ダンジョン遠征の準備が俺の仕事②
『拠点となる街とダンジョン付近の前線基地とを繋ぐポータルの設置』
これは前線において戦力外通告を受けた俺に任された唯一の任務であり、けれども俺にしか出来ない非常に重要な任務だと考えていた。
俺たちが拠点としている北方辺境の街とダンジョン付近をポータルで繋ぐことによって、攻略組が容易にダンジョンへと遠征でき、前線基地となるベースキャンプの設営においても物資の輸送が格段に早い。
もしも怪我を負う者が出た場合、早急に街へ帰し治療を行うことも可能だ。
それに俺には能力不足で攻略組へ同行することが出来ない自分に負い目があった。
俺がこの任務を遂行するこで、彼らが遠征によって攻略前から疲労を負うことなくダンジョンへ挑戦でき、ダンジョン攻略後の疲労の中、街への帰路につくこともない。
俺もクラスの一員として、みなに貢献していると胸を張りたかったのである。
2つ目のダンジョン攻略に向けて、ポータル設置の初任務の際は、公国軍の一小隊の護衛のもと、ダンジョン付近に出口のゲートを設置し、首尾は順調だった。
3つ目のダンジョン攻略も同様だった。
しかし、4つ目のダンジョンから雲行きが怪しくなってきた。
護衛の小隊が縮小されたのである。
いま俺たちが挑戦しているダンジョンは未だ実践訓練の範疇であり、それはダンジョン内部だけでなく、その周辺においても同様である。
むしろ周辺部において魔物の類の出没は皆無と云っていい。例え魔物が出たとしても、強敵であることはまずありえない。
つまり、ただでさえ初心者向けのダンジョンの、しかもその周辺までしか立ち寄らない俺の護衛に一小隊を派遣することは無駄な労力だと判断されたのだ。
確かに軍属ではない街の人々も遠出するくらいの場所であったし、街と街とを移動する行商人の方がその身一つで俺より危険地帯に踏み入ることもある。護衛縮小は当然のことかもしれない。
むしろこれまで任務に不慣れな俺に配慮してくれていたのだろう。もしも魔物に遭遇することがあっても、自分で自分の身くらい守れなければ、どのみちこの世界で生きていくことは出来ないだろう。
そして今日、異世界に転移してちょうど半年。
6つ目のダンジョン攻略に向けてのポータル設置任務において、遂に軍の護衛は無くなった。
俺は出発前、街の城門前(といっても都ほど立派なものではない。)で荷物の最終確認を行いつつ、人を待っていた。
軍の護衛こそいないが、一人で任務を行うわけではない。
もう一人、同行者がいるのだ。
「亘くん。」
ちょうど荷物の確認を終えたところ、後ろから呼びかけられた。
振り向くと、少女が旅支度を整えた恰好で立っていた。
首元までのショートカットの黒髪は、クセ毛なのか所々うねっており、目元を隠すように伸びた長い前髪と黒の角眼鏡のせいで、その表情はあまり伺い知ることが出来ない。
「ごめん、お待たせ。」
同行者の『明野 蛍』である。
やっと主人公以外の人物を出せました。
台詞が書けました。