亘 隼人②
俺が神より授けられたスキル、『ポータル(異空間転送)』。
これは空間に干渉するスキルだ。そう聞くと、目にも止まらぬ速さで移動し、颯爽と戦う姿を想像するかもしれない。
俺自身、このスキルを授かった時は内心、歓喜したものだ。運動神経は並みかそれ以下で、元の世界では運動部にも所属せず目立つ活躍もなかった俺だが、クラスでもトップカーストのスキル保有者になったと思ったからだ。
しかし、これは俺が思い描くようなスキルではなかったのだ。
ポータルには、いくつかのルールがある。
ルール① 異空間転送には入口と出口のゲートを設置しなければならない。
ルール② ゲートは入口、出口の順でしか設置出来ない。
ルール③ ゲートは一方通行で双方向の移動は出来ない。
ルール④ ポータルは3つまでしか維持出来ない。
ルール⑤ 俺自身はポータルを通行出来ない。
つまり、このスキルはテレポート(瞬間移動)ではなく、俺自身もテレポーターではなかったのだ。
転移先には出口のゲートを設置しなければならないので、俺が行ったことのない場所にポータルを繋げることは出来ず、俺自身が転移したい場所に一度出向く必要がある。
また、出口から入口に移動することは出来ないのである。
クラスメイトが攻撃系スキルや防御系スキルといった魔王軍との戦いに適したスキルを授けられる中、戦闘に向かない俺は早々に前線では戦力外となり、後方支援に退くことになった。
とは云え、一度ポータルさえ開通すれば、維持する限りはどれだけ距離が離れていても一瞬で人や物を転送出来るので、全くの役立たずというわけではなく、兵站の輸送という面において、このスキルは適任だった。
それゆえに、ここから俺の地獄が始まるのである…。