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初めに主人公死ぬやつとかあるのわかるけどね

銀髪サラサライケメンが意地の悪そうな笑顔を浮かべて言う。


「で、魔王様、此度の人間の女は南の獣にくれてやりますか?それとも人間の体を隅々まで調べたがっていた北の塔の者に引き渡しますか?」


ってすぐに殺されちゃったりする可能性もあるのぉ!!!??(涙)



私は魔王の花嫁として魔族の国に贈られてきた。

それは大昔の人間と魔族間であった大戦争終結からの決め事だった。


ショタ魔王と側近二人の視線は依然冷たいままで、品定めをしているようだった。


その大戦争は魔族側の勝利で終わり、

人が住める土地の大半を魔族側に取られることになった。

そして、その土地に人間は住んだり、店を構えたり、そもそも本来は足を踏み入れることは許されない。

ただ、例外はある、その例外の権利を得るために、

王が代替わりした時に、権利以上のものを求めないとの証として

魔族の土地で採れたものの何割かなどの供物と、

人の国の支配者の血筋の女性を花嫁として差し出す。

敗戦国と戦勝国の間柄、この世界なりの輸出と輸入。

貿易摩擦が起きないようにと絶妙にバランスが取れている。


いや、知らんがな……ってわけにもいかないか。

もうこの世界に姫として生れ落ちて16年たっている。

この世界の在り方を学び、王女としての在り方を学び、

そしてお年頃ってやつになったわけですよ。


おじい様、もとい国王様が3年前病に臥せった時から覚悟をしていた。

沢山の人とのつながりや、城でのたくさんの思い出もあって、

あまり情報のない魔族の土地へ花嫁として行くなんて、とても嫌だった。

どう調べても花嫁として行った何人もの女達の行方が全く分からないのだ。


でも父や兄の方が、自分よりもよほど取り乱していた。

私が産まれてすぐに母は亡くなり、その分、蝶よ花よと父や兄に育てられ、

ベルを送り出すくらいなら国を傾けてもいいと、大騒ぎになったのだ。


でも、こういう時って人は逆に冷静になるよね。


他に王家の血筋で妙齢の女性は私以外にいなかった。

家系図をみると、どうも王家万歳なこの世界では長く近親婚を続け、

子どもが心身ともに健康に育たないことが多いみたいだった。


でもそんな世界だからこそ、王女として、転生者として、やれることがあるのではないか、

と、前向きに考えたのよ。

私なりに。だからこんなところで黙って獣の餌や、実験台になるなんて絶対に嫌。


「お待ちください!」

声が震えるのを抑えるように、口内が乾いて張り付いていたところを無理やり声に出す。

「そんなことをしてもよろしいのですか?わたくしは花嫁として嫁いできたのですよ?

わたくしの身に何かあれば国王も兄も黙っていません!」


魔王がおよそ少年のものと似つかわしくないほどの冷たい薄ら笑いを浮かべた。


「黙っていなかったらどうすると?」


これが魔王か、と、その時初めて感じた。

怖い。

その一言が向けられただけで、頭から血の気が落ちて呼吸すらままならなくなる。

魔王は暗闇に生きるもの全てを恐怖と力で統べるものだ。

怖い。

短い呼吸を繰り返す。

ハァ、ハァ、ハァ、

息苦しい。

恐怖が頭を支配する。


「お前は花嫁ではなく贄としてこちらへ送られてきた。

お前がたとえ死んだとしても、あちらには何かを言う権利はない。」


贄…。

花嫁ではなく贄として認識されているならこちらには何もきれるカードがない。

何も交渉できない。


嫌だ。

嫌な汗が額を伝う。


何もできないでこのままここで終わるの?


顔が熱いのに、指先が冷たい。

怖い。

逃げ出したい。

怖い。

嫌だ。

嫌だ。

「嫌だ!!!」


硬い鉱物でできた、床や天井はよく響く。

自分の出した声が少し恐怖を和らがせる。というより、恐怖が限界突破していた。

これが恐怖の向こう側か。


「わたくしは、ここへ花嫁としてやってまいりました!

それがこのような屈辱を受けるなんて、横暴が過ぎますわ!

どんな思いでここに来たと思っているのです

わたくしとてこのようなところ来たくはありませんでしたわ。

でも、お父様や、お兄様や、…国民のために、少しでも力になれれば…と…。」


熱い涙と一緒に、何か他の感情がこみ上げてきた。


「私だって、私だって!年上のダンディーなイケてる男の人と結婚して、

かわいい子供を産んで、悠々とハッピーライフが送りたいと思ってたんだから!!

それなのになんで初めて会ったあなたたちに好き勝手言われなきゃなんないのよ!」


自分でも何を言っているのか分からなくなってきたころ

目の前に怒りマークと怒りのオーラが見える気がする……


「……言いたいことはそれだけか?

貴様には、何の価値もなさそうだな。」


そのままの姿勢と表情で銀髪サラサライケメンに何か目配せする魔王が見えた。


あー、これ、私死んだ?




その場の惨殺は免れたものの、ベルは城内に囚われたのだった。


読んでくれたのですね。あなたは神様です。

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