一方そのころパパとお兄ちゃんは
「まったく、お茶を出しに行ったっきり帰ってこないと思っとったが、いつの間に魔王様と風呂に入るほど仲良くなったんじゃ?」
「違う!違うんです!!いや、違くないけど
遅くなってしまいもうしわけありません」
「ははは、責めているわけではないわい」
でもなんか、嫌みいわれてるよね。
すごい笑顔だけど。
「忙しいとは言ったが、
今日は上の連中は夜は出かけるようでのう、
わしは一旦自室に戻るがおぬしはどうする?」
「あの、お掃除の続き、やりますね」
「あぁ、顔が疲れとるが大丈夫か」
「何かしている方が落ち着くので」
疲れているのかもしれない。
ここにふわふわのお布団があったら
そこに飛び込んで動きたくないのは確か。
これが社畜だったあの頃だったら
玄関開けてベットにバタンと倒れてすぐに手に取れるところにある
薄い本の中の倒錯的で幸せな恋愛の物語に溺れるんだ。
そうしたらいつの間にか次の日になって
また1日を始められる。
あの頃はそうやって一日、一日を重ねていって、
その先も、そうやって一日を重ねて
毎日同じように過ごしながら
未来に続いていくものだと思っていた。
今はまったく未来が分からない。
やらなければいけない事があるような気がする。
死んでしまうのではと思うほどの恐怖もある。
立ち止まったら、動けなくなるんじゃないかな。
だから、無心で動ける何かをする。
どうすればいいか分からないときは
いつもこうしてきた。
「はい、うじうじモード終了!!!」
そう言いながら掃除で出たゴミをゴミ捨て場(地面大きく開いた穴)に
思いっきり投げ込む。
たまにダークモードになるのはしゃーない。
でもさ、人生楽しんだもん勝ちなのよ。
愚痴もダークな気持ちもゴミと一緒にポイってな!
それにケイリーに色々聞きたい事があるのを思い出した。
リリちゃんの行方、何か知っている様子だった。
それから、料理長にしては魔王に気安過ぎる。
それを知って何になるのかまだ分からないけど、
なんかおいしい気がする!腐女子の感がそう言ってる!!
……じゃなくて、とにかく情報が足りないのだ。
魔王の事、魔王の世界、つまりこの世界の半分側を何も知らない。
色々教えて貰うからね!という決意を胸にケイリーの部屋に向かう。
あ、消毒はまだできてないから、消毒ができるものがあるのか
聞かなきゃね。
-アンステラ国-
ドンッ
机をこぶしが叩く鈍い音
ずっとためてきた思いがこぶしに伝わる。
「父様!このまま黙っててよろしいのですか!?」
「クロム……何度も言うが、ことはそう単純ではないのだ」
クロムと机を隔てて相対しているのは一国の王、クロムの父親
ケヴィン・ラ・アンステラ
40も半ば近く、政務に追われているのと、最愛の娘が魔王へ嫁いだことで
だいぶ顔には疲れが浮かんでいる。
それを察してか、出したこぶしの熱をどうにか収めるクロム
「……わかって、います。申し訳ありません。でも悔しいのです。
兄も、妹も、魔物に奪われている」
もともとクロムは心優しい子だ。
もうクロムしかこの城に王の子は残っていない。
どんな思いを一人で抱えてきたのか。
それが察せない父でもなかった。
「兄のことは、あれは、…事故だ。私にも 責任は ある。」
兄のレインは魔物の抗争に巻き込まれて命を落としている。
紡いだ言葉と、心の内で思うことは違うかもしれない。
だが、クロムの事を考えて言葉を選ぶ。
「まだ話の分かる魔王だとは思う。人を送るのは拒絶されてしまったが
文ぐらいなら届くだろう。また、文を送ってみるよ。
きっと、あの子のことだ。元気でやっているさ」
気休めかもしれない、でも、無事だと、そう思いたい。
それに、本当に元気でやっているかもしれない、ベルにはそんなことを思わせるような力があった。
「はは、そうですね。ベル……ですからね」
力ない笑みだったが久しぶりに自分の息子の笑みを見たかもしれない。
ベルはここにいなくても、家族に笑みをくれる。
皆を照らす光のような子だった。
……たまにおかしな言動をしていたが。
どうか、無事でいてくれ。
国の民の為に
我が子を魔物の国に送った罪深い自分だが、どうか、無事を願うことだけは許してほしい。
すごく遅れました><




