ゲイザー
『早く私に逢いに来て……』
脳裏に響く儚げな少女の声。辛い時、苦しい時、負けそうになった時、もうやめようと思った時、勇者はその声に励まされて戦ってきた。
『私は魔王の城の最上階にいるわ。早く迎えに来て……』
その声に導かれて勇者は魔王の城にやってきた。そして激しい戦闘の末に魔王を打ち倒すことに成功したのだった。輝かしい功績だ。しかし勇者の目的はまだ達成されていない。
「彼女はどこにいる……?」
勇者は地に倒れ伏した魔王に聖剣の切っ先を向けながら尋ねた。
「なんのことだ?」
「とぼけるな!この城の最上階に幽閉されているはずだ!」
勇者は魔王を無視して隠し扉から城の最上階へと上がった。すると、大きな広間に出た。
『やっと逢えたね……』
そこには勇者の想像していた少女の姿はなく、1つの巨大な目玉が宙に浮いていた。そしてその周りには何やら禍々しいオーラがまとわりついている。
「……っ!?」
『私の瞳、美しいでしょう?』
勇者は答えることができなかった。目玉に見つめられた勇者は既に石の塊と化していたからだ。
『ふふふ、ごちそうさま』
巨大な目玉(裏ボス)が嗤う。
「……はぁ、やっぱりか」
物陰から一部始終を見ていた魔王が呟いた。




