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妄想にレベルがあればカンストしてる

「では、履歴書を見せろ」

と、いうこともなく、少し疑わしい目を向けながらも、

リリちゃんが否定しなかったこともあって

ひとまずは納得してくれたようだ。


今から行こうとしていた、プルという実と、紙たばこの葉を

取りに行くのにリリちゃんと荷物持ちとして参加することとなった。


リリちゃんから師匠と呼ばれた青年は、

名前をケイリー・ミノーグ

魔王城の料理長という立場なのだそうだ。

身長が推定120cmくらいのくらいの彼は、

見た目の通り、小さなコックさんといったところか。


しかし、


かわいい。


彼をまじまじ見つめる。

おじいさんっぽい話し方をしているが、見た目は10代後半くらいで、

赤い短髪の彼はつり目で三白眼で、顔にはピアスをいくつも開けている。


世が世なら荒れた学校が舞台で

ピンチになったところを主人公に危機一髪で助けられて、

「お、お前もやるじゃねぇか」

って照れながら段々と主人公を意識してるのになかなか素直になれない

やんちゃなライバル!!


邪な腐オーラを受けたケイリーは寒気を感じてゾクゾクと身を震わせるが

もちろんベルの目には見えていない。


種族はドワーフとのこと。

ホ〇ットかと思った。

ドワーフっておじいさんでひげもじゃで、

ずんぐりむっくりのイメージだったから。

それに対し、ケイリーはすらっとしていて、等身も普通に人間だった。


うーん、体格差の性癖はないけど、

ケイリリ?リリケイ?なんか違うなー。

それよりも魔王とその側近の方が妄想が捗るな。

などと、カップリングをぼーっと考えてられるのも

今、荒野をずっと歩いているからだ。

体感一時間!


「まだ、着かないんですの?」

「何を言っておる、まだそう歩いていないじゃろうが、

そんなことじゃ城のキッチンはつとまらんぞ」


うぅぅ、コックさんて、こんなに体力勝負の職業でしたっけ?

最近は魔界へ行くための準備で調べものすることが多かったから

体を全然動かしてなかったな。


とはいえ、王宮の人間に呆れられながらも

よく近くの森に出かけたり

近衛兵や家族たちに止められながらも

剣術や体術を習ったのは無駄じゃなかった!


探索用の靴ではないし、ドレスだし、

崩れやすい石や、ころころとした小石を

よけながらの歩行はかなり大変だが、歩けないほどではない。


それに、妄想しながらの単純な作業はすごく相性がいい。

いままで沢山の時間を妄想でつぶしてきた実績がある!


ただ、困ったことに固有名詞がわからないんじゃー。


「リリちゃん、知ってたら教えてほしいんだけど。」

「なんです?」


岩の間をスキップするようにひょいひょいと進んでいくリリちゃんは

この道に慣れているのかそのまま後ろに腕を組んで私の方を見て後ろ向きに歩く。

器用。


「魔王様の近くにいる銀髪の赤い角の男の人と、

黒い耳と尻尾の男の人のお名前ご存知ですか?」

「あぁ、それは……あっ」


と、いいかけたところで急にはっと口に手を当て、


「ボクはただの下働きとしてここにおりますです。。

残念ですが何も知らないです!」


と、少し前に聞いたことのあるセルフを口にする。


チッ。やはり自分周辺の情報以外は口に出さないか。


「リリ、おぬしに何度も教えたじゃろうが。

我がイシュト国の魔王ルカ様に

お仕えするは白鬼の参謀サリク・エイハ様、

ルカ様を直接警護する役目を担っておられる黒狼族のクロウリー様、

この城で食事をされる方々の名前と、食事内容、嗜好はもちろんのこと、

仕事内容、体調などすべて把握するのも厨房の役目じゃ」


リリちゃんのセリフを額面通り“何も知らない”と受け取ったのか、

懇切丁寧に教えてくれた。

ケイリーは私に多少の疑いの目を持っていたが、

このくらいの情報は本当に基本中の基本なのだろう。


これはいいぞ。ほかにも情報が手に入れられるかもしれない。


「ケイリー様、ほかにどのくらい城でお食事なさる方がいらっしゃるのですか?」

「まぁ、下っ端どもは食堂で飯を食うし、厨房で作れない食事もある。

そんなに人数はいないわい。まぁ、おいおい覚えていくといいじゃろ。」


ふむ。お城の厨房というには少し狭い気がしたが、

お偉い方の為のキッチンだったのね。


「魔王様や、その側近の方々の為にいつもこうして毎日食材を取りに行っているのですか?」

「いや、そんなことをしていたら食材を取っているだけで日が暮れてしまうじゃろ。

食材は城外から毎日運ばれてくるがの、

プルの実は買わなくてもこの湿地に沢山なっているし、

噛み煙草の葉も多少なら生えている。

噛み煙草は高級品じゃ。城で働いている職人に土産として少し持っていってやっているんじゃ。」


懇切丁寧!

こんなちゃんとした魔族もいるのねー。

まぁ、そうじゃないと、人間と同じ地に住んでいて、

まがりなりにも戦争のない、そこそこ秩序の保たれた世の中にはなっていないわよね。



ずっと乾燥した赤い土と岩の景色が続いていたが、

緑が集まっている場所が見えてきた。

オアシスとまではいかないが、

浅い泥沼のようになっている場所のまわりに沿うように緑の背の高い草やサボテンが繁っている。


そのサボテンのまわりにプルンとしたこぶし大くらいの赤い実が沢山なっていて

遠くからでもその赤が目立つ。


「あれがプルの実ですか?」

「そうじゃ。お腹がすいているんじゃろ?食べてみい」


そういって、収穫用のハサミを放り投げてくる。


オアシス近づくと、水場は小さいものだが、たくさんの植物が生えていた。


背の高い雑草や枝を避けて分け入る。


ドレスが邪魔ね。


ドレスの裾を受け取ったハサミで動きやすいように切って

邪魔にならないように裾を結ぶ。


背伸びをしてちょうど届くくらいのところに

沢山の赤い実がなっていた。


ハサミで収穫して一口かじってみる。

「すっ!!」


耳が痛くなるくらいの酸味が広がる。

ゼリー状の粒々が口に残ってずっと口のなかを刺激しているし、

ちょっとしぶさもあるようだ。


「ははは、そのまま食うやつは魔族でもなかなかおらんがな。」


紙たばこの葉を摘みながら

なかの様子を見ていたようだ。

なかにお茶目なことやってくれるじゃないの。

と思うが口の中が大変なことになっていて口を開くことができない。


でも分かった。これ、知っているものより5倍くらい大きいけど、

ツルコウミの実だ。

普通は砂糖と一緒に煮詰めたりして、ソースやジャムに使われている。


味はともかく長靴いっぱい食べた……くはないな。

おなかが減っているし、のども乾いているので、

ぺろぺろとプルの実をすこしずつ味わう。

ちょっと口がすっぱいのに慣れてきて、癖になってきた。


見知った食べ物があるとわかるのは嬉しい。

魔界とはいえ地続きだものね。異世界とは違う。


ケイリーに言われたまま、袋にプルの実を入れていく作業に入る。


はぁ、カップラーメンやハンバーガーが恋しい。

もっと欲を言うなら、キャラメルフラペチーノと、

ねるねるねるねと、(たまに食べたくならない!?)

ビールと炙ったスルメにマヨネーズと七味をかけたものが恋しい。


前世では仕事終わりにビールとつまみを用意して

お気に入りのソファーで録画したアニメをみたり、

同人誌片手にTwitterを眺める時間が至高でした。



ビュッ!!!


ボーッと考え事をするのが癖になっていて、気付くのが遅れた。

いきなり肩に鋭いいたみが走って冷や汗がドッとでた。


「いっ……!」


突然のことに何も反応ができないし、悲鳴も上げられなかったが、

持っていた袋からプルの実がドサドサと落ちてケイリーとリリちゃんが気づいた。


「チッ!ラットか」


そうだ、これはアンステラの領内にもよく入り込んでいた魔物。

カピバラに一見似ている、鋭利な牙と爪を持っていて好戦的な魔物。


ケイリーは、手に持っていた食材を放り投げて、

小さい体からは想像できないくらいのスピードで走って近づいてくる。


走りながら懐から二つナイフを取り出し、

両手でラットに向かってナイフを振り上げる。

うまく急所を狙ったようで、切り口から少し遅れて血飛沫があがり、

尻もちをついたベルの顔を濡らす。


ラットがビクビクと痙攣している。


ラット、ラットですって……

瞬間、記憶がよみがえる。


ケイリーは実は56歳。250年から300年生きるドワーフからすると

まだまだやんちゃなお年頃?

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