ダンジョン遠征の準備が俺の仕事①
この世界にはいくつものダンジョンがある。
クロムベルン公国は数百年に亘り、魔王軍との戦いが続いている。ダンジョンは長き戦いの遺物であり、それはかつての魔王軍の拠点であった。
洞窟、魔塔、地下迷宮、魔城…。それらを総じてダンジョンと呼ぶ。
ダンジョンは火山のようなもので、かつての主を打ち滅ぼした後も、その活動は完全には休止しておらず、ダンジョン内部では絶えず魔障が噴出している。
魔障より魔物が生れ落ちる。また、主亡き後もその配下であった魔人や魔物といった類の残党が息を潜めていることもある。
クロムベルン公国では国内に点在するダンジョンの攻略が今でも盛んに行われているのだ。
攻略には勿論、その周辺の村や街を魔障の被害から守ることが目的にある。
しかし、危険を冒してまでダンジョン深部まで遠征するのには、もう一つ目的があった。
ダンジョンに残された武器や財宝、魔道具、魔導書といった遺物の獲得である。
それらの遺物は魔王軍との戦いを有利に進める為に必要不可欠であるし、公国の正規軍以外にも、冒険者といった在野の者たちがダンジョンに挑むことは国を挙げて奨励されていた。
転移者の俺たち光聖学園2年C組、救世主御一行も漏れなくダンジョン攻略において期待の一軍となったわけだ。
今から2ヵ月前、つまり転移してから4ヵ月後、俺たちは神殿のあるクロムベルン公国の都から、北方辺境の街へ、公国の一兵団と共に移った。
都にて4ヵ月間、この世界の成り立ちや魔法の基礎学習、基本戦闘、スキル練度向上といった、この世界を生き抜く為の様々な訓練を行った俺たちは、遂に実践訓練の段階に至ったのである。
なぜ都から北方辺境の街へと来たかというと、北方辺境のダンジョンは所謂「初心者向け」ということだった。
公国軍の新兵や駆け出しのひよっこ冒険者の多くが、これら北方のダンジョンから攻略を始めるらしい。
初めてのダンジョン攻略には俺も同行したが、如何せん戦闘に役立つスキルではないし、武器や体術での戦闘においても都での訓練の甲斐なく、…つまりは俺は足手まといとなっていた。
二つ目のダンジョン攻略から俺は後方支援へと転属され、このポータルのスキルをいかんなく発揮する為、文字通り馬車馬のように働かされることになる。
俺に任された、そして唯一出来る任務というのが、
『拠点となる街とダンジョン付近の前線基地とを繋ぐポータルの設置』、である。