青春の風
フワァッ
教室の窓を開けると、強い風が流れ込んできた。
クーラーを入れるのもいいが。たまには風だけで過ごすのもいいだろう。
窓から顔を出して、外を見ているのは高身長で美青年。イケメンって何やっても様になるんだよなーっていう佇まいで、少しナイーブでいる四葉聖雅であった。
「ふぅ…………」
少し、考え中である。
そんな彼に声をかけるのは、絵になっているイケメンを踏み潰すような、フツメンのクラスメイト。
「四葉ー。どーしたよ。カッコつけて、様になって、外を見ているなんてよ」
「すまない。心配させたか?」
「いいや」
一緒に並ぶんじゃないって思いそう。しかし、比較対象が隣にいると、やっぱり四葉はイケメンやんって思える辺りが人当たりもあるイケメンなのだ。視界にゴミが入っても、取り除けばいい。そんな数名の女子生徒などからの憧れの視線を無視して、話しかけた舟虎太郎は
「なに考えてんだ。お前なら女からラブレターなり、デートなりを誘われ、誘い放題だろ」
「お。舟、俺がそーいう考えでいたの分かったのか?」
「まーな。しかし、ムカつくなお前。同じ日に2人デート約束しちまって、どっち選ぼうってか?イケメンリア厨め」
舟は拳でグリグリと四葉の腰に押し込んでいく。
「そんなんないない。まだ俺にはないよ。舟。痛い」
「ホントかぁ~?モテモテ男のくせによぉー」
きーっ、イケメンの余裕が羨ましいぜ。そう妬む表情ながら、真剣には話を聞いてやる舟の顔。四葉みたいなイケメンとはデートに誘えない!そーだ、舟っていう喋り好きに話を通して、遊びに行ってなんやかんやデートに発展的な……女子が考えてくれると嬉しいと思っている、あんまりモテない男子の考え。
そんな舟の考えを知らずに四葉は
「俺だって、恋とかしてぇーな……って。青春って言葉にするかな」
「ほほー。イケメンは女の子を選ぶ権利が有って羨ましいですね」
「おいおい。俺はただ、誘う勇気がちょっとなかっただけだ」
「そんな理由かよ。イケメンもフツメン並の悩みを持つのか」
舟も四葉と一緒に窓から面白くもない景色を見ながら
「しかし、まー。将来とは言わないが、今すぐ彼女が欲しいわー。可愛い子と付き合いたいな」
「そうだな」
「外に向かって叫ぶか?女だって、海に向かって異性が欲しいと叫ぶんだ」
「ここは学校だ。止めとくよ、恥ずかしい。……だが」
小声で言うくらいは良いだろう。四葉は空の雲を見つめながら
「”彼氏が欲しい”な」
ポッソリと声をもらし、一方で舟はこんな場でも積極的な馬鹿アピールのためか。
「すぅーーー。”彼女が欲しーーーーい”ぃぃぃ!!!」
今、彼女の席が空いている男ですよって。外にアピール。
誰もならんよって、周りが思っているけれど。本人はため込んでいた不満を外に吐き出した事で
「はーっ!スッキリした!なっ!」
「そーか。いつの間にか、お前が叫びたいだけの話だった気がするが……」
「ははははは、構わないだろ!同じ悩みだったじゃねぇか!」
………?あれ、そういや。なんかおかしかったような。
しかし、そんな考えがすぐに消えたのは四葉からのお誘いだ。
「……じゃあ、舟。丁度、スポーツジムの割引があるんだが。一緒に行かないか?」
「お!俺、高校生だけど酒とタバコを吸うけど、いいのか?そんな健全なところに行っていいんか?」
「みんなで行こうと思ってるんだ。相場と坂倉も呼んでくれ」
「学校帰りにリッチなジムトレもいいかもな!」
「ああ。運動終わったら、ラーメン屋行こう」
「いいな!たまには筋トレエンジョイ!……ところで、四葉。なんで嬉しそうなんだ?」