五話 帰還とパーティ
五話改変です。一話ズレた状態なので元は四話の部分ですが気にしないでください。
ハンガーに船を置きモビーディックへと向かうツクモ達。喫茶店に入っていく。中にはジークの他に三人、ジークと同じテーブルについていた。二人見覚えのある顔と一人見覚えの無い子がいた。
見覚えの無い子の容姿は、茶色く腰まである長い髪をゆらしピンク色にも見える赤紫色の瞳がツクモ達を見ている。淡い赤色のベレー帽を被り、帽子と同じ色の長袖とキュロットスカートを履いたエルフの女子で、見覚えのある方はチェッカーとシュリーだった。
「えーと…何故にチェッカーとシュリーと知らない子がジークと一緒にいるの?」
「ここに来たらこの状況だった。としか言いようがない。俺じゃなく用はお前らにあるらしい。」
「へー、用ですか?聞きますよ。」
「さっきぶりだね?ツクモくん。」
「うん、さっきぶり。あぁ、そうそうチェッカーにお礼言っとく、ありがと。」
「どういたしまして。その様子だと無事に仕返しは済んだみたいだね。それで用事なんだけど、この子達が何処かのパーティーに所属したいらし。」
「それでうちのパーティーですか?俺はいいですけど…。」
ツクモがレッサー達の方へ顔を向ける。
「俺は構わんよ?」
「俺も。飲み物は?」
「同じ意見。」
「私もツクモに任せるよ。」
「満場一致と言うことでいいですよ。でも基本、自由活動で不定期にログインだけど大丈夫?」
「うん、大丈夫。問題ないよ。入れてくれるだけでもありがたいし。」
「そうか。それよりシュリーの隣の子は誰かな?」
「あっ!自己紹介が遅れてごめんね。私はフィオ。シュリーのリア友なんだよ。」
「どもです。チェッカーから多分聞いてると思うけど改めて、ツクモです。」
「レーション。」
「カフィー。」
「ヨゾラです。」
「レッサー。」
「あれ?君、二人新しい子も居る様だけど。」
「あぁ。それは後でゆっくり話すよ。」
それからヨゾラやレッサーの事を話しつつ、ジークの奢りでお祝いのケーキを食べている一行、のんびりとした平和な時間が続く。店の中は彼らだけで他の客が来る様子もない。内緒話をするのには打って付けだ。
「そんなことが、結構大変ですねキミ。」
「ふんなふぃとごとむふぁいに。」
「飲み込めぇ!飲み込んでからしゃべれ!」
「んっ、そんな人ごとみたいに。いやまぁ実際実害を被るとしたら俺だけかも知んないけど。」
「いやそんな事は無いと思うぞ。俺たちも一応はクレスコのメンバーだし、巻き込まれる可能性は高い。」
「……。なんか面倒くなって来たのでこの話はここまでという事で、楽しい話でもしましょうか。」
「じゃあ何を話そうか?」
「黒歴史でも話す?」
「ツクモ、それは自分の首を絞める事になるが?」
「あっしまった…。」
「じゃ!ツクモの黒歴史から!ツクモが言わなくても俺が言う。」
「言わんこっちゃ無い。レーションはこういう時行動が早いからなぁ。」
「墓穴を掘ってしまった…。」
そんな感じでツクモの黒歴史がバラされ、他にも話が盛り上がり、祭りの時間まで暇を潰すこととなった。ちなみにツクモの黒歴史にレーションはよく関わっている事が多く事細かく紹介が明らかにされたのです。
祭が始まる数分前。一行は噴水広場に集まっていた。他のプレイヤーも続々と集まってくる。そして空も傾き始めた頃、街に街灯の明かりが灯り、楽しげな音楽が流れ始めた。
「おぉぉ。戦闘続きでよく空は見てなかったけど綺麗だな。」
「夜の街もいいものだな。街がいつの間にか装飾されててあっちこっちに、食べ物が豪華に盛られた皿が置かれたテーブルとかあるし。」
「ここ中央広場だけじゃなくて、闘技場辺りではダンコンとかミスコンそれに、舞台とかもやってるようだぞ。」
「商業ギルドの奴らも色んな催し物を沢山だしてるみたいだし、楽しみただな。」
「ツクモはミスコン行ってきたらどうだ?」
「絶っっ対、行かん!」
「ダンコンは?」
「なぜにそこまでして俺をコンテストに出したがる。」
「「えっ?絶対面白い事になるからだろ。」」
「ふっざけんな!これ以上恥かいてたまるか!」
「「「もう遅い。」」」
ツクモがミスコン、ダンコンに出されそうになっていた時、花火が打ち上がる。その後に空に色とりどりの風船が舞い上がっていく。そして、大きなホログラムモニター表示がされ、それから白と赤の小鳥とアンドロイドの女の子が登場する。アンドロイドの女の子は緑色の髪に青い瞳、軍服を着ている。白と赤の小鳥は軍帽を被りタキシードを着ている。
『さぁ!みなさーん。始まりました!ブルーメタルロボティック祭。私はこのゲームの看板娘!告知娘ちゃんでーす。そして私の隣にいる小鳥さんは…。』
『告知鳥だぞ!ひれ伏せ人間ども。僕こそが至高の告知鳥だ!僕を崇めよ!』
『はい!鳥ちゃんは置いといて本題に入りましょう!』
『!?』
「あの鳥可愛いなぁ。」
「「「えっ!マジ?」」」
ブルロボの看板である告知娘と告知鳥が行う放送が唐突に始まった。告知ちゃんは地味に告知鳥ちゃんに対して辛辣な部分があるようだ。
『今回はブルロボ祭という事で!沢山の方々が催し物を出して頂いたり、私達も沢山のコンテンツをご用意させていただきました!ありがとうございます。』
『ありがとね。僕も嬉しいぞ!』
『そして今回のイベント!ブルロボ祭の説明でーす。』
『君たちはこの金のメダルを集めて、ブルロボ祭限定のアイテムをゲットするんだ。』
『メダルは色んな出し物に参加すると貰えますよ!何と!ダンコン、ミスコンに参加し、一位になった方には、金のメダル30枚、二位の方には20枚、三位の方には10枚をプレゼント!参加者の皆様には3枚ずつプレゼントしちゃいまーす!』
『ちなみにダンコン、ミスコンは別に性別関係ないんだって。何のためのダンコン、ミスコンだと思ってんの運営側は!』
『ダンコン、ミスコンは入れる人数が決まってるみたい。だからって会場をいくつか用意して、コンテストの名前を決めるのを面倒くさがって適当に名前をつけたらしいよ。告知鳥ちゃん。』
『それ考えた奴クビにしようぜ?まぁ、僕は女装のミスコンとか男装のダンコンとかはある意味面白そうとは思うけど。』
そのときクレスコーメンバー以外にジークとチェッカーの目がツクモに向く。
「嫌だからね。」
「「「そんなの知ったこっちゃ無い。」」」
「あっ…。」
『そして、次に!イベント告知でーす!今日はなんと!三つも告知があります!では早速。五月にギルド対抗紅白大運動会!紅組、白組に分かれポイントを競い合うバトル!でーす。』
『そして、八月!みんな大好き、水着イベント!仲間の女性のうふふな姿にご注意を。私ですか?水着、見たい?』
『十月には、軍事ギルド!大大大!大戦争!の開催だ!この戦いは大陸全土を巻き込んだ大戦争!他の大陸との熱いバトルを期待してるぞ!』
『今回のイベント報告はここまで!』
『そういえば街中に食事とかの出来るフリースペースがあるみただけど?いや僕も食べ放題は好きだけど。』
『それは今回の特別サービス、こんな事も出来るよーっていうアピールだね?』
『アピール?』
『そう!プレイヤーさんもゲーム内通貨で施設などを貸し切って、パーティーなどがやれるよっていう事だよ。』
『へー。そういえばダンス会場なんかもプレイヤーさんが会場貸し切ってやってたね?』
『そう!てか告知鳥ちゃんってダンス出来るの?』
『そりゃ僕は天下無敵の告知鳥様だぞ!できるに決まってるじゃないか!』
『足…短いのに…。』
『何か言ったか?』
『いいえ。何も。それじゃ報告はここまで!それじゃぁみんな楽しんでね〜。そうそう私たちはこのままラジオ形式で雑談や質問コーナーなどもやってるからね〜。』
『質問したい事はメニュー画面から(コメント)を選んでね。コメントの中から質問や話題を選ぶからねぇ。』
『ちょっと動画の生配信者っぽいねぇ。』
『実際、動画生配信してるからそうなんだけれども。』
『えっ!そうなの?聞いてないけど。』
『言ってないもん。』
『告知鳥ちゃん!そういう事は言ってよね?』
『はーい。あっ!忘れてたけど、一つ!このイベントの最後!鐘が鳴って街の灯りが消えた時!空を見上げて見るといいよ!』
『運営から、プレイヤーさん達に向けてのささやかなプレゼントをどうぞ!』
そんな賑やかな感じでブルロボ祭が始まった。
「よーし、ドコイクカー。」
「「「逃がさんよ。」」」
「許してください。」
「「「無理。先刻の罰じゃぁぁぁ。」」」
「いやあぁぁぁぁぁぁああああああ!!」
ツクモは男性陣に捕まり、女性陣に着せ替え人形にされる。ツクモ自身もう諦めて大人しく捕まった。
「きっつ。」
「レーション。そういう事は言うもんじゃないですよ。私はいいと思いますけど。」
「ぶっふ、ハハハハ、あっダメ、面白すぎる。お腹痛い。」
「レッサーくんダメだよ。おじさんはこれはこれでいいと思うよ…多分。」
「うん。私は普通に可愛いお人形にしか見えないよ。」
「コレは…どっかで…。」
「俺は…吐きそう…。」
「うんうん。いい感じ。大丈夫!安心してメイクはしてないから。服だけ私の手持ちから合わなかった奴を持ってきた奴ですよ〜。あっそれ似合ってるので差し上げます。」
「いりません。」
ツクモは無理やり鈴のついた赤色のボンネットを被らされ、暗い赤と白のドレスを着せられた。全身を通してみると着せ替え人形のようだ。
そして無理矢理ダンコンに登録させられる。
「ダンコンで良かった。でもなぜに女装でダンコン?」
「「はあ?ネタ枠はお前しか取れねぇだろうが!」」
「ネタ枠…デスヨネー。」
そんな感じでネタ枠としてダンコンに参加し、案外好評でダンコン二位になり、金のメダル20枚をもらう。
「案外ウケた…。」
「本当にな…なんかごめん。」
「いや、いいよ。カフィーがそんな奴だって知ってる。」
ダンコンが終わってからも様々な会場に参加して回った。釣り大会、的当て、決闘、時々フードコーナー、クイズゲーム、カラオケなどなど回り、最後はダンス会場で踊る。
ツクモは着替える暇なく様々な会場を回っていたのでドレスのまま踊る事になった。レーション達は正装に着替え舞台に立つ。
「ちぇ〜、レーション達だけスーツとかズルイ。」
「ツクモ…ぷッふ、やっぱまだダメだ。」
「俺たちも踊るのは嫌なんだよな。報酬が良いから仕方なく踊るけど。」
「レーション諦めろ。欲しいアイテムあるんだろ?」
「これが終わったら結構な数メダル集まるからね。俺も踊るぞ!ここでお別れも寂しいし。」
「さっき、フーレンくん達に絡まれたりしてたけど、射的ゲームで追い返してたのは面白かったね。」
「あいつら、事あるごとに勝負を持ちかけてくるのやめて欲しいんだけどな。」
「お待たせしました。」
「おっ女性陣もきたな。」
女性陣も遅れてドレスを着てやってきた。
「遅くなって悪いね、どうかな?ドレスだよ!見て見て!」
「うぅ、恥ずかしいよねこれ。」
「うん。恥ずかしい。」
恥ずかしがっているヨゾラとシュリーを差し置いてフィオは一人だけテンションが高い。
「フィオなんかテンション高いなぁ。」
「そりゃ楽しいからね!大勢の人とこんなに遊んだのが久しぶりだから。」
「それはわかる。楽しいよね大勢と遊ぶと。」
「そうだな。ツクモとフィオの言う事は俺もわかる。」
「ツクモと一緒なのが癪だけど俺もな。」
ツクモ達が楽しく話をしてると音楽が鳴り始める。
「おっ始まったみたい。」
「じゃぁさっき決めた通り最初はパートナー変えず二曲目に変わったら適当にパートナー変更という事で。」
「「「了解。」」」
最初のパートナー決めはあらかじめくじ引きで決めていた。パートナー構成はシュリー、ヨゾラ。ツクモ、レーション。カフィー、フィオ。チェッカー、ジークという構成になっている。レッサーはフードコーナー辺りで補欠として一曲は見ているだけだ。
「なんで俺とツクモが一緒なんだよ。」
「くじ引きだしね。それより人にぶつからないように気をつけよう。」
「ツクモが一番気をつけろよ。あと俺の足踏むなよ!本当、頼むぞ!」
「あっち、なんだかんだ言って余裕あるなぁ。」
「カフィーもあっち側の方がいいんじゃないの?」
「いやそんな事はない。レーションはわざと全力で足引っ張ってくるし、ツクモは頑張ってるのは分かるんだけど足踏まれそう。」
「ふふ。仲いいのね本当。」
「そりゃね。仲良く無かったらあんなに暴言とか吐かないし。それに三年間同じ学校で過ごした仲だし。」
「そうなんだ。」
「私達、女同士で変じゃないでしょうかね。」
「変じゃない。多分。まぁ後で交代だしツクモ達と踊ればいいよね。」
「えぇそうね。」
「なんで俺はオッサンと踊ってんだろ。」
「おじさんもそう思うよ。出来れば女の子と踊りたかったよ。」
そんな感じであと二曲を踊りきり、あとは見る出し物を堪能した。そして今まで鳴り続けていた花火の音と音楽がなくなり、風船が割れ始めた。中から紙吹雪が舞い、街灯の灯りが次々と消えていく。星の光りしかなく満月が良く見える。そして二つの彗星がゆっくりと赤と青の尾を引きながら流れていく。
「プレゼントって、箒星が流れていく様子なのな。すごく綺麗ではあるねぇ。」
「もしかしたらこの見えてる星のどれかに行けるのか?」
「そうだといいな。」
「こうやって俺らが一緒に空を見るのはリアルでもゲームでも初めてだな。」
「「「だな。」」」
(明日にでもアイツ、誘うか…。)
こうしてブルロボ記念祭は幕を閉じた。ジークとチェッカーは先に分かれ、クレスコのメンバーは船へと帰り、少しミニゲームを楽しんで解散した。
ツクモがログアウトし現実へと帰り、一つため息をつき、ふと気づくと笑みが溢れていた。
「はは、久々にすごく楽しかったなぁ。」
(グゥゥ)
「あぁ、お腹が空いた。ゲームではあんなに沢山美味しい物食べたのに、現実に帰るとちょっとお腹空いてるのは、なんだか不思議な感じだな。」
そうして台所へと降りて行き冷蔵庫を漁り冷凍のチャーハンを温めて食べる。
「ブゥ、ブゥゥ。」
(ダン!ダン!)
「あぁ、ティコ。まだ起きてたの?以外だな。お前はもう寝てると思っていたのに。」
七瀬はティコという茶色い毛並みのうさぎに話しかける。
そうして餌箱からウサギ用のお菓子を取り出してティコに与え、頭を撫でる。
「本当はこの時間にはあげちゃいけないんだけどね。怒ってるみたいだったし。これで機嫌なおしてね。ティコは本当可愛いなぁ。」
「ブゥゥ。」
「それじゃ。おやすみ。」
ティコにおやすみを言った七瀬はティコがいる部屋から出て自分の部屋へ戻り眠りにつく。そうして一日が終わった。
船へ帰って宴会を楽しむ準備をしているクレスコメンバー。宴会にはシュワシュワと他にも、駄菓子からお酒のつまみなどの食べ物を用意した。ちなみにレッサーは弟を寝かしつけるためログアウトをした。
今日やるゲームは人生ゲームを用意し、二人一組みのチームをくじ引きで決めた。チーム分けはレーション、ヨゾラ。カフィー、フィオ。ツクモ、シュリーのチームに分かれた。
「夜のゲームの始まりだぜ。」
「ほどほどにしましょうね。」
「フハハ。女装させた貴様らに復讐してやる。」
「お前もう夜中のテンションだな。それかもう酔ってんじゃね?」
「いいえシラフです。」
「まだ飲んでませんもんね。このテンションだと後から悲惨な事になりそうだけど。」
「どちらかと言うとカフィーがいつ壊れるか…だよな。」
「カフィーって壊れるんだ。ちょっと見てみたい。」
「いやいや。壊れないから。」
「そうだなアレは平常だもんな。」
「平常でもないから。」
カフィーはゲーム中序盤はいい成績は残せたものの最後に破産しかけて案の定、壊れました。
「フフフ、ハハハハ、これでも喰らえトラップカード。」
「ちょっ、セコ。それはいかんだろカフィー。」
「ほら壊れた。」
「本当だね。ちょっと面白い。」
そしてゲームが終わり順位は最下位がカフィーチーム。ニ位がツクモチーム。一位がレーションチームとなって終わった。
最初のスタートはレーション達は物が壊れたり借金をしたりの災難続きであったが、途中トップ独走中のカフィー達から金をむしり取り成り上がった。ツクモ達はサイコロの出目があまり良くなく普通に人生を謳歌していただけだった。