チートはなくても心は強く
スライムの亡骸をベッドにして、寝ながら嬉しそう笑う直人の写真が届いた。
地道なレベル上げとやらは順調らしい。
写真の隅には、『スライムハンターに俺はなるっ!』と書かれている。
能天気な姿に僕はわははと笑ってしまう。
君は自分のおかれた状況を分かっているのかい?
どういう原理で僕と連絡をとっているか知らないけど、写真加工の技術まであるなんて、無駄にハイスペックだ。
そんな愉快な写真をしばらく眺めていると、パソコンからピロンと通知がなる。
直人からのメッセージだ。
開いてみると
『なんかレベルアップしたらビデオ通話できるようになった。していいか?』
と書かれていた。
本当に異世界チートってなんでもありだなと僕は驚いてしまう。
まさか、時空を超えて通話までできる時代がくるとは思わなかった。
僕はすぐさま『もちろんだ』と返信をしようとしたけど、あることを思い出して、キーボードを打つ指をピタっと止めてしまった。
「そういえば僕と直人はケンカ中だったんだ・・・・・・・・」
突然、異世界にきたらから助けてくれと、非現実的なことを言われてすっかり頭から抜け落ちていたけど、実は直人が転校したあの日、僕らはケンカ別れをしていた。
理由は全部僕のせいだ。
教室でたった一人しかいない友達が、どこかに行ってしまうのが怖くて、寂しくて、子供のようにわがままを言い、最後にはとても汚い言葉を浴びせてしまった。
だから別れた日から何度も謝らくちゃと思ったけど、勇気がでなくて時間だけが過ぎていくうちに、直人はトラックに轢かれて結局言いそびれていた。
それ以来、あの日謝れなかったことを僕はずっと後悔していたのに、いろんなことがありすぎて有耶無耶になっていた。
僕は今度こそすぐに謝ろうろ心に決めて直人に返信をした
すると、すぐに軽快な着信音がパソコンのスピーカーから鳴り、僕は表示された電話マークをクリックした。
画面にでかでかと顔を泥だらけにした直人が現れた。
ニヤニヤと笑っている。
「久しぶりだな友よ、どうだい逞しい俺の姿は?」
「ははは、汚らしいの間違いじゃないのか?」
「手厳しいな、これでも今日はスライムを十匹たおしたんだぞ?」
そういって直人は両手いっぱいに、スライムを倒した時にドロップする魔石を見せびらかしてきた。
こっちは久しぶりの再会ですこし感傷的になっていたというのに、わっはっはーと馬鹿ぽく笑う直人の笑顔につられて、僕も自然と笑ってしまった。
ついさっき、すぐに謝罪をしようと心に決めたばかりなのに、一生懸命頑張っている姿を見せられると、謝罪を言い出すキッカケがどこに転がっているのかなんて、人付き合いの少ない僕には分からなかった。
仕方がないので、僕も直人に合わせていつも通りに接することにした。
せっかくの、感動的な再会に水をさすような真似は僕にはできなかった。
「三大不遇職持ちとは思えない活躍だね。そこまで活躍したからにはそろそろ君のレベルもあがってきたんじゃないの? いまレベルいくつ?」
「ふふ、聞いて驚くなよ?」
「だいたい予想できているから驚かないよ」
「ははは、俺はいつだってアキラの予想を上回ってきた男だということ忘れてないかい?」
「むう、それはたしかに」
死んだと思わせといて異世界から連絡してくるほどのサプライズ精神をもて合わす直人とのことだ。
またなにかを仕出かしたとしてもおかしくない。
「では、もしかしてひょっとすると?」
「ああ、驚くぜ? なんと俺のレベルは現在・・・・・・」
直人は意味深の笑みを浮かべて、昔流行ってた某クイズ番組の司会者みたいに長い、長い溜めをつくった。
ごくりと、僕は唾を呑み込んで待つ。
そして・・・・・・・・
そして・・・・・・・・
直人はジャカジャンと自分で効果音を口にしたあとに、自虐的な笑みを浮かべ言った。
「俺のレベルはゼロですっ」
「えっ」
想像を遥かに下回る回答に僕は言葉を失った