラタンもどきは本当に美味しい。思わずシェフを呼んでお礼を言いたくなった。
食後も何かとウザ絡みしてくる店員さんを振り切り、店を出て街に繰り出した。
「お兄ちゃんうみいってみたいー」
「そうだねぇ。僕もちょっと行ってみたいかも。でも、その前に宿決めちゃおうね」
「うん」
貴族街からほど近い綺麗な宿を見つけてそこに決めた。
ニ人部屋で一泊2000ゴルする高級宿だ。
僕がドルフィノに居られるのは七日間の予定。この宿気に入ったら延長すればいいか。
案内された部屋に入ると、流石に豪華。フカフカベッドにおっしゃれーなお風呂もある。テラスからは街が一望出来てセレブ感凄い。
「いいなぁ。ここ住みたい」
「ベッドすごいふかふか! おもしろーい」
ユリナはベッドでぴょんぴょんして遊んでる姿が微笑ましい。
フカフカのソファーで食休みの後、僕たちはフロントに鍵を預けて出かけることにした。
海に向かって歩いていると、綺麗な街並みとは異質の無骨に大きな建物が見えてきた。冒険者ギルドと書いてある。
「海に行く前に冒険者ギルドに行っていい?」
「いいよー」
入り口も無骨だ。門を閉じたら籠城できそう。そんなこと考えながら僕はユリナと手を繋ぎ、冒険者ギルドに入った。
左側が酒場、正面が受付のテンプレみたいな冒険者ギルドだった。
僕達が入ると一斉に視線が集まる。こっちを見て何か仲間と話しているし。絡まれちゃう? テンプレ来ちゃう? ユリナ居るからやめてね。
「きゃわいいいいいいいいいいいいい!」
すると突然騎士風の女性が奇声を上げなから走ってきた。僕はユリナの前に立って身構える。
僕らの目の前に来ると前かがみになり、いきなり僕とユリナをまとめて抱きしめる。そして、ほっぺをチュッチュッしてきた。
「ねぇ、君どこの子? 後ろの子もかわいい!」
「離してもらえますか? 鎧が当たって痛いので」
「あーごめんね! お姉ちゃんはしゃいじゃった」
なにそのあざといセリフ。
「あの子供らエリーシア様に絡まれてるぞ」「おいおい死ぬわ。あのガキ」「羨ま死ね!」「あの幼女たち可愛いなぁ……グフフ」
なんか不穏なセリフが聞こえてきた。怖い。帰りたい。
「失礼ですが、あなたは?」
「私はドルフィノ、ローズ隊、副隊長エリーシア・マルクテスよ」
「僕はGランク冒険者エリオ。この子はユリナです」
「そうなんだー。僕って言っているということは男の子?」
「はい」
「うーん。見れば見るほど可愛い。ねぇ、私の伴侶にならない?」
「なりませんし、用があるので失礼しますね」
「あーちょっとちょっと! 少しぐらい考えようよ。そうだ、冒険者ギルド案内したげようか?」
「いえ、結構ですので」
断ったのについてくる。なんてマイペースな人だ。鎧着た美人女騎士はオークとでも戯れていて下さい。
とりあえず、くっ殺女騎士はスルーしてカウンターの列に並んでいると、ピークが過ぎたのか受付にはすぐに来られた。
受付の人は残念ながらマッチョなおっさんだ。
「素材を売りたいのと、ここで冒険者をしていると思われる人物を探してます」
「買取はあっちね」と手を向けた方向を見ると、ロビーの一角にそれらしきゾーンはあった。
「それで探している冒険者の名前は?」
「サトシ・モリヤマです」
名前を聞いた受付のおじさんは、僕の後ろにいるエリーシアさんに目を向けた。
「サトシ・モリヤマと、あなたはどういう関係なの?」
ん? なんか急に真面目モードになったぞ。剣呑な雰囲気だ。
「元住んでた所で友達でした。はぐれてしまったのですが、ここに居ると聞いて会いにきました」
「ふーん。ここに居るって誰に聞いたの?」
あれれ……なんか取り調べみたいになってきたぞ。取り調べするならカツ丼を用意してもらいたい。
あ、ヨルバンに帰ったら芽衣子と渚にカツ丼作ってもらおう。想像したら急に食べたくなった。
「何で黙ってるの? ちょっとこっち来て」
ユリナも居るし、くっ殺女騎士を振り切って逃げる訳にもいかなくて、僕らはエリーシアさんとやらに連行されてしまった。
◇◆◇◆
ここはローズ騎士団の施設らしい。客間みたいな所に通された。拷問部屋じゃなくて良かった。
ユリナは怖いのか僕にずっと抱きついて顔を伏せている。よろしくないぞ。うちの子をこんなに怖がらせるなんて。
「それで、情報源はどこなの?」
「ちょっと待って下さい! モリヤマが何かやったんですか?」
「まぁいいわ。彼はテイムした魔物をけしかけて戦争に同行していた青の騎士団と対立したの。死者こそ出なかったけど結構な被害と聞くわ」
ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ何やってんのモリモリ!
僕は驚愕の表情で鼻水を垂らした。
「その表情を見る限り、本当に何も知らなかったみたいね」
「はい。ですが、モリヤマはとても良い奴なので、そんなことすると思えません」
「良い奴ね。ある意味そうなんだろうけど、だからと言って無罪放免とはいかないわ」
聞いた話をまとめると、攻めてきたヒイロ帝国の女獣人兵士をかばって青の騎士団と対立したらしい。
あーなるほどね。なんとなく解っちゃったかも。ケモミミ好きだもんね。
ユリナを会わせるのがちょっと怖い。モリモリにお義兄さんとかお義父さんと呼ばれる日が来たら嫌だぞ。
「そもそも一騎当千と言われるドルフィノの騎士達が、一人の若いテイマーに遅れを取るものなんですか?」
「……痛い所をついてくるわね。強かったのよ。彼の連れてる狼が。小さいけどフェンリルだしね」
「フェンリル! 居るんですか!」
「そりゃ居るでしょう。遭遇するのは稀だけど」
なんか呆れ顔で僕を見ている。この世界では常識なのかな?
「それでモリヤマはどうなったんですか?」
「逃げたわ。東の山にね。現在は討伐隊を出すか検討している所よ」
マズイな……。これはマズイ事になってるぞ。
「事情はわかりました。ですが、僕は彼を探しに来ただけで他は知りません。帰らせてもらいますね」
「ダメよ。彼がドルフィノに居ると君に教えた情報元をまだ聞いてないわ」
まいったなぁ。エルメスさんに聞いたと言って大丈夫かな? 迷惑かけちゃうかもだしなぁ……。ごまかしながら言うしか無いか。
「えーっとですね、ヨルバンのギルマス知ってます? 彼女は僕のコレなんですよコレ」
僕はニコニコしながら小指をピッと立てた。
「えぇぇ……それは本当なの?」
「ホントホント」
「……ハイエルフって命知らずなのね」
「はい?」
「だって……吸われちゃうんでしょ? 色々と……」
何か急にモジモジしだしたぞ。ちょっと可愛い。
「僕はハイエルフですからね。余裕ですよ」
「ふーん……」
「では、帰らせてもらいますね」
「ダメよ」
「って、今度はなんですか?」
思わずずっこけそうになった。
「私の伴侶になる話がまだ終わってないわ」
やかましいわーーって感じで騎士団の施設から逃げてきた。
ほんとにいい加減にしてほしいぞ。
もうお昼過ぎたし、お腹も減ってきたよ。海の方に歩いていくと海鮮串が売ってたのでユリナと食べた。
うまい! 新鮮な海の幸はこんなにも美味しいんだね。日本の冷凍のものとは一味違う。ユリナも夢中で食べていた。
「うみ、きれーだねー。あ! あれなに?」
「ほんとに綺麗な海だね。それはカニだよ。指挟まれるから触るなら気をつけて」
ユリナはカニとか貝で遊んで楽しそうだ。
ここだけ見ると凄い平和なのだけど、モリモリの事を考えると胃が痛くなる。
どうしたものかなぁ……。僕は砂の城を作りながら考え込んでしまうのだった。
「お兄ちゃんすごーい」
気がつくと立派な砂の城ができていた。
「おー! 会心の出来だ!」
しかし、ザッパァァァァンと大きな波が来て城は攫われて行った。
……虚しい。
そんな憂鬱な気分を紛らわせるように、ユリナと何時間も海で戯れた。
もう夕方だから水野さんに会いに冒険者ギルドに行こうか。
◆◇◆◇
冒険者ギルドに行くと入り口の近くで水野さんは待っていた。
水野さんは何か考えてるみたいで俯いていた。
「水野さんおまたせ」
「あ、コ……矢吹君」
「どこで話する?」
「ニ人きりになりたい……な」
「それは無理だね。ユリナ居るし」
「そうなんだ……。その子は矢吹君とどういう関係なの?」
「妹みたいなものかな」
「お嫁さんだもん!」
ユリナは僕の後ろから顔を出して水野さんに牽制しだす。
「そうだね。大きくなってからね」
「うん!」
「凄く懐かれてるんだね」
水野さんは優しそうな笑顔で笑った。
「とりあえず、みんなで夕食にしようよ?」
「うん。わかった」
僕は水野さんとユリナを連れて、朝に行った店とは雰囲気が違う落ち着いた感じのレストランに入った。
「矢吹君こんな高そうな店無理だよぉ」
「いいからいいから。僕はこう見えて高所得なんだ」
好きだった子を前にしてちょっとドヤ顔してしまった。
そこそこ美味しい食事も終わり、ここでの暮らしの事等を色々聞いた。
ギャルのニ人とはバラバラに飛ばされ、一人でドルフィノに来て今は貴族相手の髪の手入れの仕事をしてるらしい。
水野さんの取ったスキルはアイテムボックス、美容、浄化で、スキルを活かし美容師で生計を立ててたみたい。意外にたくましいよね。
僕の事も話した。ヨルバンに住んでいて、岡さんと伊澤さんと合流したこと。森山を探しに来たこと……等など
屋敷を手に入れた事も自慢げに話しちゃった。
岡さんと伊澤さんとそういう関係になったことは言えなかった。
なんだろうこの気持ち。好きだった水野さんにそういうの知られたくないと思ってしまうとか酷い奴だよ僕は。
しばし会話を続けていると、ユリナがウトウトしてきてしまったので、解散することになった。
「私も矢吹君の宿に行っていい? もう少し話しておきたいことがあるの」
「わかった。話はユリナを寝かしつけてから静かにね?」
「はい」
宿に着くと水野さんは固まってた。結構な高級宿だもんね。
受付の人に水野さんを入室させる事を断ってから部屋に戻り、フカフカのベッドにユリナを寝かせた。今日はいっぱい歩いたから疲れちゃったよね。
なるべく静かにしたいから反対側のベッドに僕と水野さんはニ人で座っていた。ドキドキする。
「あのね、私のことは覚えてないの?」
「覚えてないとは? 覚えてるよ。水野さんのことは」
「じゃなくて、中学の時の事は?」
「水野さんと中学の時に会ってたっけ?」
「やっぱり私のことわかってなかったんだ……。五十嵐恵って子覚えてる?」
「うん。中学の時に仲が良かった。突然居なくなっちゃったけどね。水野さんの友達?」
「私だよ。私が五十嵐恵。両親が離婚して、すぐ再婚して引っ越したの」
「うそっ!」
僕は驚いて大きな声を出してしまった。幸いユリナは起きなかった。
僕の知ってる五十嵐さんは凄いガリガリで、髪の毛いつもボサボサな上によく体に痣とか作っていた。目も落ち窪んでいたし、今の水野さんとは完全に別人だった。
話を聞いていくと、生々しい事情が見えてきた。
五十嵐さんは当時、実の父親から頻繁に暴力を受けており、食事もロクに与えて貰えなかったみたい。
母親はなんとか庇ってくれたけど、男の暴力には屈するしか無かったらしい。
そんな事があったとはつゆ知らず、僕は五十嵐さんとよくゲームで遊んだ。僕の家にも毎日遊びに来るようになったし、みーちゃんも可愛がってくれていた。
だけど、みーちゃんが死んで僕が引きこもってしまい、遊びに来た五十嵐さんを追い返してしまった。それ以来彼女と会うこと無かった。
「どうしても聞きたかったの。嫌われちゃった理由。私ガリガリでブスだったし、それでかなって思って、少しでも可愛くなれるように頑張ったの」
「違うよ! あの時追い返してしまったのは、みーちゃんが死んで誰とも会いたくなかったんだ。五十嵐さんの前でも泣いちゃいそうで」
「そうだったんだ……。私空回りしちゃたね」
「ごめん! 嫌ってないから。むしろ好きだったし。あの時は恋とは違うけど」
「私はね、コウちゃんが今でも好き、ずっと好き。姿が変わっても好きだよ」
「水野さん……」
まさか本当に両思いだったとは、こんな事ってあるんだね。
そして僕は迷っていた。彼女を受け入れる事は芽衣子と渚を裏切ることになる。
「ごめん。もう僕にはお嫁さんが居るんだ。ニ人もね。岡さんと伊澤さん」
勇気を出して告げた。これでいいんだ。
「なんとなくそんな気がしてたよ。ニ人の事を話したくなさそうだったもん」
「ごめん」
「でもね、私はコウちゃんと一緒に居たいよ。もう離れたくない」
僕に抱きついてきた水野さんは静かに泣いて震えていた。
その夜、僕は水野さんと体を重ねてしまった。不義理だと頭では解っていても、どうしても水野さんを拒むことができなかった。
実は僕が水野さんの事を好きだったのを伝え、思いの丈をぶつけ合い、何度も。
お互いの口を口で塞ぎ合いのサイレントプレイはそれはそれで燃えるものがあった。
◇◆◇◆
「お兄ちゃんおきてよー!」
「うぅぅん? ユリナおはよー」
「なんで昨日のお姉ちゃんと一緒に寝てるの?」
しまった。そのまま寝てしまったぞ。浄化かけてもらった後に服は着たのが幸いだが。
「あれから色々話が盛り上がっちゃって、話疲れて一緒に値落ちしちゃったみたい」
「じゃあユリナも一緒に寝る」
ユリナはもぞもぞとベッドの中に潜り込んでくる。普通なら慌てるかもだけど、大丈夫。色んな汁と血で汚れたシーツにも浄化かけてもらったので完璧だ。
「よーしよしよし」
やましい事をごまかすようになでなでしまくる。
「お兄ちゃんとユリナちゃんはほんとに仲いいよね」
「うん!」
「私とも仲良くしてね? お兄ちゃんのお嫁さんになるから」
「ユリナもお嫁さんだもん!」
水野さんいきなりぶっ込んできた! やめて貰えますか?
「じゃあニ人でお嫁さんになってお兄ちゃんに可愛がってもらお?」
「えー? うん。でも、ユリナを一番かわいがってほしい」
「今も一番可愛がられてるから大丈夫だよ」
「そかなーエヘヘ」
ふぅ……。
一応和やかな雰囲気になって助かった。水野さん子供あやすの上手いな。
朝食を摂りに下に降りていくと、受付の人が少しぎこちない歩き方の水野さんを見て、ゆうべはお楽しみでしたねって目で見てきた。
僕はそれを華麗にスルーすると、優雅に窓際で朝食を摂った。
うん平和だ。
モリモリの事は今だけ忘れよう。今は三人で仲良くしたい。
評価やブックマークありがとうございます!書き貯めもなくその場の思いつきで一日一話書いてる作品ですが、
おかげ様でもっと続けたい気持ちが湧いてきました。
誤字報告もありがとうございます!話数が増えていくにつれ見逃してしまう事が更に多くなってきました。
また不備がありましたらよろしくおねがいします。