肆話.ステータス
「はぁー、あー疲れた!」
「シャーノは何もやってないだろ。」
宿の部屋のベッドに俺とシャーノは腰掛ける。
「もうメルト、酷いよー、私が何か喋っても全然答えてくれないんだからー」
「いやだって、他の人からシャーノは見えてないんだろうが。また一人で喋ってる変人になりたくはないんだよ。」
「あ、そういえばそうだっけ?」
こいつ、忘れてたな。俺は呆れてベッドに寝転がる。......そして重大な事実に気づいた。
「......この部屋にはベッドが一つしかない。」
「そうだね!」
え?これ問題じゃないのか?
「シャーノ、お前今日はどこで寝るんだ?」
「ここだよ?」
「じゃあ俺はどこで寝ればいいんだよ。」
「......?ここじゃないの?」
こいつ、ここで一緒に寝るつもりかよ。
「狭いだろうが。やめろ。」
「メルトも私も子供だからこの大人用ベッドで一緒に寝られるよ?」
......そうは言ったって。
「......シャーノ、お前何歳なんだ?」
「10歳だよ!」
「いやシャーノは400年前の聖女なんだろ?」
「死んだ時は10歳だったんだよ!しかも、長い間、力を失っていて1年くらい前まで眠っていたんだよ!」
つまり、シャーノは実質11歳......同い年か。
「というか、私、ベッドって初めてなんだよね!400年前はなかったし、誰とも喋れなかったから目覚めてからも使ったことないし!」
今もわーわー言いながらベッドでぴょんぴょん飛び跳ねているこいつと同い年とは思いたくないんだが......。っと、シャーノの方を見ると、シャーノと目があってこっちに寄ってきた。
「そういえばメルト、ステータスについて言ってなかったよね?」
「あぁ。今、俺がどれくらいの強さなのか教えてほしい。」
「いいよー!まず、メルトのステータスは......」
「これだ。」
名前:メルト
性別:男
種族:人間
属性:火・水・木・光・闇・無・共鳴
体力:68/68
魔力:54/54
攻撃力:78
防御力:65
「うんうん、まずね!この世界の冒険者の平均値はねー?体力と攻撃力と防御力が100、魔力が50ぐらいなんだよね!だからはっきり言ってメルトは......」
「弱いのか。」
ま、そうだよな。ここは現実だ。無双なんて妄想......
「でも、魔力は平均より少し上だし、7属性も持っているなんてはっきり言って異常だよ?もっと自信を持って!」
「その属性っていうのが多いと何がいいんだよ。」
「それは......えーと......使える魔法の種類が増える......とか?一応、魔法を教えてもらえれば大体使えるようになるよ」
......つまり、そんなにいいことはないということか。シャーノだって光属性だけなのに聖女になってるぐらいだし。
「で、でも!基本5属性はともかく、無属性と共鳴属性はすごいんだよ!」
「何がだよ。」
「無属性は属性を持たない魔法......つまり、対人魔法で人に対しては最強だよ!」
「俺には人殺しの趣味はない。」
「えーと、あと、共鳴属性は特殊属性の一つで......あ、えーと、特殊属性っていうのは使い手がほとんどいないけど、威力が強力だったり、普通ではありえない魔法が使えたりする属性だよ!」
「......その特殊属性の魔法は誰に教わればいいんだよ。」
「......。」
あ、こいつ都合が悪くなったから黙りやがった。っていうか、俺、全然ダメだな。これはどうしようもない。
「メルト、ギルドに戻ろ!」
「なんだよ突然......」
「このままだと、メルトが自信無くしちゃいそうだから依頼を受けてモンスター討伐しに行くんだよ!私が教えてあげるから!」
「だが、俺は......。」
「いいから!行こ!」
「あ、あぁ。」
また出たよ。人の話聞かないタイプ。ついでに暴走するタイプ。