ブルーメタルロボテック後編
一話後半の改変です。一話前半の後書きにキャラ紹介をつけさせて頂きました。今後も出来れば続けていきたいです。
隠れ家喫茶店を後にしたツクモとレーションはメッセージで届いたカフィーとの待ち合わせ場所の噴水へと向かっていた。
噴水へ着くと二人はカフィーを探し始めた。
「あいつはどこだ?」
「あーやらかした。見た目聞くの忘れてた。」
「アホ、何してんだか。」
「今から連絡する?」
「いや、いい、もうしといた。」
「流石、レーションは頼りになるなぁ。」
「そんな事より立ってるのしんどいから、そこらに座ろや。」
「せやな。」
そこから十五分程度たった頃、ツクモの手にはいつの間にかコーラの缶が手に握られていた。そのコーラを口に含み、飲もうとした時…。背後から強い衝撃がツクモ襲う。
口に含んでいたコーラは宙に吐き出される。
「うぇっ!なんだ急に、てかきったねぇな、おい。」
「誰のせいやと思って…。」
驚いた表情でツクモが後ろに顔を向けるとそこには青年が一人、ツクモとレーションの背後に立っていた。
容姿は、茶色く短い髪、エメラルドグリーン色の瞳を持ち、白いTシャツに茶色いトレンチコートを羽織り、ジーパンを履いていた青年は、自分の画面を見つめて何かを確認していた。
「白髪のがツクモで、黒髪のがレーション…だな。」
「そういうお前は、カフィーか?」
「そうだ、俺が、俺様が、カフィー様だ!よーく覚えとけツクモヤロウ!」
「あいあい。」
「おせーよ飲み物、もうちょっと早く来いよ!」
「無茶言うなよ、俺にも俺の都合があるんだから。」
「知るか!飲み物のくせに生意気言ってんじゃねぇ。」
「お前も食べ物だろが!」
「それで?これからどうする?飲食のお二方。」
「うーん、ツクモとレーションは機体の操作方法習ったか?」
「いいや、習ってない、てかチュートリアルがどこで、出来るかまだ見つけてない。」
「右に同じく。」
「ならちょうどいい、今から訓練所に行くぞ、そこで機体を動かすチュートリアルが出来る。ついでに模擬戦もやるか。」
「「おk!」」
機体練習場、そこでは自分のロボットを試験運用する場所、ツクモ達は各々自分の機体に乗り込む。
カフィーの機体はレーションと同じ機体のようで色が青色にカラーリングされていた。
コックピットの中は案外広くモニターには目の前の森や川の自然な景色とカフィー、レーションの機体が映っている。
機体練習場に入った途端からチュートリアルがスタートし、ツクモ達は操作法を一通り頭に入れた。
「おぉぉ、これが俺のロボットの中か!」
「ツクモ、ロボットって呼び方は無粋だぞ。」
「ん?どういう意味?カフィー。」
「ロボットじゃなくて自分でつけた名前で呼んでやるんだよ。」
「あぁ!ちなみにカフィーはなんて呼んでるん?」
「『チューハイ試作一号機』だ!」
「アッハイ、レーションは名前はつけてるの?」
「あぁ、俺は『カンパン』って呼んでる。」
「うーん、参考にならんか。」
「そこら辺はフィーリングだから、これがいいと思ったやつにすれば?」
「せやなぁ、うーん、それじゃこいつの名前は『クラフトボックス』とかかな?。」
「うん、なんか、変な名前だな。」
「えっそうかな?これから伸び代の出そうな名前だろう?」
「えっ?あっ、うん、そうだな。それじゃチュートリアルも終わってる事だし、試験運用も兼ねて勝ち抜き模擬戦でもするか!」
「勝ち抜きと言ったって、俺ら三人だし誰か一人シード枠になるけど、どうやって決める?」
「それはもちろん、ジャンケンで!」
「「「ジャン、ケン、ポン!!!」」」
公正なジャンケンの結果シードになったのはレーションで、他の二人は一対一で森を挟み、戦闘準備をしている。
「ジャンケン負けたぁぁぁ!、しゃーない、やるしかないかぁ。」
「そんじゃツクモ、始めるとするか!レーションは合図を。」
「へーい、じゃ行くぞぉぉ!」
レーションの機体が空に向けて銃弾を放つ、それと同時に二人は森へと入っていく。森の中は薄暗く太陽の光は、木々に遮られ光は少しの木漏れ日と、自身の機体のライトしか明かりはなく、ライト一つで発見されいつ仕掛けて来るかもわからない状況にある。
そして地形も相まって動きにくいこの環境ではなるべく早期に敵を発見なければいけない状況にある。そんな状況でツクモは周囲を警戒しつつ見晴らしのよい場所へと目指す、向かっている場所は川辺、この森の中では比較的、見晴らしはいいが自分も見つかりやすくなるという欠点を持っている。ツクモは川が近くに見える高台を取り茂みに身を潜める。そこからしばらくが経過して青い機体が川辺へ入っていくのが確認できた、そこから隙を狙いツクモは飛び出す。
「なっ!、奇襲!!卑怯な手を!」
「卑怯でもなんでも、勝てば良かろうなのだぁぁぁ!」
「フッ、これだから脳のないお馬鹿さんは引っかかってくれるんだよな!こういうの!」
「あっ!しまっt…。」
カフィーは背後から奇襲を仕掛けて来たツクモに対し目の前へグレネードを投げ込む、そのグレネードは、ツクモの目の前で爆発し爆煙がツクモの機体の姿を隠す。爆煙の中からツクモの機体が飛び出し、持っていた両手持ちの剣がカフィーの機体の胴体にあるコックピットを貫く。貫いた武器を回収すると、動かなくなったカフィーの機体は爆散し光の粒子となって消えていった。
「はあぁぁぁ、負けたぁぁぁぁ。何あれズルくない?」
「まさかコックピットを貫くと即死とは…。」
「いやそうじゃねぇよ、いやそれもあるけど、ゼロ距離グレネードくらってるのに、ダメージなしで突っ込んでくるて事だよ。」
「ダメージはあったし、かなり痛かったけどね、耐えれたのは多分、重装備だからだと思う、俺の『トイクラフトボックス』は防御力に少し補正が効くみたいだし。」
「なんだよそれ、まぁ俺の奴には移動補正があるしお互い様か。」
「補正って、クリスタル以外でも付けている装備で変わるからな、飲み物、交代なー。」
「そうだな、じゃぁ次、レーションとツクモな。」
「「了解。」」
ツクモとレーションは先ほどのようにそれぞれが位置につき、カフィーの合図を待つ。合図が出されると同時に森の中へと姿を消す。
レーションの機体は、カフィーと同じため動きも多少似ていて、基本的な対処の仕方が同じだが、そこは乗り手の癖の違いで上手くツクモを翻弄するレーション。しかし最後はやはり機体の硬さでゴリ押しされてしまった。勝ち抜き模擬戦の勝者はツクモとなった。
二人は何だか納得のいかない顔をしているが、ツクモは気にする事なくヘラヘラとしていた。
「まじか、このアホの子に負けるのか、なんか腹立つな。」
「実力って言うか機体の性能でゴリ押しされてるだけだからなんか、納得がいかない。」
「確かにね、そのとうりではある、まぁでもこれから力関係とかは変わっていくでしょ?」
「そうだな、じゃぁ、とりあえずの目標は、ツクモをボッコにするために俺は頑張るかなぁ。」
「そうだな、ツクモは目標どうする?」
「二人の目標がなんか納得いかないけど、俺は今作りたい機体があるからそのための素材が欲しいな〜って。」
「それなら決まりだ!今から準備を整えて、金と素材集めだ。それからツクモ、これにサインしろ。」
「これは?」
カフィーがツクモに自分の画面を見せる。画面には四角に囲まれた空白の枠が二つあった。一つはプレイヤーの名前を書く欄、もう一つはパーティー名を書く欄が表示されていた。
「これはパーティーを設立するための契約書みたいな物だ、これにはパーティーのリーダー名と、パーティー名を書く必要がある。」
「なんで俺なんだ?カフィーでもいいじゃないか?」
「オデ、メンドクサイノ、ヤダ。」
「アッハイ。」
「それに、模擬戦で勝った奴に譲るつもりだったんだよ。ツクモには任せる気は無かったんだが、勝ったのがツクモだったし。」
「それ、ツクモじゃなくてほぼ、俺に押し付ける気だったってことだよな!」
「イグザクトリー、レーションに任せるつもりだった。」
「うぇ、負けてよかったかも、それじゃあとツクモに任せた!」
「うわぁ、この人達めんどくさいこと押し付けてきよった、てか俺がリーダーで本当にいいのかよ。」
「不安しか無いけど、どうせ形だけだし。本当の目的はパーティー内の共有型拡張ストレージBOXだし。」
「そうかい、それじゃ俺がリーダーということで…。それとパーティーの名前はどうしようか?」
「任せる、よっぽどな名前じゃなかったらいい、でも一応俺たちにパーティー名は提案してから登録してくれよ。」
「当たり前だろ。それじゃ何にしようか、うーん、ウーム。ジ○ン軍とかは?」
「パクリは却下、絶対に他のプレイヤーもおんなじ事考えてる奴居るだろうし。」
「それじゃ、サイクロンとか。」
「却下、それお前の事しか指してないし。」
「うーん、人外キャラバン、とか。」
「却下、ダサい、もっと真面目に考えろ!」
「真面目なんだけど…えーと、うーと。『カレイドスコープ』とかは?」
「「意味は?」」
「万華鏡、ほれ、俺たちって他人から見たらすごい個性的とか、変わってるとか、言われるじゃんか、万華鏡も見る人や見方一つで変わるだろう?だから万華鏡。『カレイドスコープ』って言うのはどうだ?」
「ちょっと中二病感があるけど、うん、いいなそれ、じゃそれで。」
「おk、って、あれ?なんか使われてるみたい。」
「ん?そうか、じゃぁなんか他に考えるか?」
「いや、こう言うときは前の方になんか付け足したらいいだろ、ツクモ。」
「例えば?」
「『クレイジー』とかか?レーションさんや。」
「『クレイジーカレイドスコープ』、イカれた万華鏡ねぇ、なんか子供っぽい感じになったな、まぁいいか、それで。」
「カフィーから、了承を得たのでこれで行きます!今日か ら俺たちは『クレイジーカレイドスコープ』(イカれた万華鏡)ということで!」
「「はーい!」」
パーティー登録を済ませるとツクモ達は訓練場から街へと戻り、装備を整えるために店へ出向いた。
店はショッピングモールの様な施設に機体に装備させるための武器や、装甲などが売られていた。そこで一通り買えるものを買って準備を整えた。
「お二人さんは何買った?」
「俺は武器だな今より火力か出るメイス型の武器と散弾銃に変えた。」
「飲み物は野蛮だなぁ、俺は装甲を買った。とりあえず防弾とビーム軽減の装甲にしといた。そういうツクモは何を買ったんだ?」
「何にも買ってない、欲しい奴が高かったし、作りたい機体はまとめて買って作りたいから、もう少しお金を貯めないといけないなぁ。」
「そうか、ちなみに何が欲しかったんだ?」
「パイルバンカーと、アンカーフック。」
「好きだねぇパイルバンカー。あと何故にアンカーフック?」
「火力こそ正義だしね?アンカーフックはやりたいことがあるから。」
「「やりたいこと?」」
「そこは後々のお楽しみと言うことで、そろそろフィールドに出ようか。」
「そうだな、いざ出陣ツクモ、レーション。」
「「おk。」」
コロダナ大森林、そこは大樹が森となりアーデスの住処となっている森。ツクモ達はコロダナ大森林に住む『ライオットホーネット』という大型蜂のアーデスの群れ、三十匹を駆除のクエストを受けていた。
一人、十匹のクエストを三人で受けたので合計三十匹という量になってしまったが、その分報酬がいいとの事でこのクエストを受けることにしたのだ。
巨大な蜂の姿をしたアーデスは、ツクモの機体に向かって股から針を機関銃の様に飛ばして攻撃してくる。それを受けながらも、鉄塊の剣で叩き落としていく、他の二人は、ライオットホーネットの群れを一匹一匹確実に散弾銃や、ライフルで撃退してく。ツクモは、蜂の針が機体の身体中に刺さりかなり滑稽な見た目になっていた。具体的には、全身ヤマアラシとなっている。
「おい、ツクモそれ大丈夫なのか?」
「それハリネズミよりひどい状況に見えるんだが。」
「うん、なんか行ける。まだ攻撃自体、弱いし初級クエストだからかな?」
「体力の緑バーはどんくらいなんだ?」
「半分くらい、黄色くなってる。」
「それはやばいだろ。一旦下がって回復しろ。」
「あっ大丈夫。スキルで自動的に回復するから。ほれ、よく見て見。黄色と緑の間で鬩ぎ合ってるだろう?」
「だから硬いのか!お前!」
「ほれ、ほれ、カフィーくんも手を休めてないで働きたまえよ。」
「コイツ、腹立つなぁ、コイツのスキルの効果が切れて死なねえかな?」
「それな。」
「えー、ひどーい。なんてやってないで早く終わらせないとマジでスキルの効果時間きれて死ぬぅ。」
「いいぞ!死ね!」
「それ敵にっ言ってんの?俺に言ってんの?レーションさん!?」
「両方だよ馬鹿め!!」
「んな理不尽な!」
三十分後ツクモのスキル時間がきれる前になんとかライオットホーネットを駆逐し、クエスト完了の報告をするためツクモ達はホーム「始まりの街サーレンシティー」へ帰ろうとしていた。
「さて、ホームへ帰ろうかツクモ、レーション。」
「あぁ。帰ろ、帰ろ、もう疲れたぁ。三十匹は流石に疲れたわ。」
「そのおかげで、機体を強化する素材も人数分ちゃんとあるし、結構よかったね?このクエスト。」
「敵も雑魚かったしな。ツクモを囮にしてたから全然こっちに攻撃が飛んで来ないから楽だったわ。」
「レーションくん。そのおかげで、瀕死も同然なんですけどね俺。スキルがなければ即死だった。」
「まじでスキル様々だな。」
先ほどから話している『スキル』とはキャラクタースキルのことで、プレイヤーが自分のキャラをより戦闘に有利になる様にするため、キャラにスキルポイントを使ってスキルを覚えさしていくこと。そして先ほどからツクモが使っているスキルは「自動修復」というスキルで、自分の機体の体力をジワジワと回復させていくスキルだ。
「そういえばお前らは何スキル取ったん?」
「俺は緊急回避レベル1と、限界駆動レベル2だな。」
「緊急回避は分かるが、限界駆動ってのはなんだ?カフィー。」
「限界駆動は、いわゆるビルドアップ的な奴だ。覚醒とはまた別なんだけど一定時間攻撃力が増すし動きが良くなる。」
「俺は、緊急回避レベル2と自動回復レベル1だな。ツクモは自動修復以外に何を取ったんだ?」
「俺は自動修復だけだよ、自動修復レベル3」
「んーバカ、なんでスキルポイント全部それに振るかなぁ。」
「いやぁ、タンクになること分かってたから、死にたくないので自動修復に全振りしました。」
「何、その小説のタイトルみたいな文は…。でもそれで助かったんだったらよかったよ。」
「そうだね、おっ、もうそろそろ出口じゃない?」
「ん?いや、なんか道、間違えたみたい。」
ツクモ達は森を出て草原に向かうはずが森の奥にある大空洞手前に来てしまっていた。
カフィーが慌てながら地図を見て拠点を探していた。
「おいおい、何してんだよ飲み物さんよぉ。えぇ?」
「アルェ、おっかしな〜、この道じゃなかったけ?」
「じゃ一旦来た道戻りますか。」
「そうだな、じゃ次ツクモが道案内よろしく。」
「えぇ、なんでさぁ?」
「ほら、うちのリーダーだし。」
「うえ〜、俺お飾りなんだけど。」
「ほらつべこべ言わずに戻るぞ!」
「「あーい。」」
そうして今度こそ森を抜けようとしたところで、森の奥から青い色の光線が放たれ、ツクモの機体の腕を破壊し光線は消え去った。
ツクモ達はすぐさま相手から見えない様に大空洞へ姿を隠した。
「はぁぁぁぁ。いきなりなんなんですかねぇ!人の片腕持っていくとかマナーがなってないんじゃないですかねぇ。顔出して挨拶ぐらいしろよ!」
「いや、お相手さんからしたらまさに、挨拶がわりの一撃とかそんなでしょ。片腕で済んでるんだし。」
「失った腕はドッグで自然に戻るけど、ドッグにいくにはホームに帰らないと行けなしなぁ。ツクモはしばらくそのままだな。」
「クッソ。てか敵さんなんか追ってきてない?」
「そりゃなぁ。ほぼ瀕死が一人と、軽傷が二人、絶好の獲物。しかもほぼ初期機体のままだときたもんだ。」
「そんなのただのカモでしょ?」
「そのとうりレーションくん。分かった?ツクモくん。」
「あい、わかりやした。」
「とりあえず奥の方へ行こう出口があるかもしれない、いいな?ツクモ、飲み物。」
「「おk!!」」
そこからは言わずもがな、大空洞内は行き止まりで、その場から逃げるために作戦を立てた。
それぞれがちりじりになり逃げるが三機の敵機体がうまく連携を取り大空洞からはなかなか出してはくれず。ただただ弾と体力を消費し、全滅しかけていた。
「はぁ、これはマジでらちがあかん。しかもお相手さんスモークを無造作に撒くから煙だらけで周りが見えない。」
「それだけじゃないぞ、飲み物。あの後ろのタンクが厄介だ詰めようにも砲撃で足止めされる。」
「それになんだアイツ。スモークの中から出てこない奴が一人いるぞ。」
「そいつは放置だツクモ!とりあえずここをどうにか出ないと。」
「はぁ、仕方ない。俺がお取りになるからお前ら二人はなんとか逃げてくれ。」
「はぁ?意味ないだろツクモ一人じゃ…相手は俺らより遥かに格上。その上だ、俺らは瀕死。とくにツクモお前の体力じゃ三発食らえば終わりだぞ!」
「三人仲良く全滅よりは可能にかけた方がいいだろ!どうせここで全滅するなら二人逃して一人死亡の方がいいだろ。俺は硬い、だから時間稼ぎくらいはなんとかなるはずだ。」
「わかったよ、リーダー。お前に任せる失敗しても後でなんか奢ってもらうだけだから気にすんな。」
「わかったよ。でも高いやつはなしだからな。」
「「それは了承しかねる!!」」
「なっ!っておい、待てよっ!」
レーションとカフィーがスモークの中へ一目散に突入していき出口を目指す。
どこからか砲撃が狙いを定めてきている音がなる。だが今まで当たっていた砲撃が明後日の方向へと逸れていった。ツクモがタンクのメインカメラを潰し、砲撃の位置を逸らしていた。一時的に砲撃が止み、逃げやすくなったもののタンクの撃破には至っていないため、無闇やたらに砲撃を飛ばしていて厄介なことになっている。
「おい!ツクモ!」
「あい、なんでしょうか?レーションさん。」
「さらにめんどくさい事になってんだが?どういうことか説明しろバカタレ。」
「えぇ、タンクの視界以外からメインカメラに向けて跳び膝蹴りを入れたところ、メインカメラを破壊し、その途端今の有様です。」
「あのタンクに乗ってる奴バカだろ。あとツクモこれ終わったらやっぱりシュワシュワでも奢れ。」
「あい、わかりました。」
他の敵二人も近く事はできず、レーションとカフィーは逃げる事に成功したが、ツクモは砲撃が止んだあと、他の二機から集中砲火を喰らい爆散した。
そのときスモークの中にずっと居た機体の姿を薄っすら見ることができた。
黒い装甲、単眼の青い光、レールガンの様な青いプラズマを放つ黒い武器、ずっしりとした印象がつく全身黒と青の二色の装甲を持つ機体、その姿を横目にツクモは無残に散っていった。
大空洞を出て青い空を見上げるレーションとカフィー。その青い空には薄っすらと、ツクモの笑顔が見えるような気がしていた。
「亡くすのには可笑しなやつだったよ、ツクモ。」
「あぁ、来世でまた会おう。」
(いや、死んだけど、死んでないからね!?)
話は現在に戻り、ネオンの酒場二階。愚痴を垂れているツクモ達は、シュワシュワを片手に飲みながら今後どうするかについて考えていた。
「にしてもどうしたもんかね、一応失ったのはツクモの経験値以外、被害がないしなぁ。」
「そんなん、なくしたうちに入らんやろカフィー(笑)。」
「いや、(笑)やないでレーションはん。わて弱くなってしまってんがな。」
「そうなんだよ、問題はそこ。」
「「???」」
「クエストの報酬でなんとかツクモの機体のレベルは元に戻ったけど俺らと差ができた。それによりより強い敵との戦闘での、壁役がいないというわけだ。てかなんで本人がわかってないんだよ!」
「あぁ、そこをどうにかしたもんかと?」
「その通り、レイションくん。」
「ワトソンくんみたいに言うなよ。」
「にしてもなんなんだアイツら、いきなりPK仕掛けてくるとか物騒すぎやしませんかね?」
「何にかはわからんが、スモークの中に隠れてたやつを見たが、あれはなんか凄い近未来的な装備をしてた。」
「なんか凄いって、君に足りないものって、語彙力ぅ、ですかねぇ。で?近未来的って例えば?」
「レールガンとか、装甲がLED使ってる感じのやつとか。」
「レールガンはわかる。LED使ってる感じのやつってなんだよ。もっとなんか具体的なのはないのかよ。」
「うーん、黒い装甲に青い光の線が入ってた。」
「それはきっとスモーカーヘッドの機体ヘカトンケイルだな。」
「うぉ、えっ?誰?」
「おっと、すまん、すまん。自己紹介なしに話しかけちゃ悪いおじさんに思われちゃうな。僕はチェッカー、見ての通りのフレンドリーで優しい、いいおじさんだぞ!」
「「「………。」」」
チェッカーという濃い顎髭が特徴的な中年男性のアバターの人物が声をかけてきた。
どう見ても怪しいボロい服を着た中年男性にしか見えないチェッカーという男は、ツクモに対し握手を持ちかけてけきた。ツクモはその差し出された手を少し動揺しながらも手を取り握手を交わす。ツクモ達は警戒を解く事はせず男に話しかける。
「えーと、どちら様?」
「チェッカーです。おじさんはただの情報屋だよ、情報屋ギルド所属、パーティー名『スクープキッド』の団長だ。これでいいか?トレンチコートの青年くん」
「はい、俺はクレイジーカレイドスコープの団員で、カフィーです。」
「ツクモです。一応クレイジーカレイドスコープのお飾りパーティーリーダーやってます。」
「レーションです。団員です。」
「Ok、Ok、警戒せんでも何もしたりしないから。言ったろ?おじさんは優しいから、それと君たちに話しかけたのは、宣伝と情報の提供。それと、手助けだよ。」
「それは、つまり「情報屋として情報を提供するから宣伝してくれ、贔屓にしてくれ」が大半じゃないですか?」
「まぁ実際そのとうりなんだけど…で、どうだい?今回はサービス。タダで色々便宜を図っちゃうけど。」
「なぁどうする?レーション。」
「知るか!決めるのはお前だツクモ、リーダーだろ?」
「うーん。タダほど怖いものはないが仕方ないが…その情報ありがたくもらうよ。」
「おぉ、即決とはツクモくんは良いリーダーになれそうだな。それと…はい、これアイツらの情報ね。」
そう言いチェッカーはツクモ達へピッグズバンデットの情報が入ったデジタルプレートを渡す。
「それじゃぁ、まずは君たちが出会ったギルドからね、彼らは盗賊ギルド所属、パーティー名『ピッグズ・バンディット』のリーダーと愉快な仲間達だよ。」
「なんだよこいつら、PK専門のギルドかよ。」
「そのとうり、よく知ってるねカフィーくん。」
「昔、VRMMOのファンタジーゲームで散々お世話になったからな。」
「まぁそのカフィーくんが言うように彼らはPK、つまりプレイヤーキルを生業としたギルド。その中でも彼らはビギナー狩りのプレイヤー。もちろん指名手配などされている賞金首だったりもするけどね。」
「賞金首?」
「そう、このゲームではPKをしすぎたプレイヤーは賞金首として、二つ名と共に指名手配される。俗に言うハントプレイヤーというやつだよ。そして、ピッグズ・バンディットの頭が持つ機体その名も『ヘカトンケイル』通称(百碗の巨人)様々な武器を入れ替えて使うから、そう呼ばれている。メイン武器はスモークレールガンの『レイブン』、そしてプレイヤーの二つ名は…。」
「「「スモーカーヘッド。」」」
「そう、おじさんもちょっと手を焼いていてね。スモーカーヘッドがいるとクエストにも次の街にも行けなくて、おじさんちょっと半泣き状態なの。」
「「「チェッカーの事情はしらねぇよ!」」」
「それで、他二人の情報を簡単に説明するね、まずはタンクの方から。彼は、『ピッグ・レッグ』文字どうりの豚足だ。動きは遅いが火力が高く防御に優れている。次に人型の機体、彼の乗る『パンク』は攻撃特化の完全脳筋。野蛮だよねぇ、防御力はさほどなく、先に倒してしまえば人数有利が取れるよ。最後にスモーカーヘッド、彼はツクモくんが先ほど言っていた近未来ぽい感じの装甲、まさにそれこそ、このゲームでかなり、高い耐久性を持つコスモニウムという金属で作られた武器と装甲で身を纏うヘカトンケイル。それを倒すのは困難だろうね。」
「スモーカーヘッドはどうやってそのコスモニュウム製の武器や装甲一式を手に入れたんだろ?」
「それはもちろん、奪ったんだよツクモくん。」
「「「誰から?」」」
「上位プレイヤー。傭兵ギルド所属の『カレイドスコープ』から。上位プレイヤーから凄い装備を丸ごと盗むんだもんね、凄いよねぇ度胸が。さすが豚野郎共の集団だよ。」
「「「!?」」」
「あっ『カレイドスコープ』偶然にも君たちにと似たギルドの名前をしているね。それで話を戻すけど、どうだい?聞いた感じ勝てそうかい?」
「わからない、わからないが。それ俺たちが倒したらそのコスモニウム製の装備、俺達のものになるのか?」
「あぁ、なるとも、だがそれだけのリスクを犯してでも欲しいのかい?」
「それ、売れる?それも高く。」
「そうだね、そこらに出ている店には無理だけど元の持ち主には売れると思うよ。でも本当に売っちゃうの?持ち主と交渉して貰えるかも知れないのに?」
「うん、だって他人が持ってたものを使っても楽しくないし、なんせ見た目が好きじゃない。俺は俺が好きな機体を作って楽しみたいからね。」
「ふふふ、アハハハハ。面白い、さてはツクモくん君バカだね? だけど…そうだね、そのとうりだよ、ツクモくんはいいことを言うね。それじゃおじさん、ツクモくんのこと気に入ったからもっと便宜を図っちゃう。はい、これどうぞ三人仲良く分けてね。あと奴らの縄張りはコロダナ大森林一帯全て、奥に行けば行くほど出会いやすくなるから気つけてね。」
ツクモ達はチェッカーから角笛を一人、一つずつもらい受けた。それとツクモには小さな正方形の紫色の鉄の箱が一つ渡された。
そしてツクモは『クレイジーカレイドスコープ』のリーダーとして、『スクープキッド』の団長としてのチェッカーとフレンド登録をした。
「おじさんとフレンドになろうなんて、危機感の薄い、悪い子なのかな?ツクモくんは。」
「チェッカー、あんたさっき自分でいいおじさんだよとか言ってたじゃないか!それに、それだけ信用したってことですよ。それと今後も情報を売っていただけると、ありがたいし。」
「そうかい、ならもう一つ。ヘカトンケイルはレールガン以外にもガトリングやレザーエッジと呼ばれるチェーンソー型の武器など多種多様な武器を使ってくるから気をつけてね。それと、君達はお得意様になってくれそうだし、次からは半額で情報を提供してあげる。おじさんと今後とも良い商売を」
「うん、良い商売を。」
「それじゃ他に質問とかない?」
「二つ名ってなにか効果とかあるんですか?」
「あるよ。二つ名はね何かしらの条件を満たすと手に入るんだ。そして二つ名付きの機体は限界値の最大が上がり、ステータスの割り振りをいくつか自分で決めれるんだよ。」
「マジか、そんな化け物に勝てんだろ。」
「大丈夫だよ。どうせアイツらは機体性能に頼りきってるブタさんだし。まさに豚に真珠とはこの事だね。」
「そうですか。ありがとうございます。今度またお礼しますね。」
「期待してるよ。」
ツクモ達はチェッカーから得た情報と共に打倒スモーカーヘッドを目指して着々と準備を進める。次の街へ向かうために、少しでも安全にクエストが行える様に、そして好きな機体を作るために。その場を去ろうとしたチェッカーに対して最後に疑問だったことをツクモが問いかける。
「あっ待って、チェッカーなんで俺たちにここまでよくしてくれるんだ?」
「うーん、なんでだろうね?君たちと話してると楽しいし何より気分がいい、だからかな?おじさん、楽しいのは好きだから。」
「そんな理由でか?」
「他にも、情報屋としては困ってるお客さんがいたら、とかもあるかもね?あっそうそう言い忘れてたよ、これから、奴らを倒しに行くならこの後闘技場に足を運ぶといいよ。それじゃね。」
「「「あざっす。」」」
ツクモ達はこれか始まる戦争に備えて、チェッカーに言われた通り向かった先、サーレン闘技場、そこはデスペナルティのない実戦戦闘ができる場所だった。
「あっ、スモーカーヘッド達の懸賞金いくらか聞くの忘れてた。」
「「おい、おい。」」
さっくりキャラ紹介
主人公 谷塚香月 (たにづかかづき)
あだ名ヅッキー
キャラ名 レーション
ギルド『クレイジーカレイドスコープ』のメンバー、ツクモとは小学校からの付き合いで、少しオジサンチックなところがある。
機体 ???正式名称 未定