君には未来がみえるのかい?
◆◆◆◆
—―直人が交通事故があったと聞いた時、僕は学校の教室の隅で静かに授業を聞いていた。
もうすぐ最後の授業が終わるかなと時計を気にしていた頃に担任の先生が静かに教室のドアを開けて入ってきて、みんなに言った。転校した相葉直人が交通事故で意識不明の重体だと。
もし時間があればお見舞いにいって欲しいと、入院している病院を教えてくれた。
先生は教壇のど真ん中にたって皆に向かって喋っているはずなのに、ずっと僕の方を見ている気がした。
それからクラスのみんなも、普段は騒がしくはしゃいでいる癖に、教室の一番後ろにいる僕の方をじっと見つめていた。
僕はその視線が気に食わなくて、教室の時計が授業の終わりを示した時、僕は荷物をまとめてすぐに家に帰った。
それ以来学校にはいっていない――
◆◆◆◆
『驚いたよ、アキラに言われて捕まえたあのスライム日に日に強くなっていくんだ。この前なんて街を襲いに来た凶悪なモンスターにへばりついて、すこしづづ捕食して最後には骨を一片も残らなかったよ。なぜ君は誰にも見向きもされない最弱のスライムがこんなに強いことを知っていたんだい?』
直人から届いたメッセージをよんで、僕は顔がニヤつくのを我慢できなかった。
直人は僕がまるで未来予知でもしているかのように驚いているが、全然たいしたことはしていない。
たまたまネットショッピングサイト密林で購入した漫画本に、スライムが活躍する作品が数点あったからもしかしてと思って言ってみたのだ。
どうやら予想はバッチリだったらしい。
僕は直人に返信を書く。
『そのスライムは最弱の君にとって生命線ともなる存在だ。絶対に手放してはいけないよ。それと、もしそのスライムが急に喋ったり、美少女に変身しても怖がる必要はない。理由は聞かないでくれ、僕にも分からないが、それが異世界の法則らしい』
「送信っと!」
僕がマウスのボタンをクリックすると、メッセージは不思議な回線に乗って異世界に運ばれていく。
頼もしい相棒と一緒に直人がこれからどう活躍するのか想像すると、とても楽しみだ。
これでまた一歩、直人の日本帰還への可能性が高くなった。
「あー、はやく、生きている君に会いたいよ」
自然と不意に口からこぼれた言葉に、僕は自分で言っておいて恥ずかしくなった。
これじゃまるで、白馬の王子様に憧れる恋する乙女みたいだ。
一応誤解されないようにいっておくと、僕はもちろん女の子がすきだ。
クラスの気になっている女の子とかを、気が付かれないようにこっそり観察する得意技を習得していたほどだ。だからけっして直人に恋をしているわけではないので、そこを間違えないように。
最近は毎日をとてもワクワクして過ごしている。
正直、直人の異世界での境遇を考えると、不憫すぎて代わってみたいとは思えないけど、こうして見守っていると、まるで二人で一緒に冒険しているような気持ちになれる
聴き慣れたピロンという通知音が流れる。
メッセージを開く。
『アキラとスライム君のおかげで、俺のレベルも上がったし、お金もたまった。なのでこれから次の街に移動しようと思う。メッセージはこれで今日の分は回数制限でお終いだから、また明日連絡する。ではまた』
どうやら順調にいっているみたいだ。
なら僕もその間に知識をたっぷり仕込んでおくとしよう。
異世界作品は数が多すぎて、全然読み終わらない。
とりあず僕は初期の方の作品から読むようにしている。
ベッドに横になりながらタブレッドをスクロールして次々と漫画を読んでいく。
本当は、小説を読んだ方が情報の見落としが少なくていいのかもしれないけど、活字は苦手だし、小説は値段が高いから手をだしていない。
それに漫画の方がテンポが良くて読みやすいしね。
そのまま数時間、いくつかの作品を読み終えて、僕はまた一つ異世界においての新たな法則性に気がついた。
それは、転生、もしくは転移後に訪れた場所から、次の街にいこうとすると高確率で、美女を乗せた馬車を襲撃する盗賊に遭遇するということだ。
僕はとたんに直人のことが心配になる。
彼は、はじめて街から街へ移動している最中だ。下手な事件に巻き込まれてなければいいが・・・・・・・
――そして翌朝、僕の不安は的中した。
『助けてくれ友よ。婚約破棄されて捨てられたという女の子につきまとわれている。俺は緊張して会話もできない。どうしたらいい?』
どうやら我が友は恋愛ルートに片足を突っ込んでしまったらしい。