その刀。
何故か警官は来ない!
もう血飛沫、血霧で辺り一面真っ赤。
血霧が霧散して視界が戻った部分に横たわる人の姿が見える。
見間違いか、不思議な光景が展開する。
斬り伏せられて横たわる人が〈ムクムク〉と起き上がる。
そしてコマ撮りの写真の様に連続した残影を残しながら動き出す。
その動く方向に倒れていた人と瓜二つの人が歩いている。
コマ撮りの残影はその歩いている瓜二つの人に追いつくと合体する。
斬り伏せられて倒れていた人が全て瓜二つの人に追いすがって合体する。
合体後のその人達は…。
漏れ無く以下の状況に変化する。
例えば、合体前はスマフォを弄りながら行き交う人にぶつかってもそこに自分以外誰も居ない様に横柄に歩いていた女学生がスマフォを仕舞って行き交う人を気にしながら快活に歩く。
例えば、二人分を占有して座っていたおばさんが赤ちゃん連れのお母さんを見るや走り寄ってベンチに誘う!その顔は満面の笑み。
例えば、携帯に向かってがなりたてて往来の真ん中に立ち止まっていたオヤジが往来の脇で小さな声で話し始める。
なんだなんだこれは、人が人を認め尊重しあっていた気持ちの良い精神文化を築いていたと言う古き日本人の文化の再来のような風景。
合体した人は切られたはずなのに傷一つ衣服の綻び一つ無い。
博多シィティビルの3階のテラスから眺めていた英国紳士風の男が呟く。
「業の斬り祓い、見事な腕前です! 不殺生の業滅の刀の武士、博美 栗原!」と絶賛する。
博多駅前広場の血霧が全て霧散すると凛とした空気が辺りを覆い。
往来する人々の存在がホッコリとした小春日和の暖かさを運ぶ福の神に見える。
漆黒のコートの少女が広場の端で3階のテラスを見上げる。
英国紳士風の男は腕を真上に挙げて大きく開いた手の平を腕を〈クルリ〉と返しながら〈ギュッ〉と
手の平を閉じる。
それを確認した少女は黒いマントを翻す。
黒いマントのシルエットが〈ふわり〉とすると同時に姿が搔き消える。




