くるはずのないメッセージ
僕がいつものように、パソコンの前に座ってオンラインゲームをしていると、ピロンと音がなり画面に一件の通知がはいってきた。
ネット環境のある人なら誰でもインストールしているメッセンジャーアプリのアイコンが画面の端っこに現れる。
僕はそこに表示されている差し出し人の名前をみて、口から心臓が飛び出そうになった。
それは、絶対にあり得ない人物だった。
『相葉直人からメッセージがあります』
見間違いかと目を擦って、パソコンにうつるその文字を何度見返してみても差出人の名前が変わることは無かった。
「嘘だろ・・・・・・」
相葉直人、彼は元々僕と同じ高校に通う同級生だ。
今年の春に入学して同じクラスになり僕の友人となった唯一の人物。
騒がしい教室で、みんなが部活の話や放課後にカラオケに行く約束をして盛り上がっている時に、隅でひっそりと会話を交わしていた友達だった人
過去形なのは、僕にとって悲劇的なことに直人が親の転勤により入学して僅か数か月で転校してしまったからだ。
僕はそれ以来直人とは連絡をとっていない。
けれど、僕がメッセージに驚いた理由は、疎遠になった旧友から連絡がきたからという単純なものじゃない。
たしかに、友達のいない僕は知り合いから連絡がきただけで、珍しいこともあるなぁと驚く悲しい男子高校生だけど、今回の驚きはそんな薄っぺらい次元ではなかった。
──何故なら直人は現在病院のベッドの上で寝たきりになっている植物人間のはずだから・・・・・・
引っ越し先の町でトラックにはねられて意識不明の重体になったと、僕が聞いたのは直人が転校して一週間後のことだった。
だから、寝たきりの直人から連絡が来るはずがない。
これはきっと、誰かがやったイタズラなんだと僕は自分に言い聞かせて、そっと通知を閉じようとした──が、一度気になると、どうしても通知が頭から離れなくなり、ついに誘惑に負けて僕はそのメッセージを開いてしまった。
そこにはこう書かれていた。
『久しぶりアキラ、俺いま異世界にいるんだ。それで、突然で悪いけどマヨネーズの作り方をネットで調べて教えてくれない? 返信待ってる』
それと、文章と一緒に添付されていた写真には、汚い皮鎧を着て元気そうに笑っている直人が写っていた。