なぜマヨネーズ
笑う直人の写真とメッセージを見た時、僕はとても手の込んだイタズラだ──とは思わなかった。
冗談にしては悪質すぎるし、なにより写真の画像がとても合成には見えないクオリティーだったのと、そして、この文脈のない唐突な『マヨネーズの作り方を教えてくんない?』というメッセージ。
ここに、僕と彼の共通点である、人と会話をするのが凄まじく苦手という特徴がひしひしと感じられた。
直観と言われてもいい、もしくは僕の希望的な願いがそうさせたのかもしれない。
だが、僕はこのメッセージが、間違いなく直人本人のものだと確信した。
いや、そうであって欲しい。この世から消えたと思っていた唯一の友達が、ネット回線の先にいるのだと考えるだけで僕は目頭が熱くなる。
とりあえず、すぐに返信をした。
『久しぶり直人、僕をおいて一人だけファンタジーな異世界に行くなんて、ズルいじゃないか。おかげで僕の居場所は教室のどこにもなくなってしまったよ。ところでなんでマヨネーズ?』
送信を押すと、すぐに返信が届いた。
『すまない友よ。同好の士である君を差し置いてきてしまったことをすまなく思う。ただ一つ言わせてくれ、異世界はそんなにいい場所じゃないよ。それに俺と君は、アニメやラノベに興味なかったのだから羨ましくないだろ。マヨネーズについては、俺の記憶では異世界でマヨネーズをつくると巨万の富が得られると聞いたことがあるからだ。とりあずメッセージできる回数に限りがあるので、次の返信で送ってくれると助かる』
「やっぱり異世界通信だと、メッセージになにか制約みたいなのがあるのかな?」
僕は直人のメッセージをみて一人ごとを溢してしまう。悲しいことだが、最近は家族以外のだれとも会話していないので癖になっているらしい。
とりあえず僕は、レシピなんてネットで検索すればすぐでるので、調べて直人に教えてあげるのだった。