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01 プロローグその1

 ……ん?

「あぁ……まだ着かないのか」

 バスの座席で変な体勢で寝てしまい、痛くなった首をほぐしつつ窓の外を見る。


 修学旅行なんて正直参加したくなかった。だって面倒くさいし。旅行とかほんと面倒くさい。家でゲームしてたいよ。

 まぁ、来てしまったものは仕方ない。スマホでやろう小説でも読むか。

 異世界に居ながら日本と通販出来ちゃう系の話が好きだ。あとは無限に入るアイテムボックスで家とか持ち運べちゃう系も大好き。でも、今一番熱いのはTS系だよね。わし可愛いは楽しそう。


 お気に入りの作品が更新されてるといいなぁと思いつつ、スマホをポケットから出そうと体を起こしたその時、激しい衝撃と浮遊感に襲われた。




 意識が戻ると、まるで宇宙空間のような真っ黒な世界に居た。真っ黒なのに見渡せば同級生も居るのが見える不思議空間。友達の森山と目が合ったので、そっちに行こうかと思ったけど足が動かない。



『突然すまんの。わしは名はヨル。テスの管理者じゃ。簡潔に説明すると主らはバスの事故で死んでおる』


 

 衝撃の事実を語り出したのは、少し離れた場所にいきなり現れた着物姿の黒髪ロングの美人さん。しかも猫耳ぽいものがついている。

 後光がさしてるせいで、猫耳と黒髪の広がる輪郭が神秘的だ。猛烈にモフりたい。


『ちなみにテスとは、主らから見たら異世界じゃな』


 おぉ……まさかこんなテンプレに遭遇するとは……。ずっと夢見てきた展開ではあるけど、実際体験すると怖い。運動神経ゼロの僕が異世界で無双できるとは思えないし。


『言いたいことはあるじゃろうが、先ずは、わしの話を聞くがよい』


 女神的ポジ? のヨルさんが両手を広げると黒かった世界が白くなり、航空写真を見るかのように美しい大地が真下に広がった。怖い。足がすくんでしまう。


『真下に見えるのがテス最大の大陸ヨルネルじゃ。主らにはそこへ行ってもらう』


 もしかして、ここに居る全員行くのかな? ていうか先生も居るし。


『じゃが、強制ではない。行きたくない者は通常通りの輪廻に入ることになる』


 え? 行かなくてもいいの……? なら僕は……。


『行く者にはわしから恩恵を授ける。現地の言語は理解できるようにしてあるので安心せい。数人ごとに分けて各地に転移させる予定じゃ。ぼっち転移でもかまわん。好きにせよ』


 そしてヨルさんが両手を下ろすと体が自由になった。まぁ足は動かないんですけどね。


「どういうことだか説明しろよ! どこだよここは!」

 いわゆる不良の大平君が早速キレてるね。混乱してる声や、すすり泣く声も聞こえる。


『ここは何処でもない。わしが作った空間じゃ。ほれ、詳しいことは眷属に聞け』


 ヨルさんが左右に目配せすると何処からか矢羽根柄の和服ネコ耳お姉さんたちがゾロゾロ出てきて皆の所へ向かった。


 ちなみに僕の所には誰も来ない。イジメ?


 ちょっと泣きたくなってきた頃、ぽつんと一人立ってる僕の元にヨルさんが優雅に歩いて来た。


『矢吹光一、お主は是非行ってもらいたい。我が眷属の頼みでもあるからの』

「え? 眷属って何のことですか?」


『わしの眷属がお主に大層世話になったそうじゃ。出来るならばもう一度一緒に暮らしたいと申しておる』

「心当たりが無いので、人違いなのでは?」


『いや、間違いなくお主じゃ。本当に心当たりは無いか? 7年も一緒に暮らしておったと聞いたが』

「7年……」


 まさかみーちゃん?


 僕が小学生の時に、道端で鳴いてる産まれたばかりの三毛猫を拾ってうちで飼ってたみーちゃんだとしたら辻褄は合う。

 思い返せばみーちゃんは異常な程賢かった。多分人の言葉を理解していた気がする。


 僕はそんなみーちゃんと毎日一緒に過ごして育った。ご飯の時も、寝るときも、ゲームしてる時もいつも一緒だった。


 僕が中三の時に、いつも通り玄関で学校に行くのを見送ってくれたみーちゃんだったが、その日は何故か寂しそうに鳴いた気がした。


 学校が終わり、部屋に戻るといつも僕が座る座布団の上でみーちゃんが冷たくなっていた。

 そっと抱き上げて冷たくなったみーちゃんを膝に乗せ泣いた。枯れるほど泣いた。


 今思い出しても涙がでる。というか既に泣いてるし。ティッシュ欲しい。


 もし、みーちゃんにもう一度会えるのだとしたら異世界に行くのを躊躇わない。


「眷属とはみーちゃんの事ですよね? だとしたら行きますよ」

『さぁの。会えばわかる。わしからはそれ以上言えん』


「名前を言えない事情でもあるのですか?」

『それ以上聞くでない』


「……わかりました。でも、その前に友達と話をさせてもらえますか?」


『先にスキルを9個決めよ。その後いくらでも話すが良い。最終決定するまでは何度でもやり直しできるからじっくり選ぶと良いぞ』


 ヨルさんは僕に向けて人差し指を向けるとSF映画でよく見るような立体透明パネルが現れた。


■魔法スキル


■体術スキル


■生産スキル


■特殊スキル


●リセット●


 試しに魔法スキルのタッチパネルを押すと火魔法~爆死魔法まで色々出てきた。

 てか、爆死魔法ってなんだよ! 怖すぎるだろ。

 あ、やはり回復魔法とかもあるのか……これは取るべきか?


 体術スキルを押すと剣術、槍術、盾術、の他に闘気術という素手で戦うぽいのと色々ある。

 物理攻撃ならなんでもあるようだ。ネタスキルなのか、ふるちん拳法なんてのもある。


 生産スキルも見ておこう。栽培スキルとか鍛冶などの想像通りのスキルばかりだ。


 特殊スキルは……定番の錬金術やアイテムボックスなどもある。

 除霊師とかかっこよさげなスキルもあってちょっと惹かれるな。

 お! テイマーがある。このスキルはロマンあるよね。


「お尋ねしたいのですが、頂ける恩恵というのはスキルと別なのですか?」

『そうじゃな。わしの加護を授ける』


「それはどのような効果があるのかお聞きしても?」

『異性にモテるようになるぞ』


「マジですか」

『半分マジじゃ』

  

「半分……? ちなみにですが、日本の物を取り寄せる通販スキルって無いですか? 一覧には無いようですが」

『無いな。じゃが地獄通販はあるぞ。悪人を殺して手に入れた魂を対価に地獄のアイテムを通販できる』


「なにそれ怖い」

『あまりにアレなので、わしの所で扱わないつもりで居たが、取ってみたいか?』

「遠慮します」


 なるほど……。そうなると気になるのは錬金術とアイテムボックスと回復魔法は鉄板かな。


 ポチポチと色々なスキルを押してると、同じスキルを間違って二度押してしまった時にスキルの横に+1という数字が現れることに気が付いた。


「もしかして+8まで極振りもできるということですか?」

『よく気づいたの。その通りじゃ。複数取るも特化するのも好きにせよ』


 うーん……。これは悩む。最近は極振りが流行ってるから、そうするべきだろうか? 器用貧乏よりはいいのかな?

 僕は鈍くさいし不器用だから攻撃も生産もうまく出来る気がしない。ただ、どれが自分に合っているのかも正直わからない。困ったな。


『悩んでおるのか? おすすめはアイテムボックスじゃぞ。これは外さない方が良い』

「現地では珍しいスキルで、目立ったりヤバイ連中に拉致されて利用されたりしないですか?」


『そこまで珍しいスキルではないので安心せい。それにアイテムボックスを取ってもらわんと眷属からの預かりものが渡せんしの』


 みーちゃんが何か用意してくれたのかな? だとしたら嬉しいな。


「わかりました。アイテムボックスは決定で。いや……もうアイテムボックスだけでいいです。+8極振りします!」

『随分と思い切ったのぅ』

「正直憧れてましたからね。アイテムボックスは」


『お主がそれで良いなら決定じゃな。では、友と話してくると良い』


 そしてヨルさんの目が金色に輝くと、僕の体はやっと自由になった。

みーちゃんが死んだ話は実体験です。当時悲しすぎて5キロ痩せました。

地獄通販は別の話として投稿するつもりです。

 

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