お友達クエスト
どうやらマヨネーズの売り上げは絶好調のようだ。
直人はちょくちょくスマホ?のようなアイテムを使い僕に報告のメッセージを送ってくれている。
僕がレシピを教えて、直人が作ったマヨネーズは幸運にも、販売初日にたまたま出会った有名レストランのシェフに買ってもらえて、その人が一日限定で店の日替わりメニューでだしてみたところ、偶然レストランに居合わせた高名な美食家の人が大絶賛したおかげで、いまや異世界では空前のマヨブームらしい。
まさに、奇跡のようなトントン拍子。むしろ出来すぎている。アメリカンドリームだってもうすこし控えめな気がする。
直人も驚きすぎて、ハチャメチャな文章をメッセージで送ってきたが、僕が──
『異世界でマヨネーズを売るとだいたいそうなるみたい』
と教えてあげると、納得したような、してないような返信がとどいた。
その気持ちは良くわかる。
僕も、直人がマヨネーズ作りに熱中している間に、少しでも力になれればいいなと異世界について勉強していなかったら同じリアクションだっただろう。
マヨネーズが売り上げ報告を待っている時間で、大手ネットショッピングサイト、密林で代表的な異世界転生系の漫画を電子書籍で数冊ほど購入して読んでおいた。
(こんな引きこもりの僕にも、毎月おこずかいをくれる優しい両親には頭があがらない)
僕が数冊買った漫画にも主人公がマヨネーズをつくるシーンがあって、同じように様々な幸運がかさなり一代事業のように発展していったから、異世界ではそういうものだと納得するしかない。
マヨネーズの売り上げで、直人はそれなりにまとまったお金を手に入れることが出来たらしく、お礼のメッセージを送ってきた。
『とりあえず、これで俺の最初の目的の、マトモな武具装備を一式そろえることが出来た、全てアキラのおかげだ感謝している』
うん? 武具?
なんのことだろう。
そのメッセージを読んで、僕は首をかしげてしまう。
直人ははじめから装備を整えるために資金づくりをしてたのか?
僕はてっきり直人は、異世界で悠々自適なスローライフな生活をを目指しているのだと思い込んでいたので、まさに寝耳に水だ。
あの、教室の端っこで、人目を凌ぐように僕と会話をしていた直人が、お世辞にも漫画にでてくるような戦闘を生業として生きて姿を想像出来なかった。
僕が思ったことを率直に伝えてみた。
『君に剣は似合わないよ。せっかく与えられた二度目の命を無駄にしないほうがいい。冒険なんて危険なことをせずに裕福な生活をしたらどうだい?』
これは、僕の心からの本心だ。
死んだと思っていた、たった一人の友達。
僕は君が最初に送ってきた写真を見た時、心が震えたよ。
どれだけ願っても不可能だと諦めていた友達との不思議な再会に、僕はいるかも分からない神様に感謝をした。
だから、異世界でもいいから直人には幸せに生きて欲しい。
だけど直人からきた返信には、僕の予想にも及ばないことが書いてあった。
『アキラ、たしかに俺に戦いなんて似合わないのは自分でよくわかっている。けれど、俺にはどうしてもやらなくてはいけないことがあるんだ・・・・・・・・』
やらなくてはいけないこと?
異世界にまでいって何をしようというのか。
続きがきになりメッセージをスクロールして全文を読んでいくと文章の最後にとんでもないことが記されていた。
『俺は、魔王を倒して日本に帰る。その為にこうして異世界で頑張っているんだ。方法は分かっている。だからアキラ、今後も俺に協力してくれないか?』