亘 隼人①
光聖学園2年C組が異世界へ集団転移してから、今日でちょうど半年の月日が経った。
朝のホームルーム中に突然、窓からの強烈な光に教室が差し込んだかと思うと、俺たちは異世界の神殿に召喚されていたのだ。
ここはクロムベルン公国。数百年という長きにわたり、魔王軍の脅威に立ち向かう大国だ。
その戦況は一進一退であり、神官たちは神の信託を受けるべく神殿で祈祷を行っていたところ突如、神殿が光に包まれ、俺たち2年C組の面々が召喚されていたそうだ。
俺たちは魔王軍との戦いの為に神より遣わされた救世主という扱いを受け、元いた世界へ戻るすべもない俺たちは、その戦線に身を投じることになったのだ。
この世界の人々はみな、10歳を迎えると神からその力の一部を授けられる。所謂、剣と魔法の世界だ。
神から与えれた奇蹟の能力、これを通称「スキル」という。
そのスキルについては、俺たち転移者も例外ではなく、すぐに儀式によって神から奇蹟を授かることとなった。
こんなゲームやアニメみたいな世界に来て、元の世界では平凡な学生だった俺も変われるんじゃないか、破滅の危機から人々を救う勇者のような存在になれるんじゃないか、そんな淡い期待を抱いたものだ。
しかし現実はそんなに甘くない。平凡な俺に授けられたスキル。
それは…、
『ポータル(異空間転送)』だった。